表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/68

64.暴言インタビュー

 インタビュー当日。運営の中の人二人が、俺の砦へとやってきた。

軽い挨拶と説明を受ける中、俺は二人の声がなんだかたわんで聞こえ、意外と緊張しているのだと自覚した。

しかし人間語り出せば早いものである。今までの歴戦の武勇伝を披露したのだった。

まさかそれが、禁止ワードの連発だとも知らずに。



「ともかく、禁止ワードの代替案は後で考えるとして……」



 運営会社のインタビュアー、生駒と名乗る女性は、凍り付いた空気を取っ払うように切り出した。

まーちゃんの暴言癖は今さらだし、暴言の語彙力(レパートリー)が高いのは分かっていたが、うっかり出てしまったようだ。

多分今回は、相手に対して言ったわけではないし、緊張で口をついたというよりは、本気で代替案を出したつもりだったんだと思う。

俺の戦闘時の暴言よりも、かなり鋭利な言葉の刃だったけどな……。



「トントンさんは、ずっと一人でやってきたのに、どうしてまた生産職の育成をはじめたの?」


「あー、それはやな……。結婚システムがあったからやな。

 そろそろ寿命来てたから、相手が必要やろ?

 それで、戦闘スキル入れてない相手探してたんや」


「なるほどね。もしかして、二人は元々知り合い?」


「ちゃうで。色々あってん」


「ふーん……」



 そうだ、いい機会だしここで聞いておこう。

俺を振り回した、あの忌まわしいシステムの話を。



「それよりもやな! なんなんあのシステム!?」


「なんのこと?」


「結婚システムや! あれのせいで、えらいめに……。

 いや、あれのおかげでまーちゃんと会ったわけやし、今はそうでもないけどやな!

 それでもあの謎システムなんなん!?」


「あー、それね……。んー、どうしよっかなー」



 なにやら悩み顔の生駒。

聞かれちゃマズいことなのか、適当な言い訳を考えているのか……。



「先輩、俺も知りたかったんですよね。

 あれって、結構不評で、いつもクレーム処理に困るんですからね」


「あー……。まあいっか。これは、ここだけのハナシね?」


「なんや、もったいぶって……」



 一応理由があるらしい。

しかし、同じくインタビューしにきた石切も知らないとは、そんなに重要なことなのだろうか?



「ユーザーってのはね、砂なのよ」


「は?」


「それ、理由になってます?」


「で、ゲームってのはザルなのよ」


「分かるように説明してもらえるか?」


「だーかーらー、一人だとさらっと網目を抜けていっちゃうでしょ?

 なんで抜けられないように、ユーザー同士をくっつけるわけよ!」


「えっ……」


「納得できるような、できんような……」


「あなただってそうでしょ?

 もしアイテム全部集め終わって、目標がなくなったら、やめちゃうじゃない。

 なら、目標がなくてもやめれない理由を作るのも、私たちのシゴトってわけよ。

 ほら、スマホのゲームだって、ギルドだなんだと横の繋がり作らせるじゃない?

 あれだって目的は同じなのよ」


「ほーん……。なんというか、そういうこと考えて作られとんのは、意外やわ」


「単なるユーザーへの嫌がらせじゃなかったんですね……」


「ちょっと、石切君!? そんな風に思ってたの!?」


「だってほら、前の実演販売スキルの裏設定の理由がひどかったから……」


「あれは裏のない、ただのゲーム性の話よ」


「もしかしてそれって、実演販売スキルやと攻撃力上がるってやつか?」


「そうよ。あなたたちはもう気付いてたでしょうけどね。

 それにあなたは、ソロの時だって『憤怒の剣』効果使ってたし」


「え? そうなん?」


「えっ……。気付いてなかったの?」


「一応、どういう効果か説明してもらえるか?」


「スキル説明にあるのは、HPが減ると攻撃力が上がるってだけだけど、裏設定があるの。

 それが、怒りを表す言葉を発しながら攻撃すると、攻撃力が上がるってものよ」


「あー……。だからワイが、ソロでボス討伐できてたんか」


「そういうことね」



 まったく、ここの運営ってのは隠し設定が大好きらしい。

ということは、もしかするとまだ知られていないものもあるのだろうか……。

思わぬところでやり込み要素を発見してしまったな。



「あっ、ごめん。着信だわ。ちょっと待っててね」



 まだ見ぬ要素にゲーマーの血がざわめく中、生駒が言う。

どうやら、リアルの方に連絡が入ったらしい。

彼女はそのまま、素早くログアウトしてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ