表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】悪女にされた公爵令嬢、二度目の人生は“彼”が離してくれない  作者: ゆにみ
間章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/109

今度こそ君を守るから(sideノエル)

 セレナが毒に倒れたあの日、俺の世界は音も色も失った。


 彼女のいない世界に意味なんてない。

 いっそ死んでしまおうとさえ思った。



 そのとき、頭をかすめた一筋の光――それは“時戻りの腕輪”だった。




 もう二度と、同じ過ちを繰り返さないために。

 俺は迷わず決意した。過去を変え、セレナを救う、と。



 決めてしまえば行動は早い。

 王宮に忍び込み、禁忌の腕輪を手に入れた。

 彼女のためなら、どんな罪でも背負えると思った。



 (セレナ。君を守るためなら......俺は何だってする)



 腕輪が淡く光を放ち、視界が白く染まる。

 ――そして、時間が巻き戻った。




 ***





 「……っ!」



 息を呑み、目を見開く。見慣れた天井、いつものベッド。



 (本当に……戻ったのか?)



 つい先ほどまで、俺は王宮にいたはずだ。

 胸の奥に確信が芽生える。これは、やり直しのチャンスだ、と。




 (まずは、日付を確認しよう)



 近くのカレンダーに目をやる。

 今日は、セレナが毒に倒れる一年前だった。

 確か、もうすぐコゼットの誕生パーティーのはずだ。

 あのパーティーを境に、セレナは“悪女”の烙印を押され、孤立していった。




 (――今度こそ、彼女を守りぬく)




 まずはセレナに会いに行こう。

 愛しい君に、今すぐ会いたい。



 逸る気持ちを抑え、従者を呼びつける。

 そして、グランディール公爵家に向かうことを伝えた。




 「心配ですよね。セレナ様が高熱で倒れられてから、もう三日目ですし……まだ目覚められたとの連絡もなく……」




 ……高熱? 三日も昏睡?

 そんな出来事、俺の知る“過去”にはなかったはずだ。

 回帰したことで、何かが変わっているというのだろうか。



 「......今すぐ向かう。準備してくれ」


 

 短く命じながら、胸の奥がざわめく。



 腕輪は一度きり。もう失敗は許されない。



 またセレナを失うことになったら......俺は今度こそ、生きていけない。

 彼女を必ず守らなくてはならない。



 (どうか無事でいてくれ、セレナ……!)




 ***




 グランディール公爵家に到着すると、玄関先にコゼットが立っていた。


 (......コゼット)



 彼女の顔を見るだけで、胸の奥に黒い感情が渦巻く。

 セレナを孤立に追い込んだ張本人。そして、毒殺の犯人である可能性すらある。



 「ノエル様、来てくださったのですね。ちょうどお姉様が目を覚まされたのですよ」


 「……本当か!」



 思わず胸が熱くなる。セレナが生きている――それだけで世界が光を取り戻す気がした。

 しかし、コゼットの柔らかな笑顔は、俺にはどうしても仮面に見えてしまう。


 「……感謝するよ」



 短く礼を述べ、彼女の横を通り過ぎた。今はただ、セレナに会いたい。



  (セレナ……セレナ……!)



 一度は失ったはずの彼女が、いまこの世界で息をしている。

 その事実だけで胸がいっぱいになる。

 呼吸するのも忘れ、俺はまっすぐに彼女の部屋へ向かう。



 そして、扉を開けた。


 ――光り輝く銀髪。愛しい彼女が、そこにいた。



 「……セレナ。目覚めたんだね」



 視界が滲む。こみ上げるものを抑えきれない。

 彼女が名を呼ぶ。



 「……ノエル」



 (セレナが、本当に生きている……!)



 気づけば、腕が動いていた。

 俺は真っ直ぐに彼女の元へ歩み寄り、力いっぱい抱きしめていた。



 同時に後悔が押し寄せる。

 思い出すのは、あの時彼女を守れなかった無力な自分。




 「――ごめん」



 声が震える。セレナが驚いたように見上げた。



 「……ノエル?」



 もう二度と彼女を失いたくない。

 その思いが、抱きしめる腕に力を込めさせる。



 「いや……なんでもない。ただ、怖かったんだ。……もう、二度と会えないんじゃないかって」



 無意識に口をついた本音に、セレナが驚いた顔を向ける。

 ようやく我に返り、取り繕った。



 「ごめん、ちょっと大袈裟だったね」


 「いえ……心配をかけて、ごめんなさい」



 その言葉に、また胸が熱くなる。



 「......本当に」



 「離れていて、こんなふうになっていたら……気が気じゃない」




 “あの時”の光景が脳裏をよぎる。

 彼女の冷たい指先、閉じられたままの瞳。

 あの悪夢が脳裏をかすめた瞬間、腕にさらに力がこもった。

 息が苦しい、指先が震える、それでも離せない。

 今度こそ絶対に離さない――そうでなければ、俺はもう生きていけない。



 「ねぇ、セレナ。――一緒に暮らそう?」




 気づけば懇願していた。

 これが俺の全てだ。君を失うくらいなら、俺は壊れてしまえばいい。

 


 今度こそ君を守ってみせるから。

 君だけは――たとえ世界を敵に回しても、絶対に離さない。



 君がいない世界なら、俺は何度でも壊してやる。

実はセレナとノエルが回帰前の記憶を取り戻したのは、同じタイミングなのです。

もう一度読み返すと違って見えるかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ