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34 それは異世界でも共通

 ラミスさんに帰っていただいてすぐ、アラン殿下に経緯と愚痴を伝令魔法で送った。すぐにイヤーカフに連絡が入り、店から店へは馬車で移動。護衛のキリと絶対離れない、ローナさんの案内する店以外は行かない、夕方までには帰るを条件に、お買い物は続行許可が出た。観光はまた体制を整えてからとなりました。残念だけど、馬車からの風景だけでも十分楽しいから良しとしよう。


「諜報部のラミス・ガードックか。使えんなぁ」と、アラン殿下が低い声で呟いていたのが怖かった。成仏してくれ、ラミスさん。


 嫌な事は忘れて、わたしとキリとローナさんは思いっきりお買い物を楽しんだ。侍女さん達オススメの服屋さんはお手頃価格で可愛い服があった。下級貴族や富裕層の平民などがターゲットらしい。ドレスもあるけど部屋着や街歩き用のワンピースなど。


 採寸してもらったらビックリ。だいぶサイズが変わっていた。背も少し伸びて、女性らしい身体付きになってきているような?お胸も成長の兆しが!

 採寸を見守っていたキリの目に涙が。お母さんみたい。ううう、心配かけてごめんね。


「シーナ様はこれからも成長なさると思いますので、すこし緩めのサイズにしましょう。胸元や腰周りは調整が利くようにして…」


 ローナさんとデザイナーさんがドレスをわたしの身体に当てながら綿密に打ち合わせ。頼りになるお姉さんです。


 エール街以上にお洋服を買い、雑貨屋さんに行き、ちょっと休憩で可愛らしい焼き菓子屋さんに入った。うふー。甘いもの。


「いっぱい買ったね。キリの服も買えてよかった」


「シーナ様、ありがとうございます」


 勿体無い!と遠慮されたけど買っちゃった。だってキリに似合いそうなんだもん。


「次は観光もしようね」


 ちょっと早いけど、オヤツを食べたら王宮に戻ることになっている。病み上がりのせいか、わたしが少し疲れちゃったのだ。回復魔法の使用をサンドおじいちゃんにまだ禁止されているので、こっそり回復も出来ない。不便。


「お嬢さん達〜。可愛いお洋服は買えたかなー」


 その時、チャラそうな声とともに、わたしたちの席に無理やり卓をくっつけてきた輩がいた。

 マリタ王国騎士団の服をダラシなく着崩した3人組が、ヘラヘラ笑いながらわたしたちに話しかけてくる。


「さっきの店で見かけて、可愛いなーって思って付いてきちゃった。脅かしてゴメンね」


 3人の中では一番イケメン風の男が、ウィンクする。ヤメレ、下手くそ。ナジル会長を見習え。30歳過ぎてあんなに可愛いウィンクするんだぞ。

 他の2人はニコニコしてるが無言。キッチリ隊服を着たらそれなりにカッコいいのに何故着崩す。規律も破っちゃうよオレ、アウトローだから気取りか。痛い中学生か。


 さっきまで可愛いキリとローナさんと楽しく過ごしてたのに台無しだ。他人の卓の焼き菓子を勝手に摘むな、狼藉者が。


「お嬢さん達、王都に遊びに来たの?俺たち生まれも育ちも王都だよ!いいお店知ってるから、案内してあげるよ」


 指についた焼き菓子の欠片を舐めながら、男が言う。行儀悪いなー。


 その時、鑑定魔法さんがピコーンと警告を出した。この人たちについて行っちゃダメ、絶対とな?


 なんでだろう、確かに痛い3人組だけど、タダのナンパだ。しかもマリタ王国騎士団の騎士。鑑定魔法さんが警告を出すほど危ないのか?


「もう帰るところですので。参りましょう」


 キリがわたしとローナさんを促す。キリに比べたらかなり弱そうな男たちだけど警戒は緩めない。


「そんなこと言わないでよ。もうちょっとだけ遊ぼうよー」


 立ち上がり、会計を済ませたわたしたちを追って、男たちはついてくる。馬車は少し離れたところにある。


「停留場まで行くの?じゃあ俺たちが送ってあげるよ」


「結構です」


 キリがわたしたちをガードしながら男たちを睨む。3人の大柄な男達に囲まれ、通行人からの視線が遮られている。


 男たちが迫ってくるので、わたしたちは避けるために移動してたんだけど、どんどん人気のないほうに誘導される。

 本当はワザと誘導されたフリをしてたんだけどね。人目につくと面倒だしねぇ。


「まあまあ、そんなに警戒しないで。この時間に街馬車なんて捕まらないよ?これでもマリタ王国騎士団の一員なんだから、少しは信用してよ」


 ピコーン!また鑑定魔法さんの警告。あらー。さっきより強め。こいつら悪いヤツだな。


 わたしはこっそり伝令魔法をアラン殿下に飛ばす。助けを求めるものじゃない。やっちゃうよーと言う報告ですな。アラン殿下から、慌てたように「すぐ行く!」とお返事が。待ってまーす!


「どちらの隊の所属の方でしょう」


 それまで黙っていたローナさんが、男たちを見据えて口を開いた。


「えっ?」


「騎士団には第1から第5部隊があり、それぞれに3つの部があり、さらにその下に30の小部隊があります。どの部隊のどの部のどの小部隊です?小隊長と副長のお名前を仰ってください」


 ふぉっ、そんなにあるの?ローナさん、物知りだね。王都に来たの、最近だよね?


「あなた方の隊服…。マリタ王国より支給されている隊服と襟の形と袖の形が少し違います。生地の質感も少し…。本当に騎士団の制服ですか?」


「ちっ!おいっ!連れていくぞ!」


 ローナさんの言葉に、笑顔を浮かべていた男たちの様子が一変する。イケメン風の男の合図で、他の2人がキリとローナさんに襲いかかる。イケメン風はわたしに手を伸ばしてきたが。


 その手が届く前に、イケメン風は突然地面に空いた大穴に落ちていった。他の2人も同様です。


 突然足元がなくなると、人間って真っ直ぐ落ちていくんだね。3人とも、驚いた顔のままひゅんって下に行ったよ。


 深さは大人2人分ぐらい。3人それぞれ個別の深い縦穴に落とすようにしたから、上から見ると3つの穴がトライアングル状に空いているように見える。


「シ、シーナ様?大丈夫ですか?」


 ローナさんがわたしの側に寄ってくる。穴に落ちないように怖々と覗き込んだ。


「ローナさんありがとう。こいつら偽騎士なのかな?」

 

 連れて行けって言ってたから、人攫いだと思うんだけど。


 しかし淡々と奴らを追い詰めるローナさん、カッコ良かった。まるで名探偵みたいだったよ。でも怖かったよね、少し青ざめてるし。


「多分…そうだと思います。規律の厳しいマリタ王国騎士団の騎士とは思えません。あのダサい着こなし」


 ダサいのか、やっぱり。異世界でもあの痛さは通じるみたい。


「こやつら、どうしましょう。火魔法で上から炙りましょうか」


 キリが冷酷な顔で呟く。エグい発想だね、怒ってるね、キリちゃん。


「でもどうして急に穴が?」


「土魔法で地面に穴掘ったの」


「ああ、シーナ様の魔法…」


 その一言で全て納得するあたりがカイラット街出身だよね、ローナさん。あの街の人達、わたしの魔法は万能だと思ってるからなー。


「おい!ここから出せ!ふざけんな!俺たちは王国騎士団だぞ!」


「お前ら捕まって処罰されるぞ!」


 男たちは穴からギャーギャーと叫んでいる。


「煩いから埋めようかな」


 そう言って、わたしは水魔法を発動させる。男達の足元からユックリと水が迫り上がってきているはずだ。


「ギャー!水、水がぁ!」


 上からは土魔法で土をドバドバーっと。


「ギャー!埋まっちまう!助けてー!」


「母ちゃーん!!」


 母ちゃんは悪い子は許さないと思うけど。


「貴方達、何が目的だったのー?」


 のんびり聞いてみる。その間に水は迫り、土は降り続いていく。


「やめて!水とめろー!」


「ぺっぺっべっ!口に土が!やめてくれー!埋めないでぇ」


 パニックになっている男たちには、わたしの声が聞こえないようだ。残念。わたしは水魔法と土魔法の速度を緩め、ゆっくり男達を埋める。その間に、アラン殿下の到着を待つことにした。早く来ないと埋まるぞー。



 

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