月別大会 4
「──とまあ、こんな感じかな? じゃあ何か質問ある人~? ……うん。いないみたいだし、それじゃ好きにチーム組んでみて」
《イフリート》の一年教室ではシエナがトレジャーウォーズの説明を終え、チームを決めるように促していた。
トレジャーウォーズは学年別で開催日や会場が違い、代表講師はそれぞれ《ドワーフ》のガンド=メギルが三年生を、《ハーピィ》のホーク=スフィンクスが二年生を、シエナが一年生を監督することになっている。
ただ一人、《セイレーン》のイルミナ=クルルだけ全ての大会に同伴し、救護班として参加することになっている。
ちなみにだが、三年生はまさに今日、トレジャーウォーズをやっている。
スケジュールとしてはまず今日が三年、一日空けて次に二年、そしてまた一日空けて一年が大会をやることになっている。
何とも忙しないスケジュールだが、それは先の事件の影響でもあった。一時期は中止も囁かれたがリールリッドはつらまないことが嫌いだ。
故にこういうスケジュールとなったのだ、と《イフリート》の講師に、つまりシエナの同僚となった者に聞いた。
シエナは騒がしくチーム決めをしている生徒達を眺めた後、しおりに書かれているトレジャーウォーズの主旨を確認する。
今回の月別大会はレクリエーションのようなものである。
先月、先々月に行われた大会も言ってしまえばレクリエーションのようなものなのだが、その二つの大会は実力のある者が一方的に得をする大会だった。
クラス対抗戦は特にそうだ。クラスの上位者のみしか大会には参加できなかったのだから。
しかし、今回は実力だけではどうにもならない。色々と運も必要となってくるものだ。作戦も重要であり、魔法以外の能力も必要になる。
今まで目立つことのなかった生徒達が一発逆転を狙える場でもあるのだ。
そして、もう一つが様々な状況下での戦闘経験だ。
今大会は五クラス入り乱れての乱闘戦であり、森の中での遭遇戦や、宝を持ちながらの撤退戦。待ち伏せしてからの奇襲や、逆にそれに対応するための作戦なども考えなければならない。
それに常に周囲に気を配り続ける集中力と精神力も培わなければならない。チーム戦ということもあり、チームプレーやリーダーの素質、作戦の考案や信頼関係なども磨かれる。
更に加えて魔獣との戦闘経験も積める。魔獣との戦闘は人間を相手にする時とはまた全く違う戦法や作戦が必要になる。
一年生はまだ低いランクの魔獣しか出ない場所へ行くことになっているが、一年生はまだ魔獣との戦闘経験が少ない。たまに学外実習として講師同伴で何度か戦闘を行ったのみである。
余談だが、一部だけ例外が存在するが、それは今は置いておくことにする。
ということもあり、今回はレクリエーションではあるが、色々と考えられたイベントなのである。
「流石は噂に名高いミスリル魔法学院、と言ったところかなぁ」
そんな独り言を呟くシエナはそのまま視線を生徒達へと戻す。
するとこのクラスの上位者四人が話し合いをしていた。
「それで俺達はどうする? やっぱり分かれるか?」
「そりゃいいわね。そっちの方がせいせいするし」
「ああ、そう。なら、男女二人ずつ分かれるか」
「別にアタシは一人で余裕だけど」
「はいはい。アスカはボク達のチームに入れてあげるからね~」
「何その上から目線っ!?」
「よろしくッス! レオン!」
「ああ、頑張ろうなゴーギャン」
どうやら序列一位から四位の四人はそれぞれ二人ずつに分かれてチームを作るようである。それもまた作戦であり、シエナはいちいち口出しをするつもりはなかった。
しばらく待っていると、クラス全員がチームを作り終えたらしい。チームの代表がそれぞれ自分のチームのメンバーの名前を黒板に書いていく。
見ると、五人チームが六つ。四人チームが二つ。三人チームが三つの計四十七人の十一チームが出来上がっていた。
本来なら五十人いるクラスなのだが、今は三人の生徒が病院に入院しているので一チーム足りない。だが、チーム数はクラスによって異なる。《プレミアム》など、一チームしかない。
それにチームが多い方が勝つわけでもないのだからそこまで大袈裟に考えることでもない。
「うん。決まったようだね。なら早速チームで連携の練習をしに行こうか。びしびししごいてあげるからね」
シエナはそれから大会までの間、《イフリート》専用の魔法練習場で生徒達に自身の培った連携プレーを教え込んでいった。
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そして日々は過ぎ去り、各クラスの生徒達全員が来たる大会に向けて、特訓を繰り返し、とうとう一年の大会を明日に控えた本日。
それぞれのクラスの代表講師達はそれぞれ生徒達に激励の言葉を贈った。
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《セイレーン》代表講師、イルミナ=クルルは生徒達にこう言った。
「では皆さんは明日が月別大会ですね。皆さんのこれまでの努力を出しきればきっと良い結果を出すことが出来ることでしょう。全てを包み込み優しく癒す美しき水の力を宿す皆さんなら大丈夫だとは思いますが、怪我のないよう、そして悔いの残らぬよう、全力で頑張ってくださいね。私、応援してますから」
「「「はいっ!」」」
イルミナの言葉に規則正しく整列した生徒達は胸を張りながら応じた。
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《ハーピィ》の代表講師、ホーク=スフィンクスは生徒達にこう言った。
「とうとう明日が今月の大会だ。私は君達に着いていくことはないが、私は君達が良い成績を出して帰ってくると信じている。私と同じ、気高き《ハーピィ》の力を他のクラスの者達に見せつけて来たまえ。風はどこにいても必ず届く。風は必ず我らを見守ってくれている。だから臆せず進め。風は我らと共にあり!」
「「「風は我らと共にあり!」」」
ホークの言葉に生徒達は倣うように同じ言葉を繰り返した。
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《ドワーフ》の代表講師、ガンド=メギルは生徒達にこう言った。
「明日が一年のトレジャーウォーズだ。クラス対抗戦では一位になったお前らだが、だから今回も楽勝だ、なんて考えてんじゃねえぞ。他のクラスの奴等もお前らと同じぐらいに、もしくはそれ以上に魔力を高め技術を磨いているはずだ。気を緩めていい時なんか一切無いと知れ。
最後にこれだけ言っておく。俺はお前らと一緒には行かねえ。だがな。俺達は同じ大地の上に立っている。お前らは一人じゃねえ。雄大な大地がお前の味方だ。だから存分に戦ってこいっ!」
「「「おうっ!!」」」
ガンドの言葉に生徒達は強く吼えるように答えた。
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《イフリート》の代表講師、シエナ=ソレイユは生徒達にこう言った。
「やぁ~。とうとう明日だね。私は参加できないんだけどすごい楽しみだよ。君達はどう? 楽しみ? こういうのはね、楽しんだ者勝ちなんだよ。大いに楽しんじゃいなさい。そして、楽しみながら勝っちゃいなさい。君達は強い。私が保証してあげる。だから皆、明日は火の魔術師らしく、誇り高く燃え上がろうっ!!」
「「「よっしゃあああっ!!」」」
シエナの言葉に生徒達は大きな声で返事を返した。
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《プレミアム》の講師、キャサリン=ラバーは生徒達にこう言った。
「明日です。明日、私の運命が決まります。いいですか皆さん。ぜっっっったいに良い成績を残してください。期待してますから! むしろ懇願してますからっ!! 全身全霊全力全開で大会に望んでください。私の特別ボーナスのために!」
「「「うわぁぁあ! 全っ然テンション上がらねええええっ!!!」」」
キャサリンの言葉に生徒達は虚しい絶叫をあげるのであった。
そしてとうとう、その日がやって来た。




