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【完結済】悪女にされた公爵令嬢、二度目の人生は“彼”が離してくれない  作者: ゆにみ
第二部

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エピローグ「きぼうのひかり」

 夜。カーテンの隙間から差し込む月の光が、静かに部屋を満たしていた。

 ノエルはベッドの上で私の隣に腰を下ろし、そっとお腹に手を添えると、まるで宝物に触れるようにそこへ耳を寄せた。



 「……いま、動いた気がした」


 低く囁く声が、くすぐったいほど優しい。

 でもまだノエルに伝えてから、二ヶ月ほどしか経過していない。

 私は思わず笑ってしまう。


 「まだ早いわよ」


 「わかってる。でも……こうして話しかけるの、幸せなんだ」


 ノエルはほんの少し照れた顔で微笑む。


 「ねえ、起きてる? パパだよ。 ……聞こえる?」


 優しい声音なのに、どこか必死で――本気で。

 こんなノエルを見るたびに、心がきゅっとなる。

 ノエルはお腹に触れている手へと視線を落とし、何かを噛みしめるようにゆっくり言葉を続けた。



 「……セレナ。俺、怖かったんだ。きみ失うことも、離れていくことも……全部」


 「ノエル……」


 「でも、こうして家族が増えるって思うと……あの頃の苦しかった気持ちでさえ、全部意味があったのかなって」



 その横顔は切実で、優しくて……何より、私だけを見ている。


 そっとノエルの髪に指を滑らせると、彼は驚いたように瞬きして、それから嬉しそうに微笑んだ。

 そして私の指を取って、自分の頬へそっと押し当ててくる。



 「セレナ。俺、本当にきみが好きで……どうしようもないくらい、大好きなんだよ」


 その声音に耐えられず、私は彼の胸へそっと身を預けた。


 「……私もよ。ノエルがいなきゃ、もうだめだわ」



 ぎゅっと腕が回される。

 まるで私を確かめるように、離したくないと言うように。


 ノエルは少し身を離し、私のお腹に手を添えた。


 「この子のことも、きみのことも……全部俺が守る。絶対、幸せにする」


 ゆっくりとお腹にキスを落とし、

 次に私の指先へ、

 そしてそのまま、唇へ柔らかく触れてくる。


 「……ねえ、セレナ。もう少し……くっついていい?」


 その言い方があまりに愛おしくて、思わず笑ってしまう。


 「もう十分くっついてるわよ」


 「ん……でも、もっと。だめ?」



 そんなの、だめなはずがない。


 私は彼の首へ腕を回し、そっと引き寄せると――

 ノエルは嬉しそうに息を吐き、さらに深く抱きしめてきた。



 「……セレナ。きみが笑ってくれるなら、俺はどんな未来でも歩いていけるよ」



 月明かりの中で、私たちは静かに寄り添い合う。



 ――ああ。

 この人と出会えて、本当によかった。



 月の光が、未来への道を照らすように部屋を満たしていた。

 それはまるで――これから始まる新しい物語を照らす、希望の光のようだった。



 全てを失ったはずのあの日。

 それでも手を離さなかったから、いまの私たちがいる。


 ノエルがそっと指を絡めてくる。

 その温度に、胸の奥がきゅっとなる。



 「セレナ。これからもずっと、隣にいて」


 「ええ。どんな未来でも、あなたと一緒に」



 二人で一歩ずつ進んできた道の、その先に――

 もうすぐ、三人で歩く未来が待っている。


 私は静かに目を閉じた。


 幸せは、こんなにもあたたかい。

 

番外編もお楽しみに。

ブクマ&評価ありがとうございます。

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