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【完結済】悪女にされた公爵令嬢、二度目の人生は“彼”が離してくれない  作者: ゆにみ
第一部

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43/109

38、運命は残酷にも突き落とす

 “ノエル・アストリッド公爵、三日後に処刑を執行する”



 一瞬、意味を理解できなかった。

 けれど、目を瞬かせても、何度読み返しても、その言葉は変わらない。



 「……ぁ……っ」



 肺がうまく動かず、呼吸が喉で途切れる。

 心臓を握り潰されるような痛みが胸を貫いた。



 ——処刑。

 ——三日後。



 その二つの言葉だけが頭の中で反響し、視界を白く塗り潰していく。

 足から力が抜け、私はその場に崩れ落ちた。



 (ノエルが......?どうして......?)



 彼は罪を犯すような人じゃない。

 回帰前には、こんな未来などなかったはず。


 動悸が全身を支配し、耳の奥で鼓動しか聞こえない。



 (信じなくてどうするのよ……! 私が、信じてあげなくて……!)



 必死にそう繰り返す。

 けれど脳裏に浮かんだのは、さっきのコゼットの笑み。




 「でも——これから楽しいことがはじまるの」


 「とっても、とーっても楽しいことが」



 あの言葉。

 まさか、これを指していたのだろうか。


 大切な人を奪い、私を絶望に突き落とすために。

 だが彼女は「何もしていない」とも言っていた……。





 (ああ、もう……わからない……!)



 頭を抱え、乱れる呼吸を無理やり整える。

 冷静になれ。落ち着くのよ。


 ともかく、行かなきゃ。

 王宮へ――ノエルの元へ。


 決意を固めた瞬間、空気が震えた。





 ーーセレナ!私たちも行くわ!



 透き通るような声が響き、はっと顔を上げる。



 (あ......)



 その声を聞いて、思わず涙が滲んだ。



 「みんな......」



 そこに現れたのはウンディーネ。

 さらにサラマンダー、ノーム、シルフ。

 四大精霊が一斉に姿を現したのだ。



 「セレナのダーリンが......大変なことになったわね」

 「心配するな。俺たちがついている」

 「ノエルなら、きっと大丈夫だ」




 温かな言葉が次々に降り注ぐ。

 それだけで、胸の奥の混乱が少しずつ鎮まっていった。



 「......みんなありがとう」




 涙を拭い、精霊たちを見渡す。

 彼らは揃って笑みを浮かべた。




 「セレナの大切な人は、私たちにとっても大事だから!」

 「さあ、行くわよ!」




 私は深く頷いた。


 ノエル、待っていて。

 必ず――私が行くから。




 でも、そう決心したその瞬間。



 突然、冷たい闇が頭上から覆いかぶさった。

 まるで鈍器で殴られたような衝撃が走り、視界がぐらりと揺れる。


 「……っ!」



 な、にが......お、きて......?



 「セレナ! しっかり!」

 「だめだ、意識が——!」



 精霊たちの声が遠ざかっていく。



 (まずい……ここで倒れるわけには……! ノエルのところに……っ)




 必死に抗おうとしたが、運命は無情に私を突き落とす。


 意識を手放す直前、影の中から現れた少女の姿がぼやけて映った。




 「お姉様……おやすみなさい」


 「コゼット……あな、た……どうし、て……」



 帰ったはずの彼女が、そこにいた。

 そうして私は闇に呑まれーー意識を手放した。


 


 ただひとり、彼の——ノエルの顔を思い浮かべながら。

次回からしばらくノエル視点です

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