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【完結済】悪女にされた公爵令嬢、二度目の人生は“彼”が離してくれない  作者: ゆにみ
第一部

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34、力も、心も、もっと磨かなくちゃ

 コゼットが自分に敵意を抱き、回帰前に精霊使いの力を奪っていた。

 その真実をノエル話すと、驚きの色が浮かびつつも、怒りが隠せない様子だった。



 「……へぇ。あの女のせいで、俺のセレナが……!」


 ——お、俺のセレナ……。

 思わず心臓が跳ねた。



 すかさずウンディーネが身を乗り出した。



 「本当よ!私たちも騙されていたの!主様とは本来、()()で繋がっているはずなのに、あの時はなぜかあの女と繋がっていたの!」



 (契約……? 私と精霊を結ぶ証……そんなものがあるの?)



 確かめたい。けれど今は、とても聞けそうになかった。

 私はただ黙って、耳を傾けるしかなかった。



 「それでも、セレナとの繋がりも、わずかに残っていたのでしょうね。……でも、私たちが気づいた時にはもう遅かった。本当に、ごめんなさい」



 サラマンダーもシルフ、ノームも、沈んだ気配を漂わせて俯く。


 あの時のこと、精霊たちも後悔しているんだ......。



 「ううん、でも、だからこそ今回は立ち向かわなきゃ」



 顔をあげ、強く言い切る。



 「そうね、その意気よ!私たちも君の味方だから!」



 私は決意を胸に固めた——まずは、皆の前で自分が本物の精霊使いだと証明すること。



 決行の舞台は、来月行われる王家主催の舞踏会。

 その日までに、力も、心も、もっと磨かなくちゃ……





 ***





 その日の夜。

 いつものように、私とノエルは同じベッドに並んでいた。


 けれど今夜は少し違う。

 彼の腕が自然に私を包み込み、私はそれを拒まず、むしろ安心するように身を寄せていた。



 「……今日は、色々あったね」



 暗がりの中で、私たちはぽつりぽつりと語り合った。

 ノエルもまた、これまで胸に秘めていたことを打ち明けてくれる。



 この屋敷に来てから、私を囲うように振る舞ってしまったのは……回帰前に私を失った不安が、拭えなかったからだと。




 「ごめん……縛るようなこと、してしまって」


 「ううん。ノエルは心配してくれていたのでしょう? なら……私は嬉しいわ」


 「……セレナは、本当に優しすぎるよ」




 少し間を置き、ノエルが大きく息を吐いた。




 「……はぁ。離れたくないな」



 唐突に零れた言葉に、思わず首をかしげる。



 「ん? 離れるって?」


 「来週ね、公務で一日、屋敷を出なきゃいけないんだ。……こんな大事な時に、ごめん」


 「ううん。それも大事な務めでしょう? 待ってるから、心配しないで」


 「......セレナ」



 

 見つめ合う視線が絡まり合う。

 抱きしめる腕に、強い力がこもった。



 (今は、ただ……この温もりを感じていたい)



 胸の鼓動を重ねながら、私は静かにまぶたを閉じた。

 そして、互いに寄り添ったまま、眠りへと沈んでいった。


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