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問題児達の稀少魔術《プレミアム・レア》  作者: いけがみいるか
五章 ティターニア・ファミリア
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四人目の《プレミアム》 1

第41話

「絶~ッ対に嫌!」

「そこを! そこをどうかお願いしますエルシア様ッ!! どうかお慈悲を!」

「…………朝っぱらから何やってんだよお前ら」


 今日はとうとう魔競祭。だというのにアシュラはエルシアに五体投地して何かを全力で懇願していた。プライドも何もあったものではない状態にまでなっているアシュラをエルシアは厳しい態度と断固たる姿勢で拒絶する。だがアシュラもしつこく食い下がる。


「頼むってマジで! あの超絶美人なお姉様方に、俺がエルシア様のクラスメイトだって紹介してもらうだけでいいからっ!」

「そんな下心丸出しなあんたを姉様達の前に出せるわけないでしょうがっ! 常識ってものを考えなさいっ!」


 そこでようやく状況を飲み込めたグレイが、遠くでこちらを苦笑しながら見守っているエルシアの姉達に気付く。

 経緯はどんなものかはわからないが、エルシアの姉、ナタリアとセフィリアはアシュラのど真ん中ストライクだったようで、流れでその二人がエルシアの姉だと知ったアシュラがこうして全て投げ出してエルシアに慈悲を請うているのだろう。


 そのアシュラの背後には情けなくて泣き出しそうな顔のバーバラが立っていたが、流石に気の毒なのでそのことはアシュラには告げず、ミュウと二人で先に食堂へと向かった。


~~~


「本ッ当に最悪……。姉様達には笑われるし、他の人から見たらまるで私が悪者みたいだったじゃない」

「みたいじゃなくて、事実悪者だろてめえは。俺があんだけやったっつーのに、一言声を掛けることすら出来なかったじゃねえか!」

「当然でしょ! 許可してないんだから!」

「はんっ! もうてめえなんぞに頼むかよ! てめえが競技中の時にでも声掛けてお近付きになってやっから!」

「そんな勝手なことしたら今度こそあんたのその煩悩まみれの脳天ぶち抜くからねっ!」

「やれるもんならやってみやがれ! 何が来ようが俺は絶対に諦めねえからなぁっ!!」

「だったら今ここで沈めてやるわ! 姉様達は私が護るっ!!」

「台詞だけなら格好良いのに、内容はクッソくだらねえなお前ら」

「もう~っ! 何で朝からそんなフルスロットルで喧嘩出来るんですかあなた達は!? グレイ君も呑気に見てないで仲裁に入ってくださいよ!」


 バチバチと火花が散りそうなほどのメンチの切りあいに、キャサリンが呆れながら仲裁する。


「いや。つってもこんなのいつものことじゃないっすか。それはつまり、いつも通り絶好調ってことじゃないですかね?」

「それは、そうかもしれませんけど。でも何故かあなた達が絶好調だと思うとそれはそれで不安になってきますね……」

「「「何で!?」」」


 キャサリンは皮肉と嘆息混じりにぼやくと、再度グレイ達にあまり暴れすぎないように釘を刺す。しかしアシュラもエルシアも話半分くらいしか聞いていないようで、キャサリンのストレスも朝からフルスロットルだった。


 朝食を済ませた一同はそのまま真っ直ぐ会場へと向かって移動する。道中、沢山の人からの叱咤激励を浴びながら辿り着いたのは、サムスでも一番大きな競技会場だ。その会場の前には一般客の長蛇の列が出来上がっていた。それはミーティアの時の比ではなく、どれほどこの大会の注目度が高いかをわかりやすく示していた。


 関係者用の裏口から会場に入るとすぐに控え室に用意されているユニフォームに着替えるようにとの指示を受けた。そこでグレイはミュウをキャサリンに預けて更衣室へと向かい、用意されていたユニフォームを手に取る。そのユニフォームを見てアシュラはどこか不満そうな顔をした。


「……何でこのユニフォーム、白を基調にしたデザインなんだよ。俺、死ぬほど白が似合わねえんだけど?」

「仕方ねえだろ。昔からミスリルは白、ブリードは黒って決まってるんだから」

「だったら俺、今からブリードに行ってくるわ」

「無理だっつの。どうせ門前払いされるだけのがオチだ。だからミスリルの恥になるからやめろ……って、あぁそっか。お前さっき羞恥心捨ててきたんだっけか。うわ、厄介だな」

「捨ててねえわ! ちゃんと拾ったわボケ!」

「一回は捨てたのかよ……。人としてそれでいいのかお前は?」


 その後もアシュラはブツブツと文句を言い続けていたが、ユニフォームを着ないと大会には出られないため嫌々ながら着替えた。


「………………うわぁ、似合わね」

「うっせえよ! んなこと俺が一番知ってるっつーの!!」


 ヤケクソ気味に吠えるアシュラを鼻で笑いながら更衣室を出ると二人はエキシビションマッチの都合上、他の者とは別の場所に集まるようにと言われていたので、その通りの場所へと向かう。そこには既に着替えを終え、髪をポニーテールに纏め上げたエルシアが待っていた。

 だが他にはスタッフの者しかおらず、どうやらグレイ達の対戦相手は別の場所で待機しているらしかった。


「遅いわよ。……って、あんたそのユニフォーム似合わないわね~」

「しつけえよ! もう散々言われたわこんちくしょう!」

「私まだ一回しか言ってないんだけど?!」

「静かにしてろっての。そろそろ始まるぞ」


 グレイの言った通り、開幕を知らせるようにオーケストラの演奏が始まり、東ゲートからはミスリル、西ゲートからはブリードの生徒が入場してくる。

 ミスリルの先頭を歩くのはやはりアーノルドだった。だがそれにはさほど興味もなく、全員が綺麗に整列し終えるのをぼーっと眺めていた。

 全員が綺麗に整列し終えると演奏も止まり、リールリッドともう一人、年老いていながらも鋭い目付きをした男が舞台に上がる。


「え~。こほん。私はミスリル魔法学院の学院長、リールリッド=ルーベンマリアだ。本日は晴天に恵まれ、絶好のコンディションで魔競祭を行えることを喜ばしく思っている。ミスリル、ブリード両校共、自分達の力を存分に発揮してもらえることを期待している。特に私の愛するミスリルの生徒諸君。今年は二連覇が掛かっている。大いに全力を尽くしてくれたまえ」


 リールリッドの激励にミスリルの生徒は雄叫びで応える。そしてリールリッドは後ろに控えていたブリードの学園長にマイクを渡した。


「おっほん。儂はブリード魔術学園の長、ゴルドフ=ローアンバーじゃ。今年も生徒共の成長をこの目で見れることを幸運に思っとる。是非とも儂の期待に応えてくれることを願っとるぞ。勿論わかっておるだろうが、儂の自慢のブリードの子らよ。去年の雪辱を見事晴らしてみせてくれぃ! 」


 ゴルドフの言葉にブリード一同はミスリルに負けず劣らずの雄叫びを上げる。

 両校の長の話が終わり、ミスリルとブリードの先頭に立っていた生徒が一歩前に出て腕を掲げて同時に宣誓する。


「「宣誓。我らミスリル、ブリード両校の生徒一同は、魔術師の誇りと我が校の名誉に掛けて、正々堂々と戦い抜くことをここに誓います」」


 宣誓の直後、一際大きな花火が上がり青空に大輪の花を咲かせた。


~~~


『さぁ~て。宣誓も終わり、これから大会前のエキシビションマッチを執り行いたいと思います!』


 実況のアナウンスが会場に流れた瞬間、先程の花火と同等の大きな歓声が響き渡る。

 その大歓声を、どこ吹く風と受け流しながらグレイ達は準備に取りかかる。


「発射の瞬間、少しだけ衝撃を受けますが安全は確保しているので、着地まではあまり動かないようにしてください」


 そうスタッフに指導され、三人ともこくりと頷く。それを確認したスタッフがオーケーサインを出すと、再度アナウンスが入る。


『どうやら準備が出来たようです。私の口より、皆様の目で確認していただきましょう! では両校代表者の皆さん、登場してください!』


 それを合図にグレイ達は風の球体に包まれて空高く飛び上がり、それに追随するように火、水、風、土の魔法が上空に向かって放たれて空を鮮やかに彩る。そしてグレイ達は会場中央に設置されていたリングに降り立った。


『この四人こそ、おとぎ話から飛び出してきた奇跡の体現者! 世界で他に類を見ない超稀少な存在にして魔術の神秘の象徴! 《プレミアム・レア》を持った少年少女達だぁぁっ!』


 おおおぉぉぉぉっ!! と、会場が激震する中、リングに降り立ったグレイ達三人は驚愕の表情で四人目(・ ・ ・)の姿を見た。


 そこにいたのは、ブリードのチームカラーである黒のマントを羽織った、淡い紫の髪の少女。よく見ると左目を眼帯で覆っており、唯一見える右の瞳からは強い意志の力と溢れんばかりの好奇心が垣間見えた。


「四人目……だと?」

「おいおい。今年は《プレミアム・レア》のバーゲンセールでもやってんのか?」

「一体、どんな力を持ってるっていうの?」


 前情報を全く与えられていなかったグレイ達は未知の相手を前に警戒していると、眼帯の少女は口許に笑みを浮かべ、バッ! っとマントを翻しポーズを決めた。


「ようやく会えたな同類共よ! 妾の名はティアラ=レインフォード。魔の全てを統べ、司る者であるっ! この奇跡と運命の廻り合いにて相成ったこの瞬間ときを存分に楽しもうではないか!」

「「「………………うわぁ」」」


 四人目の《プレミアム・レア》。これは相当めんどくさそうな奴が出てきたな、と三人は自分達のことを棚に上げながら辟易するのだった。

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