19.もくもくレベル上げ
「ていっ!」(11)
「やぁっ!」(8)
「えいっ!」(13)
まーちゃんが狼を相手にしているのを見ながら、俺はぼんやりと考えていた。
なんか騙してるみたいで気が引けるなと……。
この世界の結婚システム、その対策にまーちゃんを使っているのもそうだが、それはまーちゃんにとってもいずれ問題になる話だし、別にそこまで悪いことをしてるとは思わない。
けれど俺の本性、つまりこんな多人数推奨、ゲーム内での知り合いを作らせるようなシステムの世界で、ずっとソロプレイヤーでやっているような、そんな人付き合いの嫌いな俺に付き合わせるのが、何よりも引け目を感じるのだ。
俺は、誰とでも簡単に打ち解けられるような人間じゃない。
今までだって、無理して使ってる関西弁モドキや、ツッコミ役、もしくはまーちゃんのお守り役という、それこそロールプレイ(演じ遊戯)をすることで乗り越えているだけだ。
本来の俺は、口汚くモンスターを罵りながら、ボロボロになりながら戦う戦闘狂だ。
彼女にはもっと、そのプレイスタイルに合う、楽しく過ごせる仲間といる方が良いんじゃないだろうか……。
「やったぁ! やっとスキル取れたよっ!」
「おっ、お疲れさん。これで実演販売できるな!」
「えへへ。トンちゃんが休んでる間も頑張ったもんね!」
「悪い悪い。いっつもあの時間はアカンねや」
「いいよー。疲れたらちゃんと休まないとね?」
「ありがとな。それじゃ、いったん街戻るか?」
「うん。ちょっと疲れたし、今日はこのくらいにしようかな」
「せやな。時間も時間やしな」
この世界は常に昼だ。けれど時計を見れば、もうすぐ日が変わろうとしていた。
まーちゃんはプレイスタイル的にも、私生活の話をすることはないだろうけど、そろそろ寝ないと仕事や学校もあるしキツいだろう。今日はここで解散になるな。
「ほな、街戻ったら解散やな」
「うん。あのっ……、また明日も、お願いしていいかな……?」
「…………。しゃーないな。そんな顔されたら、あかん言われへんやん」
「えへへ……。明日もよろしくね」
ぎゅっと抱きしめられ、街へと歩き出す。
今は考えないでおこう。
俺の目的が達成されたら、もっと気のあう仲間を探してやって、それで俺は身を引こう。
それが一番、お互いのためになると思うから。
◆ ◇ ◆
「あのねっ!」(14)
「トンちゃん!」(11)
「このねっ!」(18)
「武器ねっ!」(18)
「もっとねっ!」(21)
「オススメなっ!」(98)
「武器がねっ!」(103)
「ないのかなって!」(19)
ひとことひとこと喋りながら、まーちゃんはコボルトと戦っていた。
上がるダメージの数字は、昨日と変わらず……、ん!?
「ちょっ!? まーちゃん! 今なにした!?」
「へっ!?」(17)
「なにがっ!?」(22)
「あれ? 見間違いか? なんか100近くダメージ出てたような……」
「そんなにっ!」(19)
「ダメージ出てたらっ!」(22)
「もうちょっと!」(20)
「楽なのにねっ!」(15)
「あっ、倒せた」
ふぅ、と一息つき、まーちゃんは地面にへたりこんだ。
さすがに、商人一本で行くとはいえ、攻撃力にもステータス振らないと厳しいか?
しかしこれも、レベルを上げるには戦闘しなければいけないゲームシステムのせいだ。
もう少し生産職にも優しいシステムにしてほしかったもんだ。
「お疲れさん。武器変えても同じやけど……。
せやなぁ、たまに毒与える武器とかにしてみるか?」
「毒?」
「そそ。毒にしたら、一定時間ごとに少しダメージ入るからな。
まーちゃんレベルのダメージやと、2回攻撃したのと同じくらいの効果あるで」
「それって、私の攻撃が弱いだけなんじゃ……」
「勘のいいまーちゃんは嫌いやで」
「ふえぇ……」
へたりこむまーちゃんをよしよしとなでながら、俺たちのレベル上げは続いた。




