表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/68

33.あっとほーむなしょくばです



「ついに……! ついに来たわ!!」


「うわっ! いきなりなんですか……」


「ついに来たのよ! 私の忍ばせたシステムを利用する子が!!」


「はい?」



 オフィスの仕切りの隣から突然聞こえた声に、石切(いしきり)琢磨(たくま)は何事かと問いかけた。

けれど返ってきた答えは、彼を困惑させるだけだった。



「あの、愛理さん……。今度はなにやらかしたんですか?」


「やらかしたとは失礼ね! ちょっと細工してただけよ?」


「それ多分、ユーザーにバレたら面倒なヤツですよね?」


「なによ、別にいいじゃない。私たちがルールなんだから」


「うーん……。内容の重大さによるんで、説明してもらっていいですか?」



 ドヤ顔の生駒(いこま)愛理(あいり)は、胸を張って彼に説明をし始める。



「石切君、このゲームが生産職に厳しいという評価を受けているのは、当然知ってるよね?」


「そりゃもう、何件もクレーム食らってますからね。

 先輩が一向に修正の許可出さないんで、『仕様だ』の一点張りで放置してますけど」


「そう! そんな状況を知っていながら、私が許可を出さなかった理由、わかる?」


「知りませんよそんなこと。

 だいたい、戦闘でしか経験値入らないって仕様にこだわる理由なんて、初期に面倒なプログラム組んで改造できなくなったとか、その程度しか思いつきませんし。

 でも、実際プログラム的には簡単に修正できそうでしたし、ただのこだわりじゃないんですか?」


「まぁ、こだわりっちゃこだわりだけどね?

 けど意味もなく生産職を不遇にしてたわけじゃないわ!」


「じゃあ、なんなんです?」


「抜け道を作って、それを見つける人が出るのを待ってたの!」


「抜け道?」


「そう! 生産職の不遇スキル、実演販売の活用よ!」


「あー、あのNPCに高値で売れる代わりに、時間のかかる面倒なスキルっすよね。

 普通に売却価格上がる交渉スキルの方が使い勝手いいって、攻略wikiに書かれてましたね」


「実はそんな不遇スキルが、めちゃくちゃ強かったりしたら、面白いと思わない!?」


「思わないっす」


「かっー! 分かってねぇなぁ!!

 不遇からの成り上がりは、ランキングを席巻する鉄板ネタじゃないのさ!」


「それ、どこのネット小説サイトのランキングっすか」


「どこのだろうね」



 ホントにどこのだよ。大抵のだよ。

両者そう思ったことは、言うまでもない



「ともかくよ! そのスキルを使えば、武器の攻撃力が爆上がりすんのよ!」


「へ、へぇ……。なんでまた、そんな面倒な仕様を?」


浪漫(ロマン)よ」


「は、はぁ……。左様にございますか……」


「てことで、この子がそれを見つけた子よ!」


「どれどれ……」



 指し示すモニターには、可愛らしいアバターの商人の女の子と、羽の生えた小さな黒ブタが映っていた。

そして大量の剣を言葉巧みに売り捌きながら、モンスターを次々と討伐するのだ。



「あの、モンスターが武器買ってません?」


「そりゃね、NPC相手に発動するスキルだからね。モンスターも対象よ」


「意味がわからない……」


「そりゃ、モンスターの湧く場所に、街に居るはずのNPC出せないじゃない」


「どうしてです?」


「NPCは一般人だからよ!」


「あ、世界観の話っすか……」



 呆れる石切に対し、生駒はいまだにドヤ顔だ。

それほどまでに、彼女はこの裏技とも言える仕様を気に入っていたのだろう。

そう察した石切は、これ以上ツッコミを入れることを放棄するのだった。



「まぁいいんですけど、ユーザーの観察はほどほどにして、ちゃんと仕事してくださいよ?」


「そのへんも抜かりないよ。次に仕込む仕様の穴を考えてるトコだから!」


「いや、そういうんじゃなくて……。まぁいいか、先輩が楽しいなら」



 あきらめの境地に至り、適当に切り上げて自分の仕事に戻る石切であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ