6、俺にも守らせて?
ノエルと共に歩む未来を、誰にも壊させはしない。
そう固く決意したそのとき——
コン、コン。
不意にドアを叩く音が部屋に響いた。
(……ノエル?)
次に会う約束は夕方のはず。胸の奥がきゅっと強張る。まさか、もう敵が……?
窓の外へ視線を向けると、いつの間にか空は茜色に染まり、日が傾いていた。どうやらウンディーネと話し込んでいたらしい。
「あら、ノエルじゃない?」
ウンディーネが軽く首をかしげる。
ゆっくりとドアが開かれ、見慣れた金髪が姿を現した。
「セレナ、お疲れ様……って、あれ? ウンディーネじゃないか」
「久しぶりね!」
ウンディーネはくるりと宙を舞い、水しぶきを煌めかせながらノエルの前に現れる。まるで小さな泉が弾けたような、きらめく光景だった。
「今日はどうしたんだ?」
ノエルが少し驚いたように眉を上げる。
「セレナ、ノエルにも聞いてもらいましょうか」
「うん」
私は、さきほどウンディーネと話した黒魔法の件をすべてノエルに説明した。
ノエルは腕を組み、顎に手を当て、真剣な眼差しで黙って聞き続ける。
「……つまり、悪意を持った人間がセレナや精霊を狙っている可能性がある、ということだね」
「そうなの。私も精霊使いとして黙っていられない。それに……ノエルとの未来も、ちゃんと守りたいの」
「セレナ……」
ノエルの瞳が一瞬、優しく揺らいだ。
その表情だけで、胸がじんわりと熱を帯びる。
「俺も調べてみるよ。怪しい動きをしている連中がいないか、目を光らせておく。……絶対に、守るから」
「とりあえず私は精霊界に戻るわ。仲間たちを手伝わないと。何かあれば呼んで。私たちはいつでも繋がっているから」
「うん。ウンディーネも気をつけてね」
「ええ」
ウンディーネが水の粒子を残して姿を消すと、部屋にはノエルと私、二人きりになった。
「はぁ……」
ノエルが深く息をつき、次の瞬間、強く私を抱きしめる。
その腕は、まるでこの世界のすべてから私を守るためにあるみたいに、力強かった。
「セレナは、俺が絶対に失わせない」
「ノエル……私も負けないわ。今の私には、ちゃんと力がある」
「それでも、心配なんだよ。……俺にも、守らせて?」
「うん。わかってる」
互いの想いを確かめ合うように、私たちは自然と顔を近づけた。
静かに重なる唇——その瞬間、世界の不穏ささえも遠く霞んでいく。
深く、深く——私たちは、未来への誓いをひとつ分かち合った。
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