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【完結済】悪女にされた公爵令嬢、二度目の人生は“彼”が離してくれない  作者: ゆにみ
第二部

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6、俺にも守らせて?

 ノエルと共に歩む未来を、誰にも壊させはしない。

 そう固く決意したそのとき——


 コン、コン。


 不意にドアを叩く音が部屋に響いた。



 (……ノエル?)



 次に会う約束は夕方のはず。胸の奥がきゅっと強張る。まさか、もう敵が……?

 窓の外へ視線を向けると、いつの間にか空は茜色に染まり、日が傾いていた。どうやらウンディーネと話し込んでいたらしい。



 「あら、ノエルじゃない?」


 ウンディーネが軽く首をかしげる。



 ゆっくりとドアが開かれ、見慣れた金髪が姿を現した。



 「セレナ、お疲れ様……って、あれ? ウンディーネじゃないか」


 「久しぶりね!」



 ウンディーネはくるりと宙を舞い、水しぶきを煌めかせながらノエルの前に現れる。まるで小さな泉が弾けたような、きらめく光景だった。



 「今日はどうしたんだ?」


 ノエルが少し驚いたように眉を上げる。


 「セレナ、ノエルにも聞いてもらいましょうか」


 「うん」



 私は、さきほどウンディーネと話した黒魔法の件をすべてノエルに説明した。

 ノエルは腕を組み、顎に手を当て、真剣な眼差しで黙って聞き続ける。



 「……つまり、悪意を持った人間がセレナや精霊を狙っている可能性がある、ということだね」


 「そうなの。私も精霊使いとして黙っていられない。それに……ノエルとの未来も、ちゃんと守りたいの」


 「セレナ……」



 ノエルの瞳が一瞬、優しく揺らいだ。

 その表情だけで、胸がじんわりと熱を帯びる。



 「俺も調べてみるよ。怪しい動きをしている連中がいないか、目を光らせておく。……絶対に、守るから」


 「とりあえず私は精霊界に戻るわ。仲間たちを手伝わないと。何かあれば呼んで。私たちはいつでも繋がっているから」


 「うん。ウンディーネも気をつけてね」


 「ええ」



 ウンディーネが水の粒子を残して姿を消すと、部屋にはノエルと私、二人きりになった。



 「はぁ……」



 ノエルが深く息をつき、次の瞬間、強く私を抱きしめる。

 その腕は、まるでこの世界のすべてから私を守るためにあるみたいに、力強かった。



 「セレナは、俺が絶対に失わせない」


 「ノエル……私も負けないわ。今の私には、ちゃんと力がある」


 「それでも、心配なんだよ。……俺にも、守らせて?」


 「うん。わかってる」



 互いの想いを確かめ合うように、私たちは自然と顔を近づけた。

 静かに重なる唇——その瞬間、世界の不穏ささえも遠く霞んでいく。



 深く、深く——私たちは、未来への誓いをひとつ分かち合った。

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