34、力も、心も、もっと磨かなくちゃ
コゼットが自分に敵意を抱き、回帰前に精霊使いの力を奪っていた。
その真実をノエル話すと、驚きの色が浮かびつつも、怒りが隠せない様子だった。
「……へぇ。あの女のせいで、俺のセレナが……!」
——お、俺のセレナ……。
思わず心臓が跳ねた。
すかさずウンディーネが身を乗り出した。
「本当よ!私たちも騙されていたの!主様とは本来、契約で繋がっているはずなのに、あの時はなぜかあの女と繋がっていたの!」
(契約……? 私と精霊を結ぶ証……そんなものがあるの?)
確かめたい。けれど今は、とても聞けそうになかった。
私はただ黙って、耳を傾けるしかなかった。
「それでも、セレナとの繋がりも、わずかに残っていたのでしょうね。……でも、私たちが気づいた時にはもう遅かった。本当に、ごめんなさい」
サラマンダーもシルフ、ノームも、沈んだ気配を漂わせて俯く。
あの時のこと、精霊たちも後悔しているんだ......。
「ううん、でも、だからこそ今回は立ち向かわなきゃ」
顔をあげ、強く言い切る。
「そうね、その意気よ!私たちも君の味方だから!」
私は決意を胸に固めた——まずは、皆の前で自分が本物の精霊使いだと証明すること。
決行の舞台は、来月行われる王家主催の舞踏会。
その日までに、力も、心も、もっと磨かなくちゃ……
***
その日の夜。
いつものように、私とノエルは同じベッドに並んでいた。
けれど今夜は少し違う。
彼の腕が自然に私を包み込み、私はそれを拒まず、むしろ安心するように身を寄せていた。
「……今日は、色々あったね」
暗がりの中で、私たちはぽつりぽつりと語り合った。
ノエルもまた、これまで胸に秘めていたことを打ち明けてくれる。
この屋敷に来てから、私を囲うように振る舞ってしまったのは……回帰前に私を失った不安が、拭えなかったからだと。
「ごめん……縛るようなこと、してしまって」
「ううん。ノエルは心配してくれていたのでしょう? なら……私は嬉しいわ」
「……セレナは、本当に優しすぎるよ」
少し間を置き、ノエルが大きく息を吐いた。
「……はぁ。離れたくないな」
唐突に零れた言葉に、思わず首をかしげる。
「ん? 離れるって?」
「来週ね、公務で一日、屋敷を出なきゃいけないんだ。……こんな大事な時に、ごめん」
「ううん。それも大事な務めでしょう? 待ってるから、心配しないで」
「......セレナ」
見つめ合う視線が絡まり合う。
抱きしめる腕に、強い力がこもった。
(今は、ただ……この温もりを感じていたい)
胸の鼓動を重ねながら、私は静かにまぶたを閉じた。
そして、互いに寄り添ったまま、眠りへと沈んでいった。
ブクマ&評価ありがとうございます!
とても励みになります!




