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鉱石ツリーはややこしい

 ☆☆☆


 その日、故郷の母親から電話があった。


「うん、大丈夫、変わりないよ。ちゃんと食べてるって、毎日弁当作ってるんだぜ。……ありがとう。あっ……一応言っておくけどオレ転職するかもしれないからさ。まだ決めてないけど、農業関係かな。……じゃあ、また」


 ふーー、なんとか誤魔化せたようだな。さてゲームだ。


 ――――――――――――――――




 オレは『鉄のインゴット』を惚れ惚れと見ていた。

 太陽の光を鈍く反射し、手に持つと、ずっしりとした重さが心地よい。


 この鉄のインゴットは、鉄鉱石の種と一緒に、鉄鉱石×5、鉄板×4を埋めてみた結果、収穫することができた。


 オレは鉄のインゴットに頬擦りをして、アポロやエリンばあさんに見せて回った。

 鉱石に挑戦し始めてから一番大きな成果だった。


 ここ数日、市場に頻繁に通い、鉱石や石の情報を集めていた。特に鍛冶屋には必ず顔を出し、親方のガイドフさんをしつこくしつこく質問ぜめにした。

 そうやって得た情報を、実際に畑で試していく。

 オレの頭の中には、鉱石ツリーの枝が徐々に広がり始めていた。


 どう鉱石の種がすべての基本だった。インゴットの種というのはおそらく存在しない。

 まず銅鉱石の種を埋めて、銅鉱石を収穫する。

 次に銅鉱石を変換機にかけるとランダムで2~5ぐらいの種になる。

 その種を再び埋めるのだが、今度は種と一緒に銅鉱石自体を埋めてやるのだ。


 そうすると銅板や銅のインゴットが育つ可能性が出てくる。

 一緒に埋めた数、天候、畑の状態などにも左右されるが、実際の収穫例をいくつか挙げてみると。


 銅鉱石の種+銅鉱石×5 = 銅板×1


 銅鉱石の種+銅板×6 = 銅のインゴット


 銅鉱石の種+銅板×7+銅のインゴット×1 = てっ鉱石×2


 鉄鉱石の種+銅板×5 = 屑鉄


 といった感じである。

 インゴットを種と一緒に埋めると、上位の鉱石が高確率で収穫できる。

 屑鉄というのは失敗すると収穫できる無価値な物で、小屋の周りには、むかついてブン投げた屑鉄がいくつか転がっていた。


 鉱石の価値は、銅、鉄、鋼、銀、プラチナ、オリハルコン、の順で上がっていき、さらに銀以上は、魔法銀、重力銀、星銀、などの派生が出てくるらしい。

 また石については全く別のツリーがある。


 まだまだわからないことが多く、勉強中である。

 農業関係ではなくて、金属関係と言った方が、嘘にならなかったかもしれないな。


 さあ、いよいよ鉄のインゴットを使って鋼系のツリーに進出していくか。

 目指すは鋼のインゴット3個。これと鉄の爪を鍛冶屋に持っていけば『鋼の爪』を作ってもらうことができる。技術力があれば、工作台で自作も可能なのだが、そこまでの域に到るにはストップウォッチ片手に三か月はかかりそうだ。


 オレはエリンばあさんに、強いモンスターが出た時は積極攻撃を頼みますと伝えてから、鉄鉱石の種と鉄のインゴットを畑に埋めた。


 鉱石系の種はヒマワリの様な花が育つ。

 茎が伸び、花が開花すると収穫OKである。少し心が痛むが花ごと引っこ抜くと、根っこの部分に鉱石がゴロゴロとついているのだ。


 埋めた鉄鉱石の種は順調に成長していた。


 ……さあ何が湧くか、鼠の大量発生のパターンなら楽なんだけどな。


 ――――バッファローウォールに侵入されました。


 一番めんどくさい奴がきやがったか。しかも今までで一番でかい。

 ブラックホールから、大型トラックの荷台の様な、大きな直方体の石壁がドスンと湧いてきた。

 幅が広い方の面の真ん中に、気持ちの悪い顔が描いてある。


 石壁には、規格外の大きさのバッファローが紐で繋がれている。

 そして整地ローラーを引っ張る野球部員が如く、バッファローが石壁を引っ張り始めた。


 オレ達は三人がかりでバッファローをフルボッコにするが、この牛がとにかく硬い。

 牛は全く反撃して来ずに、汗を掻きながら一心不乱に石壁を引っ張る。


 こいつらは敵というよりも、妨害要員である。

 牛は鉱石の埋めてある場所まで石壁を運ぶと、バッタリと倒れて昇天してしまう。後に残った石壁は周りの鉱石の養分を吸い取って、すべて屑鉄に変えてしまうのだ。

 しかも養分を吸った石壁は、さらに硬さをまして、そのままそこに居座ってしまう。

 もちろん石壁の通り道に他の作物があれば、すべてダメになってしまう。


 バッファローウォールは、鉱石農場にとって厄災のようなモンスターであった。


 石壁はすでに畑の真ん中まで進出していた。


 ……くっ、このままじゃ間に合わんな、屑鉄に変えられてしまったら、また一からやり直しになる。エリンばあさんにあまり無理はさせたくないが。


 オレは、ばあさんに大きく手を振って合図した。

 それを受けたエリンばあさんは、弓を速射しはじめた。

 雷属性の矢が、バッファローにバシバシと突き刺さり、その度にバッファローの足が僅かだが止まる。


 間に合うか。

 オレとアポロは息の続く限り、牛に攻撃をし続けた。

 鉱石まで後5メートルといった所で、なんとか牛を消滅させた。


 ふーー、間に合ったか。オレはエリンばあさんにすまない、という風に手を掲げた。


 石壁の気持ち悪い顔の絵が、不満そうにオレを見ている。

 オレの畑にふてぶてしく居座りやがって。収穫が終わったらお前も消滅させてやるからな。


 鉄の時は黒っぽい花を咲かせていたが、今は青い花を咲かせていた。

 軽く頭を下げてから、引っこ抜くと初めて見る鉱石が土から出てきた。


 無事、鋼鉱石の収穫に成功したようだな。


 さらに変換機にかけてみる。

 成功率が落ちているはずなので、祈るように待っていると、鋼鉱石の種が3つ転がり出てきた。


 よし、これで本格的に鋼のインゴットをめざせるぞ。


 


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