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【完結済】悪女にされた公爵令嬢、二度目の人生は“彼”が離してくれない  作者: ゆにみ
第一部

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幕間「時戻りの腕輪」

 ヴァルディア王国の一室に、漆黒の髪と金の双眸を持つ青年が静かに佇んでいた。

 この国の第一王子──ノクス・ヴァルディアである。



 彼は先日の出来事を反芻していた。



 コゼット・グランディール。

 彼女の誕生パーティーで放たれた、青い光。



 ──あれは、精霊使いの力。



 王家にとって、その稀有な力は“保護”の対象。

 いずれ彼女とは、政略的に婚約することになるだろう。



 

 だが、問題はその後だった。

 パーティーで倒れて以来、彼女はまだ目覚めていない。



 

 覚醒の代償か。それとも別の何かか。

 現在は王宮にて治療と監視を受けている。



 そしてもう一人──義姉、セレナ・グランディール。

 同時に倒れた彼女も、無関係ではないはずだ。


 


 本来なら彼女も王家で保護すべきだった。

 だが、ノエル・アストリッド公爵によって、その申し出は退けられた。


 


 ……とはいえ、優先すべきはコゼット嬢の方だ。

 精霊使いであるならば尚更。


 


 ノクスが思案を巡らせていると、突然廊下から足音が駆け込んできた。

 緊迫した気配をまとい、側近が扉を叩き開く。



 「ーー殿下!大変です!」



 ノクスは眉をひそめた。



 「どうした?」



 「"時戻りの腕輪"に、使用された痕跡が見つかりました!!」



 ノクスの金の瞳が鋭く光る。


 「……何?」

 

 「殿下。他の王族の記憶にも痕跡はありません。……殿下ご自身は?」


 「……ない」


 「で、殿下......それはつまり──」


 「王族以外の者が、腕輪を使った……ということだな」



 

 重たい沈黙が落ちる。


 ノクスはゆっくりと立ち上がり、冷ややかな声で命じた。

 



 「痕跡をすべて洗い出せ。必ずだ」


 


 ”時戻りの腕輪”――

 それは王家にのみ許された、ただ一度きりの聖遺物。


 未来を覆し、運命を書き換える代償として、絶対の禁忌が課されている。




 「王族以外が使用したとあれば、その行為は王家の法において──死罪に値する」



 重く響く宣告のあと、ノクスは静かに目を伏せた。


 


 使用者には回帰前の記憶が残ると言われている。

 王族に記憶のあるものは、誰もいない。



 つまり──



 (王国の切り札が、外部の人間によって使われた……?)


 (許されるはずがない)


 


 その金の瞳が、ゆっくりと闇を見据えるように細められる。


 


 ――必ず、突き止める。

 この手で。王族の名にかけて。




 

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