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意気地あり


 それから4月、看護師養成学校に入学して間もない頃の進は、毎日希望に溢れたような様子で、今日学校で習った事や面白エピソードなどを幼子のように語ってくれました。

 何とクラス30名中、男子は彼たった一人。このような事態は過去に前例もなく、入学希望者の中で他に男性は複数いたらしいのですが、その全てが辞退もしくは不合格だったようなのです。


「どうしよう? 女子校の中に紛れ込んじゃったみたいだよ」


「そうなの、よかったわね。彼女を選びたい放題じゃなくて?」


「そう上手くいく訳ないじゃん。今までの人生で、モテた事なんて一度だってないよ」


 苦笑する息子の姿は、親から見ると愛らしいものですが、小太りで外見を気にしない彼は、お世辞にも女子から好かれる要素は持ち合わせておりませんでした。清潔感が第一の医療職でやっていけるのか心配になったほどです。

 ですが高校も卒業し、将来の職も見据えるようになった子供に対し、過干渉するのも保護者として避けるべきかと思った次第であります。

 

 ですが案の定、いつの頃からでしょう……、息子の進はしだいに口を閉じ、学校で起こった事などを話さなくなってきました。


「ススちゃん? 毎日真面目に学校に通っているみたいだけど、最近の調子はどうなの?」


 蒸し暑くなる6月末だったと思います。私は浮かない顔の息子を見て心配となり、意を決して訊いてみたのです。夕方遅くまで学校に缶詰となっている彼は、当然のように疲れておりました。


「んん――ああ……。さすがに覚える事が一杯だね。いよいよ座学だけでなく、実習みたいなものも始まってきたし……とにかく大変だよ」


「そうなの、3年で国家試験も受けなくちゃならないし、やっぱり看護職って生半可な覚悟じゃできないものね……」


「そうさ、他人様の命を預かるような仕事だかんね……」


 明らかに表情が曇った彼の顔色を伺い、こう言わざるを得ませんでした。


「ススちゃん、ひょっとして学校で……」


 ビクッと顔を上げた進は、重い教科書の入った鞄を足枷のように持ち上げると、さっさと物だらけの自分の部屋に退散してゆきました。


「何でもないよ! それより今晩のおかずは何? あんまし自由に使える金も持ってないから、腹減っちゃてさ……」


「……いや、何でもないなら、それでいいんだけど……お小遣いも足りないのね」


 高校を卒業し、今の専門学校に入学してからは、友達付き合いも殆ど聞かなくなりました。元々友人も少なく交友関係も限られていた無口な息子にとって、今の女性しかいないクラスでの立場は、一体どうなっているのでしょう。

 問題が発覚してくるのに時間はかかりませんでした。夏頃にクラス担当の教員から連絡が届いたのです。




 

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