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38 出産祝いを贈ろう

 1日寝込んだ後、わたしは回復した。回復魔法を使うと疲れが取れる、やっぱり便利ー。心配そうなキリの顔。大丈夫、ちゃんと体力作りするからねっ!

 3食キチンと食べること、お散歩からでいいので身体を動かすことをサンドお爺ちゃんと約束してます。オヤツも食べなさいと言われた。補食が必要とは…、幼児と一緒か。


 朝ご飯の後、軽くお散歩をしたわたしは、今日は刺繍をしている。マナーとか歴史の勉強とかもしてみる?と言われて二つ返事で了承した。他国の王子様に会わないといけないので、付け焼き刃でもお勉強はしないとね。刺繍は淑女教育の一環なのだとか。前世はお一人様街道まっしぐらだったから、色んな趣味に手を出してた。ハンドメイドは大得意。マリタ王国の国章の獅子なんてスイスイだぜぃ。


 侍女さん達も一緒にお喋りしながら刺繍をしていたら、なんと、侍女長さんに2人目のお孫さんが昨日産まれたことが発覚した。娘さんが出産したんだって。だから昨日から姿が見えなかったのかー。

 侍女長のマリアさんは20代にしか見えない美魔女で、性格は豪快な前世の母・ヨネ子に似ていて、心の中で勝手にお母ちゃんと呼んでいる。陛下やジンさんを叱り飛ばす姿は、前世の母が父を叱り飛ばす姿そっくり。なんだかほっとしちゃう。

 しかし侍女長さんにお孫さんがいるとは。こっちの世界では15、6で結婚しちゃうからなぁ。その子どもがまた15、6で結婚して子供産んだら、そりゃあ若くしてお祖母ちゃんになるよね。前世の母、57歳で孫の気配どころか娘も息子も恋人さえなかった。ごめん、母。


 侍女長さんのお孫さんは上が3歳の女の子、今度産まれたのは男の子。待望の跡取り誕生に、娘さんの嫁ぎ先は大喜びらしいよ。


 これは是非お祝いをしなくては。刺繍を終わらせたわたしは、キリにお願いして材料を揃えてもらった。


「シーナ様?本当にこちらで宜しいのですか?」


 キリが不思議そうに集めた材料は木材と色々な布。木材は白木を、布は出来るだけ柔らかい物を持ってきてもらった。


「うん、こういうのが欲しかったんだよ!さすがキリ!」


 喜ぶわたしに照れるキリ。うちの子優秀!


 それでは、とわたしはキリが材料を揃えている間に作った型紙の数々を布に当てて切っていく。

 まずは産着でしょ。小さな赤ちゃん用だから縫い目は表に、柔らか素材で。む、スナップボタンがないから紐になるか、しかたない。

 昔はよく友達や親戚に子どもが産まれたら作ってたなぁ。残念ながら自分のために用意したことはないよ、ふふふー。


 外に着せていけるようなオーバーオール型の熊の着ぐるみ、猫の着ぐるみ、パンダの着ぐるみも作った。この世界にこの動物達っているのかな?まぁ、空想の動物って事でいいか。

 そんなに早く作れるのかと思ったそこのあなた。お察しの通り魔法も使いました。繊細な強化魔法で、針もすごい速さで進むのよ。手がミシンになったみたいー。


 キリは驚いていたけれど、すぐに産着に紐を付けたりと手伝ってくれた。うちの子、お裁縫も得意なのです。お嫁さんに如何ですか?やらんけど。


 さてさて。産着はお母さんがたくさん用意してるだろうから、オモチャ作ろうっと。昔懐かしい手押し車。といっても、木箱に木のタイヤと取っ手をつけたシンプルなものだけど。木箱の中には、丸や四角や動物型の積み木を詰める。角はちゃんと丸くしてるよ。風魔法で木材を切り、可愛い形にするのって楽しい。あとは布製のガラガラと、木製の起き上がりこぼし。昔懐かしいオモチャだけど、小さい子どもなら喜んでくれるかな?


 そして今度は女の子用のおもちゃを作ります。これは3歳のお姉ちゃん用。


 前世の友達が2人目を出産した時、上の子が赤ちゃん返りをして大変と言う話を聞いて、兄や姉のいる時は赤ちゃんのお祝いと一緒に上の子へ「お兄ちゃん、お姉ちゃんになったお祝い」をあげるようにしている。

 

 いきなり下の子が出来て、パパとママ、他の家族の関心は赤ちゃんに、プレゼントも赤ちゃんばかりだと拗ねるし不安定になっちゃうよね。ママも新生児のお世話でヘトヘトの時に上の子に赤ちゃん返りされたら、気持ちに余裕が無くなり、上の子に厳しくしてしまったり。悪循環だよね、うん。


 新しい命が誕生すると共に、新しいお兄ちゃん、お姉ちゃんが誕生してるんだもん。お祝いしたっていいじゃないか。


 女の子用だから、お人形セットでも作るかな。布でお姫様人形を作り、お人形用のドレスを作る。ついでに3歳児用のお揃いのドレスも。くぅっ。人形とお揃いのドレス。可愛い。可愛さしか無い。お揃いセットをもうちょっと作りたいけど、ドレスパターンが思いつかない。


「シーナ様。侍女さん達に助けていただいてはどうでしょう?」


 キリの助言に納得。侍女さん達なら、センスがいいもんね。


 わたしが自室に布やら木やらを広げているのを見て、侍女さん達は大層驚いていた。しかし、木製の手押し車やお人形セットを見た途端…。


「きゃあああ!可愛い!なんですかこれ!可愛いぃ!」


「人形とお揃いのドレス?!え?ドレスパターンを増やしたいんですか?待っててください!すぐに見本のドレスをお持ちします!」


 侍女さん達は、我先にとドレスやらレースやリボンの素材やらを集めてくれた。みんなでキャアキャアしながら協議した結果決めたドレスを3着作り、侍女さん達はレースや可愛いボタンで飾り付けてくれた。ノリノリだよ。


「これ、侍女長様のお孫さんのシャーロットちゃんにあげるんですよね?凄くお喜びになりますよ!」


「私も欲しいです!子どもに戻りたいです!」


 侍女さん達も凄く楽しそうで、良かった良かった。


 ある程度ドレスの目処がついたら、わたしはままごとセットの作成に取り掛かった。人形用のベッド、テーブルにソファセット。お茶会用のティーポットとカップ。それからままごとの定番、キッチンセット。木製だけど可愛いよー。


 わたしが魔法でオモチャを作っていくと、一つ出来上がるたびに侍女さん達が可愛い!と悶絶してた。このオモチャで3歳児が遊んでる姿を想像するだけで、クフフ、楽しい気分になるね!


 嫌な事件に遭遇して、陰鬱な気分だったのがパァッと晴れた気がする。侍女長さんのお孫さん、産まれてくれてありがとう!


 可愛い箱に入れてラッピングし、リボンをかけて完成。赤ちゃんへのプレゼントより、お姉ちゃんへのプレゼントが大きくなったのはご愛嬌。女の子のドレスとオモチャを作るの楽しかったんだもん。仕方なし。

 これを侍女長さんの元に届くように手配してもらう。娘さんの嫁ぎ先にいきなり送りつけるのはアレだしね。ちゃんと伝令魔法で侍女長さんには知らせたよ。凄くお礼を言われた。


 ちょうどお部屋に遊びに来たリュート殿下に報告。一応何でも報告するようにいわれてるので。


「祝いを贈っただけだろう?特に問題はないぞ」


 リュート殿下に問題なしとお墨付きを貰った。先日の事件のせいで、マリタ王国の皆さんがますます過保護になったからね。報連相のできる子ですよ、わたし。


 次の日、侍女長さんの娘さんの嫁ぎ先から面会の申し出がありました。はて?と、またまた遊びに来ていたリュート殿下と首を傾げた。

 ちなみに今日はリュート殿下の婚約者のサリア様も一緒です。なんと!サリア様のお手製クッキーをお土産に頂いたのだ!ありがたや。美女の手作りクッキー。


 リュート殿下とサリア様はとっても仲良しだ。サリア様のお兄さんとリュート殿下は同級生で、小さな頃からサリア様ともお兄さんを通して交流があったんだって。サリア様の初恋の相手はリュート殿下らしく、婚約者になれて凄く嬉しかったんだとか。顔を赤くしてはにかむサリア様を、リュート殿下が頬を緩めて見つめている様子はもう、ね。独り身には辛いっす。


 そんな甘い2人を美味しいクッキーを頬張りながら眺めていたら、来客のお知らせが。侍女長さんを先頭に、知らないおじさんとお兄さんがいらっしゃいました。わたしとの面会は、陛下の許可もあるそうです。心配した王妃様も駆けつけてくださいました。すいません、王妃様。そしてまたまた王妃様の予定を変更させて申し訳ありません、侍従さん達。最早、諦め顔の侍従さん達です。


「お、お初にお目にかかります、タイロップと申します」


 王妃様やリュート殿下というロイヤルな人たちにまで面会する事になり、緊張気味のタイロップ男爵。一緒にいるのは息子のジョゼフさんで、侍女長さんの娘さんの旦那様ですって。真面目そうな人だなー。


 タイロップさん達は、昨日お子さん達に送ったプレゼントを詰めた箱を持っていらしてました。何事でしょう、まさか!


「あ、ご、ごめんなさい!わたし、あまりこの国の風習に詳しくなくて!もしかして出産祝いに相応しくない物を贈っちゃいましたか?」


 大変!縁起の悪い物を贈っちゃったんだろうか?ごめんなさいぃ!


 泣きそうな気持ちで頭を下げると、タイロップ男爵とジョゼフさんがブンブンと首を振って否定してくれた。


「いえいえいえいえ!とても素晴らしいお品ばかりでございます!頭をお上げくださいぃ!」


 タイロップ男爵にそう言われ、恐る恐る顔を上げる。あれ?プレゼントを突っ返しにきたんじゃないなら、何をしに来たんだろう?


 

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