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65.裏方たち



『はい、生駒です』



 ふと耳に入ってきた言葉に、俺はピクリと反応した。

あれ? どっから聞こえた? まさか……。



『なんだ、森口君か』


「あー、イシキリサン? もしかして、隣にさっきの人おるん?」


「え? なんで気付きました?」


「そりゃ……」


『え? 全滅? 前にリストもらった人、こっちでも調べてるんだけど?』


「業務内容っぽい話が漏れてんで」


「えっ!? ちょっとー!!」



 あわあわと一人残されていたイシキリは、パントマイムのように周囲を触る。

おそらく、現実(リアル)の方でなにかしているのだろう。



『えっとね、ちょうど今、リストにあったマコさんにインタビューしてんのよ』


「愛理さん! こっち聞こえちゃってます!!」


『えっ!? マジ!? って、石切君! 先にログアウトして!』


「えっ!? あー!!」



 ブツンといった様子で、残された石切もログアウトしていった。

しかし、声がたわんで聞こえると思っていたが、どうやら二人のマイクが混線していたせいらしい。

意外と運営の中の人も適当だな、そんな瞬間だった。


 だが、それよりも聞き逃せない話が聞こえてきたよな……。

なにやら、まーちゃんにインタビューするのが目的だった、みたいな……?

それに全滅? リスト? なにやら運営には、説明していた『最強プレイヤーへのインタビュー』とは別の意図があったようだ。


 取り残されたまーちゃんを顔を合わせ、なんとも言えぬ空気の中、鏡写しの苦笑いを浮かべていた。

そこに、先ほど醜態をさらした二人が戻ってくる。



「いやー、お見苦しい所を……」


「それより、言うことあるんちゃうか?

 まーちゃんがどうしたって!?」


「あー、それはー。ははは……」


「誤魔化してもあかんで! 事と次第によっては、容赦せんぞ!?」



 俺の威嚇に、石切は苦笑いだ。

対する生駒は、ゲーム内で操作画面を出してなにやら作業していた。



「ま、バレたからには仕方ないわ。

 それに、向こうも問題ないって言ってたし。

 人を呼んでもいいかしら?」


「なんの話やって聞いてんねんけど!?」


「まー、それは彼が来てからね」



 画面に向かいながら話す姿は、俺のことはどうでもいいといいたげだ。

少しばかり苛立つが、ぐっと堪える。

ここで噛み付いたって、相手の方がこちらより格上なのだ。

少なくとも、こちらの世界(ゲーム内)では。


 なにやら操作をしていたイコマがこちらに向き直った時、それと同じくして転移用ゲートが開く。

その中から現れた、イコマの呼び出したであろう人物に、俺は見覚えがあった。

それと同時に、俺たちが手のひらで転がされていたのだと知る。



「やあやあ、久しぶり。ハハッ!」


「ネズミーー!! お前そっち側やったんかーー!!」


「うわー、ブチギレじゃん。愛理さんなにしたの?」


「あんたたちの手伝い」


「なるほど」


「なに納得しとんじゃーー!!」


「まあまあ、落ち着いて。別にとって食おうなんて話じゃないからねー?」


「ほんなら、ちゃんと説明してもらおか!?」


「はいはーい」



 気の抜ける返事と共に、ネズミは余っていた椅子へと座る。

と同時に、赤い狼も隣へと座った。



「あ、アカセンセもおったんや?」


「…………。まさか気付いてなかったのか?」


「私も今気づいた」


「これはひどい……」



 生駒のトドメに、赤い狼の尻尾は、だらりとうなだれた。

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