表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/68

14.初勝利



「えいっ!」(4)


「せいっ!」(7)


「てやっ!」(2)



 可愛い声と共に上がる、ダメージの数字は、声の大きさと同じくらい小さかった。



「いや待って!? マジで弱すぎん??」


「ひゃいっ!?」



 俺の漏れ出た内心の言葉に、まーちゃんの手が止まる。

相手にしていた野うさぎもまた、こちらを見つめて硬直していた。



「すまんすまん、続けて」


「ひゃい……」



 これは野うさぎ一匹仕留めるにも、かなりの時間がかかりそうだ。

それも仕方ないか、なにせ装備は初期装備。

一番防御力の低い服に、ナイフが一本支給されただけなんだからな。


 せめてもう少し良い武器を与えれば……。

とも思うものの、装備制限もあるし、このゲーム特有の仕様もあって、強い装備渡してもあんまり意味ないんだよなぁ……。



「やったぁ! トンちゃん! 勝てましたよ!」



 思案する俺は、目の前で繰り広げられる激戦を、完全に見逃していた。



「おっ、おう! おめでとさん! 初勝利やな!」


「えへへー、これで商人のスキル取れるかな?」


「あー、期待してるとこ悪いけど、まだレベルは上がっとらんな……」


「えぇ……。残念……」


「ま、まぁ、あれや。何事もそう簡単にいってしもたら、おもろないやろ?」


「そですねぇ……。でも、はやくトンちゃんに私の作った武器、プレゼントしたいなぁ……」


「ええこと言うてくれるやないか……。

 ってあれ? さっき大工スキル取りたいって……」


「うん! まずは大工! そのあと鍛治やるね!」


「ワイの武器は二番目なんかーい!!」


「へへへ……。色々やりたいんだもん」



 そう言って可愛い笑顔を向けられれば、さすがの俺も文句は言えない。

まあ、俺としては結婚可能レベルまで戦闘系スキルを取らないのであれば、まーちゃんが何をしたって構わないんだけどな。



「まぁええわ。とりあえず、もうちっと良い武器見繕ったるわ。そしたら多少は強なるやろ。

 それに、スキルレベルはまだ上がっとらんけど、基礎レベルは上がったみたいやし、ステータスの説明もせんとな」


「ステータス?」


「とりあえず、うさぎのドロップ品拾って、街いこか」


「はーい」



 先ほど野うさぎがいた場所には、小さな木箱が落ちている。

この中に、モンスターのドロップ品は入っている。


 そりゃね、本来なら死体があって、それを解体して……。

そういう工程がいるんだろうが、そんな生々しいのは年齢制限入りそうだしね。妥当な処理ですよ。

だって、これはゲームなんだから。



「毛皮とお肉が入ってたよ」


「せやろ。肉は焼いたら食べられるし、毛皮も売れるから持ってくで」


「はーい」



 まーちゃんは、ごそごそと持っているカバンにアイテムを詰める素振りを見せる。

そんなことしなくとも、アイテムはウィンドウを出して、カバンの欄に入れれば入るんだけどな……。

これがいわゆる、ロールプレイングガチ勢というやつなのだろう。



「ほな行こか」


「はいはーい!」



 再びむぎゅっと抱きしめられ、連れられてゆく。

これはもう慣れるしかないのだが、どう考えても周囲からはペットのブタにしか見えないだろう。

もしくは、大事に連れて歩いている、ぬいぐるみかなにかだ。



「まーちゃん、そこの角曲がったとこが武器屋や。先に武器見るで」


「え? でも私、お金ないよ?

 毛皮売らないと買えないんじゃないかな?」


「毛皮売ったところで、武器買えるほどの金額にはならんわ。

 まー、今回はワイがこうたるさかい、気にせんでええで」


「ホントにいいの?」


「その代わり、最高の武器作ってや?」


「うんっ!」



 楽しそうにスキップしながら、まーちゃんは武器屋の扉を開ける。

からんからんと来客を知らせるベルがなれば、強面の店主が、静かに「いらっしゃい」とだけ言葉を発した。



「わー、色々あるんだね!」


「せやな。どれがええやろか……」



 まるで初めて博物館に来た子供のように、まーちゃんは並んでいる武器に興味津々だ。



「どれがいいのかな?」


「高くて強ければええ、ってもんでもないんや。

 自分のステータスを考えて選ばんとな」


「あ、そうそう、そのステータスってなあに?」


「あー、説明せんとあかんな。ちょっと長なるけど、一から説明するわ」



 そうして、俺はステータス講座を始めるのだった。



【14と1/2.文字数稼ぎ】



「ステータスには色んな数値があるやろ?

 基礎レベルが上がったら、その5つのうちから、好きなのをあげられるんや。


 そんで、その5つのどれかに振ったら、それぞれ対応した2つの数値が上がるんやけど、その2つのうちどっちかに、さらにプラスして自分でも数値振れるようになるんや。


 まずはそれぞれの意味を説明せなならんねんけどやな……。上からいこか。


 最初のSTRってのは、力関係の数値やな。

 これ上げたら、攻撃力かHPを上げられるポイントがもらえるで。

 近接戦闘には重要やし、弓使いも攻撃力が大事やからな、戦闘するなら大事や。


 次のINTってのは、賢さのことや。

 これは魔法攻撃力とMPを上げられるんやけど、基本的にはSTRと同じやな。

 違うのは、関わってくるのが魔法になるってとこや。

 まー、魔法には回復魔法もあるし、支援職には不可欠やな。


 その下のDEXってのは、器用さや。

 命中とクリティカルのどっちかを上げられるで。

 物理攻撃も魔法も、命中するかはこの数値次第やし、クリティカルは大ダメージやし、回復にも効果あって、大回復になるから、前衛後衛関係なく欲しい数値やな。


 SPDはスピードやな。つまり素早さや。回避と攻撃速度に使えるで。

 魔法も回避できるから、防御に極振りせんでも、全部避けてしまうって方法もアリっちゃアリや。

 攻撃速度上げて手数も増やせるし、回避特化ってのは結構おるんやけどな。

 逆に高DEXの的にはめっぽう弱くなるっちゅう所が、なかなか考えモンやな。


 んで最後にVITやな。これは防御力や。

 物理防御、魔法防御にポイント割り振れるで。

 全部受け切ってしまえば問題ないって戦闘スタイルやったり、自分で回復できるタイプなら回避型より安定しやすいのがメリットや。

 なんたって、回避ミスでごっぞりHP持ってかれるなんて危険が減るんやからな。

 あとちょっと特殊なんは、物理防御はアイテム回復、魔法防御は魔法回復の効果を上げるから、意外とVIT型ってのも悪くないと思うで。

 攻撃速度とのトレードオフってやつやけどな。


 んで、たとえばSTRやったら、勝手に攻撃力とHPが上がるんやけど、さらにどっちかを追加で上げられるっちゅうわけやな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ