22、甘い夜、はじまりの序章
「そういえば、俺......今日の夜、変じゃなかった?」
そ、そうだ。ドキドキしすぎて忘れかけていたけど、ノエルが眠れるように一緒に寝ているのだった。
「ええ、大丈夫だったわよ」
「そっか、よかった…...やっぱりセレナといると眠れるんだね」
真剣で優しい声音。胸の奥がじんわり熱くなる。
「これからも......よろしくね」
そう言って微笑み、ぐっと抱きしめられる。
心臓が跳ね、顔が熱くなる。
「ちょ、ちょっと!何もしないって……!」
「え? これくらい、いいでしょ」
抱きしめる力が少し強くなり、私は思わず小さく息を飲む。
ノエルと一緒に暮らすうちに気づいたことがある。
彼、スキンシップが激しい……!
でも、不思議と嫌じゃない。むしろ、胸の奥がじんわり温かくて――
彼のそばにいるだけで安心してしまう。
……同時に、落ち着かなくもなるのだけど。
そうして、私とノエルは毎日一緒に眠るようになった。
そして朝になると、なぜか必ず私はノエルの腕の中に収まっている。
(ほんとうに、無意識なの……!?)
わざとじゃないの、と疑いつつも――その腕の中を拒めない自分がいる。
むしろ、心地よくて、離れたくないとさえ思ってしまう。
……そう。きっと私は嬉しいのだ。
ノエルに包まれて眠れることが。
彼の温もりに守られていることが。
(私……ノエルのことを……)
胸の奥がぎゅっと熱くなり、鼓動が早鐘のように響いた。
昨夜の体温がまだ残っているみたいで、目を閉じれば彼の気配に意識が引き寄せられる。
***
そして、第一王子とコゼットの婚約発表パーティー当日。
ドレスに身を包み、鏡の前で深呼吸する。
緊張が波のように押し寄せる。
(いよいよ......コゼットと顔を合わせるのね)
思い出すのは、あの誕生パーティーで彼女に触れられたときの、ぞわりとした嫌な感覚。
きっと偶然なんかじゃない。
でも、今の私には浄化の力がある。
きっと対抗できるはず。
鏡越しに自分の姿を見つめ、もう一度深く息を吐く。
胸の奥に渦巻く緊張と不安――でもその隙間に、ノエルの温もりを思い出して、自然と笑みがこぼれた。
(……怖い。でも、逃げない。必ず乗り越えてみせる)
そう静かに誓いながら、私はパーティーへと向かう準備を進めていた。
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