26.ちゃんと商人してた
自分のスキルツリーを見ながら、うなるまーちゃん。
なぜか上がっていた「実演販売」の習熟度もさることながら、その先につながる製造系スキルが気になっているとうことで、空中の画面をツンツンとつついている。
「でやな、実演販売ってのは、武器にも適用されるみたいやな」
「え? そうなの? あ、でもそりゃそうか、武器も商品になるもんね」
「せや。だからな、売るためには良いように見せやなあかんやろ?」
「うん。良いものじゃないと、誰も買わないもん」
「せやから、武器の最大性能を出せるようになるんや」
「へー」
心底どうでもいいと言いたげの顔になった。
あ、これ不機嫌モード入るかな? いやでも説明しないと、今後の育成方針に関わるしなぁ……。
ここは、うまくヨイショとゴマスリで、話つつ要点にスリゴマねじ込んでいくことにしようか。
「いやぁ、まーちゃんの実演はスゴいスゴいからなぁ……」
「語彙力のなさの方が、スゴいことになってない?」
「失礼な! ワイかて頑張れば……。それはええねん!
いやでもな、ホンマまーちゃんの実演販売スゴかったで?
なんつっても、モンスターも魅了するレベルなんやからな!」
「へっ!? そんな、モンスターをメロメロにしちゃった!?」
「せやせや。買値の1.2倍で売りつけてたやないか!」
「ちょっと待って、魅了って私の魅力でってことじゃないの!?」
「魅力というか、話力やろか?」
「わりょく……」
あれ? もしかして言いたいこと通じてない?
「あのな、まーちゃんがどんな想像してたか知らんけど、ワイがしてんのはキャップ戦の話やで?」
「うん。キャップが私のみりょくにメロメロって話だよね?」
「ちゃうわーーーー!!」
「ひゃっ!?」
微妙に話が噛み合ってないと思ったら、やっぱりお互いが違う方向を向いていたようだ。
話の流れを戻さねば……。
「ワイがゆーてんのは、キャップと戦ってた時に短剣売ったやろ? あの話や」
「あ、そういえばそんなことも……」
「忘れとったんかーーい!!」
「ひえっ……」
「ま、まぁええわ。あれが実演販売やったんや」
「あ、そうだったの? あの時はなんかね、買うって言われたから、売らないとって思っちゃって……」
「まー、そういうスキルやし。実演して売る、それが実演販売やからな」
「実演して売らなかったら、ただの自慢だよね」
「それな!」
たまーに噛み合うのに、ズレるときはとことんズレるのが、俺とまーちゃんの会話らしい。
天然にツッコミ入れるという構図的には、常に噛み合っている気がしなくもないが……。
「んでな、おそらく実演販売のスキル対象になると、武器の攻撃力の数字そのまんまの攻撃力が出るみたいなんや」
「え? 武器攻撃力の数字と同じになるまでは、自分の攻撃力分しか効果がないとか言ってなかった?」
「せや。でもそれやったら、武器本来の力が分からんやろ?
せやから実演販売スキルは、その制限を取っ払ってるんちゃうかと考えたんや」
「じゃあ、強い武器を使えばもっと強くなるの?」
「せやな。ワイの貸した剣やと、1600近くダメージ出てたやろ?」
「あぁ、あの『どらごんばすたぁ』とかいう……」
「名前はどうでもええねん!!」
「ひゃいっ……」
覚えてやがった……。いらんことはしっかり覚えてやがったぞコイツ……。
「あっ、それなら、すっごい強い武器を使えば、どんな敵も倒せるって事だよね?」
「と思うやん? ワイもそれでいけるとおもたんやけどなぁ……」
「何か問題があるの?」
「ほら、実演販売やから……」
「あ、そっか、売らないといけないんだ……」
「せや。そんで店売りの武器の攻撃力は、高くて200程度やろ?」
「うーん、いっぱい店で買って、売りながらってやるのは……」
「まぁ、今までのダメージが50も出えへんのよりは、かなりマシなんやけどな」
「そうだねぇ……」
強くなれば強くなったで、上を知ってしまったゆえに満足できなくなるものだ。
なかなか簡単にはいかない、難しい問題だなぁと改めて考えさせられる。
「あのね、ひとつ気になったんだけど」
「なんや?」
「もしかして、どらごんばすたぁって、名前のわりに伝説レベルの剣じゃないの?」
「せやで?」




