17、気づいたらベッドの上でした
ノエルのまぶたが、ゆっくりと持ち上がる。
思わず息をのむ。
……もしかして、本当に記憶があるのかもしれない。
そう考えると、彼と目を合わせるだけで胸がざわつく。
どうしよう、何から話せば――
ぐるぐると考えが渦巻いた、そのとき。
すぅ、すぅ……。
(え?)
視線を下げると、ノエルは再び穏やかに眠っていた。
……もう。緊張を返してほしい。
安堵と、肩すかしを食らったような残念さが胸に同時に広がる。
(まあ……今は、休ませたほうがいいわね)
とりあえず、彼をベッドに戻そうと腕を回す。
……重い。
予想以上に重い。
(なんでこういう時に限って、びくともしないのよ……!)
ぐいっ……ずるっ……。
必死に引きずり、なんとかベッドへ――最後は勢いで倒れ込ませる形になった。
「……はぁ……っ、疲れた……」
全身の力が抜け、腰も悲鳴を上げる。
張り詰めていた糸がぷつんと切れ、意識もふっと遠のいていく。
ああ、もう、このまま――
……おやすみ。
***
まぶたの裏に、やわらかな光が差し込む。
まどろみを押しのけ、ゆっくりと目を開けた。
(……あれ?)
ここ、私の部屋じゃない。
……というか、このベッド、やたら広いし……ふわふわ。
昨夜の記憶をたぐる。
ノエルをベッドに運んで、そのまま床で……寝落ちして……?
(じゃあ、なんで私がベッドの中にいるの?)
混乱していると、すぐ横から低くやさしい声が。
「おはよう、セレナ」
心臓が跳ねる。
そっと顔を向けると、そこには――すぐ隣に座るノエル。
私を覗き込むようにして、微笑んでいた。
「……ノ、ノエル……?」
――どうやら今度は、私のほうが説明を求められる番らしい。
ただ、その顔が近すぎて、説明どころじゃない。
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