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「古代の戦史① カデシュの戦い(前編)」

「古代の戦史① カデシュの戦い(前編)」


 「我が名はオジマンディアス、王の中の王! 全能の神よ、我が業績を見よ! そして絶望せよ!」という言葉を残したことで有名なのが、エジプト新王国第19王朝がファラオ、ラムセス二世だ。

 彼は世界史の記録に残っている中で最後の戦い、「カデシュの戦い」を引き起こした。エジプトとヒッタイトの間で起こったこの戦争は世界最古の平和条約が締結されたことでも知られており、その条約文は国際連合の本部に飾られている。


——前史——


 紀元前1550年頃、侵入してきた異民族ヒクソスを追い出したエジプトは、新王国と呼ばれる時代へと突入した。中王国時代までは、砂漠によって守られている地勢のため拡大意欲のなかったエジプトも、異民族の侵攻と彼らの保有していた戦車(チャリオット)に危機感を刺激され、拡大路線を選ぶことになる。

 そしてエジプトのナポレオンことトトメス3世の時代には、南はヌピア(スーダン)、北はシリアに至る版図を獲得するに至った。シリアは土地が肥沃(当時)で、世界各地から商人が集う交易の要所であり、シリアに属国を築いたエジプトは一躍古代オリエント最強の文明へと成り上がった。

 しかし国内で神官の地位が高くなり、国政に口出しするようになると王の権威が危うくなり始めた。そこでアメンホテプ4世が『アマルナ改革』と呼ばれる国政改革を実施。神官勢力の強くなったテーベから、アケトアテン(現アマルナ)へ遷都する。こうした改革の甲斐あって国王の権力は守られたが、国内に目を向け続けた結果としてシリアの属国は失われた。

 セティ1世の時代には失われた領土を回復するための遠征が数多く行われる。そのため当時シリアを占領していた一大帝国、ヒッタイトとの対立は激化していった。

 そこで時のエジプト王ラムセス二世はシリアへの遠征を決意。ヒッタイト領のカデシュ占領を目指した。

 一説によればエジプトの女王がヒッタイトの王子に王権を売り渡したものの、その女王が殺害され、同時に王権を受け取りに来たヒッタイトの王子が殺害されたために起こった共言われているが、私が調べた限りでは詳細はわからない。


——両軍の戦力——


 エジプト軍は推定一万六千、ヒッタイト軍は推定二万と兵力に大差はなかったと思われるが、その内実には大きな違いがある。

 第一に戦車(チャリオット)の性能だ。チャリオットとは馬車に歩兵が乗って戦う兵器のことを指し、馬に直接乗ることが技術的に難しかった当時の農耕国家にとって最強の兵器だった。それこそメソポタミア、インド、中国全てにおいてである。しかし一口にチャリオットといっても、エジプトのそれとヒッタイトのそれでは戦術的な用途も利用された技術も大きく異なっていた。

 エジプトのチャリオットは二人乗りで、車軸が後方に着いている機動性の高い兵器だった。騎手と複合弓を装備した射手の2名が乗車し、基本的には歩兵が護衛についた。機動力を活かして軽騎兵のように運用されたと推察されており、敵との距離を保ちながらの射撃や撹乱を行なった。

 対してヒッタイトのチャリオットは三人乗りで、車軸が中央についた頑強な兵器だった。戦場での機動力こそエジプトのチャリオットに劣ったものの、三人乗りのため護衛の兵士が乗り込む余裕があったため、戦略的機動力はむしろエジプトのそれより優っていただろう。ヒッタイトは分業体制が進んでおり馬の品種改良が積極的に行われていたため、三人乗りの車を引ける強靭な馬を揃えることができた。後にアッシリアや中国でも三人乗りのチャリオットが採用されることになる。

 第二に編成の違いである。エジプト軍は同じ師団にチャリオット、歩兵、弓兵を混ぜた諸兵科連合を形作っていたのに対して、ヒッタイトはほぼ単一兵科で一つの師団を編成していた。


 次話ではより詳細な記録があるエジプトの視点から、カデシュの戦いの進捗と戦略を解説する。

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