18、秘密と突然のお願い
「びっくりしたよ。朝起きたら、セレナが床で寝ていてさ」
「えっと……」
頭が真っ白になる。何から話せばいいのか分からない。
私が戸惑っていると、ノエルがゆっくり口を開いた。
「……見たよね?」
「え?」
「俺、夜おかしかったよね。多分」
「ええっと……うん、ごめんね」
小さく頷く私に、ノエルは優しく微笑む。
「いや、いいんだ。助けてくれたんだよね?ありがとう」
「ここ数ヶ月、悪夢を見るようになって……朝起きると、部屋が荒れてることもあったんだ」
「ノエル……」
胸がぎゅっとなる。そう、だったんだ......。
何も知らずに私は......。
「でも、今日は久しぶりにゆっくり眠れた気がする。セレナがいたからかな? ありがとう」
「いえ……そんな……私は……」
「……でも、あれは何?」
ノエルはにっこり微笑むが、目はどこか真剣だ。
「え?」
(何のことかしら......?)
思わず胸が跳ねた。
ノエルがじっとこちらを見つめる。
「セレナの部屋のドア……なんで壊れてるの?」
(......あ)
ドアを壊していたことを忘れていた。目が泳ぐ。
「えっと……あの、その……」
(……どうしよう。正直に話すべき……?)
でも、力の正体を話すのはまだ怖い。小さな声で、私は答えた。
「その……ドアのことだけど……助けたいって思ったら、なぜか力が溢れちゃって……気がついたら壊れてたの」
ノエルの目がぱちりと開き、驚きが浮かぶ。
「……そうだったんだ。そっか……」
「でも今まで、そんな風な力はなかったよね?」
「なんだろうね......?」
正直に話せない自分に、胸がチクリと痛む。
「そ、そうね......自分でも驚いているわ」
(本当は、精霊のことも言いたいのに……)
そんなことを考えているうちに、聞こうと思っていた「記憶があるか」の質問は、すっかり口から消えてしまった。
少しの沈黙が落ちる。
そのとき、ノエルが沈黙を破るように、近づきセレナを見つめる。
その視線には、優しさとお願いの色が混ざっていた。
「ねぇ、セレナ……」
ドキッとする。
「しばらくまともに眠れていなかったけど、セレナのおかげで今日は眠れたんだよ」
「う、ん……?」
心臓が早鐘のように鳴る。
「だから……今日から、一緒に寝てくれない?」
「え……!!」
顔が熱くなり、真っ赤になった私を見て、ノエルがくすっと笑う。
「そんなに驚かなくてもいいのに。……ただ、セレナと一緒がいいんだ」
「~〜〜~っ!」
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