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【完結済】悪女にされた公爵令嬢、二度目の人生は“彼”が離してくれない  作者: ゆにみ
第一部

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55、幸福が、じんわりと

 私は今、ノエルの膝の上に座らされている。

 彼は皿からイチゴをつまみ上げ、器用に私の口元へ運ぶ。



 「ん、ん……あむっ」



 彼の手から伝わる温度と、甘い果実の香り。

 甘く、穏やかな時間。



 (......いけない!つい流されてしまったわ!)



 これは、一体どういう状況なのだろうか。

 ふと我に返って口を開く。




 「ねえ、ノエル。もう、私が殺される可能性って……なくなったんじゃないの?」



 確かに、以前は彼が「不安だから」と私の身の回りの世話をしてくれていた。

 けれど、それは今でも続いているのだ。


 ノエルは眉を下げ、しゅんとした様子で呟く。



 「え、いやなの?」


 「えっ……ちがっ、そういうことじゃなくて……!」


 「ふふ。俺が、そうしたいだけだよ」



 その言葉と同時に、彼の手がそっと私の頬に触れる。掌のぬくもりが伝わり、視線は深く、熱い。



 (……ノエルのその瞳に見つめられると、何も考えられなくなる)



 唇が近づき、優しいキスが落ちる。甘く、安心するような暖かさがじんわりと胸に広がる。



 「もう、ノエル……そうすればいいと思ってるでしょ……」


 「……セレナも、大概だよ」



 ふたりは顔を見合わせて笑う。言葉は軽く、空気は柔らかい。



 「ねえ、今度は料理も作ってみたいんだ」


 「料理まで挑戦するの?」


 「うん、俺が作った物でセレナが作られると思うと……こう……ぐっとくる」


 「そ、それは聞かなかったことにするわ……」


 「まあ、楽しみにしてて?」


 「もう……でも、先に考えることがあるでしょう?」




 ノエルは優しげで、愛おしそうな目をしながら目を細める。

 その手は私の手をぎゅっと包み込む。




 「そうだね、セレナのドレス姿……楽しみだな」



 私の胸が跳ねる。そう、もうすぐ私たちの結婚式があるのだ――ふたりで選んだ未来へ、一歩ずつ近づいている。




 「ふふ......楽しみにしててね?」



 私は小さく笑い返す。言葉以上に、心の奥が温かく満たされていくのを感じる。



 「そうだ、結婚式の後は……セレナともっとたくさんの時間を過ごしたいな」



 ノエルの声は低く、でも柔らかくて、耳に心地よく響く。



 「うん、私も……」



 言葉にしなくても、互いの気持ちは伝わっている。指先が触れるだけで、確かに繋がっているとわかる。




 その瞬間、ふと部屋の隅から光が差し込み、小さな埃が舞ってキラキラと輝いた。

 同時に、精霊たちの優しい囁きがそよぐ風に混ざる。

 祝福の声が、二人の心を包み込み、幸福の温度をさらに優しく高めた。



 (……こうして二人で過ごせる日々が、ずっと続けばいいな)



 胸にじんわりと幸福感が広がり、顔が自然に緩む。


 ノエルはそんな私の様子を見て、そっと額にキスを落とした。



 「俺のセレナは、本当に可愛い」



 その言葉に、思わず顔が赤くなる。




 二人だけの世界に、少しずつ永遠が近づいてくるのを感じた。

 ──もうすぐ、永遠を誓う瞬間がやってくる。


次回、最終話です!

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