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22 慰労会と婚活

 そうして話はBBQ慰労会に戻るのだけど。

 最初は遠巻きにされていたザロス(お米)は、王族であるジンさんが口をつけたことで徐々に他の人も口にし始め…うん、大人気だね。お肉とザロス(お米)のハーモニーに悩殺される人が続出したよ。


「シーナ様!美味しいです!美味しいです!口の中が幸せです!」


 キリが可愛いこと言ってほっぺを押さえてます。キリの好きな醤油の入った焼肉のタレだからね、うむうむ。美味しかろう。ザロス(お米)に合うよね。


「んー。久しぶりの焼肉のタレ。まあまあ上手に出来たかな?」

 

 パクりと一口、わたしも食べての感想。市販のタレには敵わないが、まあまあ美味しい。色々野菜と薬草と果物を混ぜ合わせて作ったんだけど…。こうして考えると、日本の食品メーカーは凄い。安価であれだけ美味しいタレを作るんだもん。この世界に進出できたら大儲けじゃないかしら。

 

「…まあまあって。焼き台の周りで肉を巡って兵士が睨み合う緊迫した状況だというのに呑気だな、シーナ殿は」


 アラン殿下が()()()串を持ちながら、目は焼き台から離さずに言う。そんなに慌てなくても沢山準備したから大丈夫ですよ?ザロス(お米)は平皿に山盛り。お気に召してなによりです。

 しかし王族や貴族って、BBQの串に齧り付く姿も優雅って流石だね。全然見苦しくないの、すごく綺麗に食べてるけど、食べるスピードが早い。


「シーナちゃん、食べてるか?もっと串を取ってこようか?」


 ジンさんは自分のお皿に載せた10本の串をわたしの皿に載せようとする。


「一本食べたよ。他にも色々食べたから、もうお腹一杯。ジンさんが食べて。…そんなに食べられるの?」


 皿がザロス(お米)山盛りの上に肉・肉・肉だよ。それと唐揚げ、フライドポテト、サラダ、燻製肉が別皿に山のようになってる。


「あと3回ぐらいはお代わりする予定だが?」


 不思議そうにジンさんが首を傾げる。お腹の中にブラックホールでもあるのかしら。


 ザイン商会提供のブドウっぽい果物を摘みながら、焼台を眺める。

 20台の焼き台の内、3台は王族、貴族用。7台は兵士用。10台はカイラット街の広場に運ばれ、平民用となった。わたしが兵士用や平民用に行くと大騒ぎになるらしいので、王族、貴族用に混ぜてもらってます。参加人数は50人いないぐらい。でっかい焼き台なので、一台で15人ぐらい賄えるはず。平民用は少ないかな?と思ったけど、広場に交代で訪れるように調整しているんだって。焼いてるのは飲食店の店主さんたち。今日はお店をお休みしてBBQに協力してくれてるんだとか。材料が足りなくなったら遠慮せずに言ってねとお願いしている。


 兵士用焼き台は王族、貴族用と少し離れた所に設置されているんだけど、時々「無礼講だから上官、部下は関係ないですよね!その肉は私のです!」とか、「この串が欲しくば、私の屍を超えていけ!」とか物騒な声や「ザーロースっ!ザーロースっ」と合唱する声が風に乗って聞こえてくるような気がする。必要ならまた作るから喧嘩しないでー!あと合唱禁止でーす。


 王族、貴族の焼き台は流石にそんな争う声は聞こえないけど、上品に笑いながらも侍従たちに肉を確保させようとする目は鋭い。だからいっぱいあるから喧嘩しないでよ?侍従さんたちも食べてね?


 大盛況のBBQ慰労会で肉もザロス(お米)も順調に減り良かったが、BBQが関係ない人たちもいる。はい、ここでも来ました。婚活大会。ジンさん(優良物件)に群がる令嬢たちの熱い戦い!綺麗な人が多いから目の保養!


 ちなみにアラン殿下は対象外。美人で優しい婚約者がいるんだって。リア充め。マリタ王国は王族貴族といえど一夫一妻制なので、第二妃や愛妾はダメ。アラン殿下と婚約者さんの仲はマリタ王国でもラブラブで有名なので、横入りする余地なしなんだそう。


「ジンクレット殿下。こちらのお料理、大変美味しゅうございますね。あちらの席でゆっくりと頂きませんこと?わたくし、以前からずっとジンクレット殿下とお話ししとうございましたのよ」


 金髪の胸元露出度高めのご令嬢がジンさんに囁きます。すごい色気ですね。


「まあ、ジンクレット殿下はわたくしとお過ごし頂きますのよ。邪魔なさらないで」


 清楚系銀髪美女が牽制。可憐な方ですね。


「ジンクレット殿下!お会いできて嬉しいですぅ。あっちでお話ししませんかぁ」


 ロリ系タレ目美女。天然(多分養殖)で愛らしい方ですね。


 ジンさんは美女たちに視線も向けず一言も喋らない。塩対応を通り越して空気対応。婚活する気ゼロなのか。タイプの娘がいないのかな?贅沢なっ!


 しかし3人女が寄れば姦しいとはよく言ったもんだ。キャーキャーうるさい。前回のエール街みたいに遠巻きに見てたら良かったんだけど、今回のわたしの席、ジンさんとアラン殿下の間なんだよね。そして令嬢たちはジンさんやアラン殿下、他の貴族の皆さんには愛想良く話しかけるけど、わたしのことはガン無視。こちらから挨拶してもガン無視。見えてないの?ってぐらいガン無視。居た堪れないよぅ。

 

 まあ、どこの誰かも分からない女が図々しく王族の間に座っていたら腹が立つよね、。別にわたしはどう扱われようと何とも思わないけど、逆に令嬢たちの方が心配になってしまう。

 だって、わたしの席、アラン殿下とジンさんの間。王族の間だよ?マリタ王国にどう扱われているのか一目瞭然なんだけどなぁ。令嬢たちの態度にジンさん、アラン殿下、キリやバリーさんだけでなく、あの善意の塊、温厚なカイラット卿までもキレている現状に早く気づいてー。


 しかしジンさんの婚活を邪魔するのもなぁ。わたしとはいえ部外者がいたら進めにくいこともあるでしょう。ちょっと調理場にでも行って、お肉とか足りそうか聞いてこよーっと。決して令嬢たちの「空気読め」「どっか行け」という視線が面倒だと思ったわけじゃないよ。お肉が心配なんだよー。


「アラン殿下、少し席を外させていただきます」


「うん?その必要はないよ?」


 アラン殿下に涼しい顔で即却下されました。いや、お肉心配なの、行かせてプリーズ。

 アラン殿下もにこやかなお顔ですが令嬢たちをガン無視。何か聞かれてもにこやかにガン無視。どうも令嬢たちのわたしに対する無礼を不快に思っているよう。お気になさらずー。

 しかし、この席イヤー。ギスギスしてて落ち着かない。こんなの楽しいBBQじゃないよね?お爺ちゃんがいるザイン商会グループに加わりたい。あっちは子どももいて、みんなキャッキャしてて楽しそう。

 前世の、気がついたら周りが上司だらけのテーブルで呑んでた時ぐらいイヤー。どこ行った同僚ー。帰ってこい後輩ー。お酌ばっかりで気疲れするー。


「ちょっと、調理場に行きたいのです。材料が足りるか確認を…」


 そしてそのままお爺ちゃんたちのグループに合流したいのです。


「ジャンに確認させよう」


 アラン殿下はわたしのささやかな願いも叶えてくれないようだ。チラッとジャンさんに目配せする。ニッコニコでジャンさんが頭を下げ、足早に調理場に行ってしまった。くそぅ。逃げ損なった。


「この果実水は美味しいね。シーナ殿も好きな味じゃないかな?」


 アラン殿下が果実水を勧めてくれます。美味しそうですねーじゃなくてさ。


「シーナちゃんはこっちのスッキリした味が好きだろう?それは少し甘すぎる。シーナちゃんは果物も甘すぎるものよりさっぱりしたものを好むんだ」


 ジンさんがアラン殿下を睨みつけながら、わたしに別の果実水を勧めます。あら、スッキリしていて確かにアラン殿下に勧められたものよりもわたし好み。美味しいー。


 思わず杯を手にニコニコしてたら、アラン殿下がにやりと笑った。


「流石にジンクレットの方がシーナ殿の好みを把握しているね。私には太刀打ちできないよ」


「当たり前だ。俺がシーナちゃんの好みを間違えるはずがない。兄貴に負けるはずがないだろう」


「おやおや、ジンクレット。余裕のないことだね。お前の方が8歳も年上なんだから、大人の余裕ぐらい持っていないと、シーナ殿に愛想を尽かされるんじゃないか?」


「ー!8歳差?」


 令嬢達から、引きつったような声が漏れた。ざわざわと一気に騒がしくなる。

 すいません外見詐欺で。成人してまーす。

 はっ!成人しているなら果実水じゃなくて、果実酒もいけるのでは?さっきから甘い匂いをしている、美味しそうなお酒が!


 そーっと果実酒に手を伸ばそうとすると、ジンさんに掴まれた。くっ、バレたか。じゃなくてさ、わたし大人!飲んでも合法!


「シーナちゃん、あの果実酒は甘い匂いをしているが度数が強いし、後味が少し苦いんだ。酒は初めてだろう?俺がシーナちゃんの初めてに相応しい酒を選んであげるから、少し我慢しような」


 ジンさんが優しくそう言ってくれたが、なんか表現がゾワゾワする。わたしの初めてに相応しいってなんだ。ちょっと言葉の使い方変だよ。それに、前世では好きではなかったけど、お酒を飲んだことぐらいあるぞ。


「初めて飲むときは、こういう公の場じゃない方がいいな。酒精がシーナちゃんにどういう影響があるか分からないからね。初めてのときは2人で飲もうね」


 うーん?酒癖が悪かったり、アルコールが合わなかったりってこと?まあ確かに、この体では初めて飲むから何が起こるかなんて分からないよね。ものすごく酒に弱くて、泥酔して危険な魔法連発なんて事態になったら大変だもん。表現は変だけど、ジンさん、良く気がつく人だなー。


「分かりました。その時はジンさ…ジンクレット殿下、よろしくお願いします」


 お酒は楽しみだなぁ。飲めたらお酒に合う料理の幅も広がりそう!


 上機嫌なわたしは、怪しく笑うジンさんにも、声にならない悲鳴をあげる令嬢たちにも、微笑ましく見てるアラン殿下にも気付いていなかった。

 後からキリに、異性と2人っきりでお酒を飲む約束をすることは、2人の関係が特別なものであると公言したようなものだと注意されるまで、わたしは能天気にお酒のことを楽しみにしていたのだ。








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― 新着の感想 ―
あれ?シーナ15歳ジン22歳で、7歳差じゃなかった?なんで8歳差?
ありましたねぇ。 「私(俺)の屍を越えて行け」、プレステでしたか。 今はもう何もかも懐かしい。。。 (年齢バレバレ) それはともかく、楽しんで読んてます! 地の文章のテンポがよく、リズミカルで面白い。…
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