44、それでも諦めるわけには、いかないわ!
「見つけたわ......」
目の前には禍々しいほどの黒い塊。
周囲の闇よりさらに濃く、吸い込まれそうな冷たさを放っている。
(これを壊して、ノエルのところへ行かなくちゃ……!)
深く息を吸って、意識を一点に集中させる。
掌に集めた光は小さい。
(やっぱり、この空間じゃ大きな力は出せない……でも、やるしかない)
小さな光を握りしめ、私はそれを黒い塊へと解き放つ。
「......っ!」
衝撃を与えても、塊はびくともしない。
それでも、必死に力を振り絞る。
回帰してから色々なことがあった。
実は私が精霊使いであり、回帰前は気づかずに力を奪われ、殺された。
その犯人はおそらくコゼット。
回帰前に公爵家に入ったばかりの時に、優しくしてくれた、誰よりも信頼していた彼女。
その信頼はあっけなく崩れ去った。
(でも、私は......!彼女とまだ話すことがたくさんあるのよ......!)
-ーピキッ
黒い塊がかすかに震えた。
息苦しさが胸を締めつける。力が、足元から抜けていくのがわかった。
(......まずいわ......)
意識が朦朧としてきた。
もうどれだけ力を放ったのだろうか。
こんなに長時間力を出し続けたことはない。
ここから先は体力勝負。
でも、それでも諦めないのはーーノエルのため。
彼の存在にどれほど助けられたか。
回帰前も後も彼は、変わらず私を信じてくれる。
周りから異様な目で見られた時もそっと隣で支えてくれた。
それに、ずっと私のことをーー想ってくれていた。
(私も、すき......だいすき)
だから......!何もできずに、彼を失うわけには行かないの......!!
この時、私は気力だけで立っていた。
体力なんてとっくに限界。
でも、それでも......!
諦めるわけにはいかない......!!
ーーピキッ
亀裂が走り、わずかな隙間が生まれる。
(ノエル......!)
最後の力を振り絞り、光をさらに小さく、鋭くして叩きつける。
全身の力を込めて。気が遠くなりそうになりながらも、私は止まらない──
ーーバリーンッ!!
塊が砕け散り、黒い闇が一瞬で裂けた。
光が押し寄せ、世界が歪むようにして瞬間的に明るさを取り戻す。
(......ああ、やったわ)
力が一気に抜け、私はその場にへたり込んだ。
胸の奥で、小さな希望がはっきりと震えている。
「今、行くからね……」




