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問題児達の稀少魔術《プレミアム・レア》  作者: いけがみいるか
四章 プレシャス・バケーション
167/237

四色の陣 2

「ようやく全員揃ったようだな」


 ホークが着替えを終えて整列する生徒達を見渡して、人数が揃ったことを確認する。


「なら、次は昼食だが、テーブルの席順もそれぞれ決まっている。テーブルの上に名前が書かれた紙が置いてある。自分の名前が書かれている紙が置いてある席に座れ」


 まさかまた《プレミアム》三人は同じ席じゃないだろうな、と警戒するグレイ達だったが、今回はそんなことはなかった。


 四つのテーブルに分かれて座る生徒達。だが、何故かその四つのテーブルは少し離れている。グレイは各テーブルのメンバーを見渡して、デジャヴを覚える。


「このメンバー……。これ、バスの席順か?」

「へっ? あぁ、そういやボクとラピスちゃんの隣はソーマ君とクリムちゃんだったよね?」

「ええ、確か」

「そうやったか? 全然覚えてへんわ」

「まあ、お前はずっとアルベローナの方睨んでたからな……」


 グレイと同じテーブルにはメイラン、ラピス、ソーマ、クリムの四人が座っており、これはバスの席順で横一列に並んだ名前と同じメンバーだ。そこにグレイが加わった、ということは。


 グレイは再度他のテーブルのメンバーを見て確信する。


 エルシアはアスカ、シャルル、エコー、マルコシウスと同じテーブルに着き、アシュラはゴーギャン、クロード、コノハ、カナリアと同じテーブルだ。


 そして、中でも一番目を引いたのは、レオン、アルベローナ、カイン、ウォーロックの四人が座るテーブル。各四クラスの序列一位が揃って同じテーブルなのは、確実に何かあるのだろう。


 全員が各テーブルに集まったのを確認し、ホークが少し声を張り上げて意図を説明し始めた。


「薄々気付いてはいると思うが、わざわざこのような形に席を分けたのは他でもない。今、同じテーブルに座る者達が今日の訓練の際のチームメンバーだ」


 やっぱりな、とグレイは得心がいったように口許に手を添えて何かを考え出す。

 そんなグレイをよそにホークは説明を続けた。


「そして今回の訓練は、序列一位四人のチームとの戦闘だ。一チームずつが順番に一位チームと戦う形になる」

「待ってください。俺達のチーム、四人だけなんですけど。それに連続って……」


 ホークの言葉に、レオンが割り込む。内容は人数の違いの件だ。どう分けたとしても一人足りなくなるのは仕方ないのだが、それに加えて三チームと連続で戦うなんていくら彼らでも大変だ。そういった点は一体どうするのか。ということだろう。

 だがもちろん対策は考えてられていた。


「わかっている。いくら序列一位四人とはいえ、数や体力の問題はある。だから多少のハンデがある。その説明も今からする。質問は全ての説明を終えてから再度したまえ」

「……わかりました。すみません説明の邪魔をしてしまって」

「いや、構わないさ。では続けるぞ。今言った通り、一位チームにはハンデとして一試合終わるごとにイルミナ先生の回復魔法を受けられることとする。そして敗北条件はチームの全滅のみとする。対して他の三チームにはリーダーを決めてもらい、そのリーダーが倒される、もしくはリーダー以外のメンバーが三人倒された時点で負けとみなす」


 それを聞き、三チームにわずかにどよめきが走る。こちらの勝利条件は相手四人を全滅すること一つのみ。だが、敗北条件は最悪たった一人、リーダーさえ倒されてしまえば負けとなるのである。

 数の有利があるとはいえ、決して油断出来ず、中々にバランスの取れた条件だった。


「リーダーはこの昼食中にメンバーの中で一人を選んでくれ。試合直前にリーダーを全員に宣言してもらう。嘘のリーダーを仕立てる、などということは禁止だ。それと最後に。我々講師は更にハンデとして一位チームに少しだけ助言をするが、君達にはしない。しっかりと自分達で考えるんだ。わかったな。では、話はこれで終わりだ」


 ホークは説明を終え、席に着く。代わりにキャサリンが立ち上がってパンッと両手を叩く。


「さぁ。では、昼食をいただきましょう。皆さん手を合わせてくださ~い」


 まるで小さな子供に言い聞かせるような口調だったが、何故か嫌な感じはせず、自然と皆、手を合わせる。


「それでは。いっただきま~す!」

「「「いただきま~す!!」」」


~~~


 海の幸をふんだんに使った料理に舌鼓を打ちながらも、各チームがメンバー達と話し合っていた。

 各テーブルが離れているのは、他のチームにその話を盗み聞きされにくくするためだったのである。


 一位チームはホークから一言、二言助言を貰った後からずっと、実に真剣な表情で話し合っている。他のチームも、普段の授業で習った連携の形を話し合う。


 そんな中であるにも関わらず、他のチームにも聞こえるほど大きな声を発しているのは、アシュラのいるチームだった。


「だから! この中で一番強い俺がリーダーやればいいじゃねえか!」

「馬鹿か君は。君はどうせ馬鹿正直に前線に出るつもりでいるんだろ。だがな、リーダーというのは冷静に全体を把握して指示を出す必要があるんだ。そのリーダーが指示を出さず、前線で戦闘を行い、万が一返り討ちにあったらどうするつもりだ? その時点で僕らの負けになるんだぞ?」

「あぁ? 俺が負けるわきゃねえだろが!」

「……あんたらねぇ。話くらい静かにできないのかい? 折角の料理が不味くなんだろ?」

「カ、カナリアさんっ。そ、そんなこと言っちゃうとまた言い争いに……」

「そ、そうッスよ。まずは穏便に」


 どうにも、誰がリーダーをやるかで揉めているらしかった。アシュラの言い分も、クロードの言い分もそれぞれ一理あるが、どうも話は平行線を辿っているようで、騒ぐ声はどんどん大きくなる一方だったが、講師達はそれを止めようとはしなかった。

 これも、訓練の一つだからである。一見ただ言い争っているだけで何の意味のないように思われがちだが、実際のところはそんなことはない。

 むしろ今回の合宿の最重要項目と言っていい。


 例え、どれだけ強い魔術師がいたとしても、作戦もなく戦いを挑めば痛い目を見る。頭を使わずに戦うのはただの獣と同じだ。

 作戦ごと薙ぎ払える魔術師など、数えるほどしか存在しない。だから魔術師もしっかりと作戦を考える必要がある。

 又、個の力が大きく影響する魔術師であっても、仲間との連携は必須だ。彼ら《製錬魔術師(アーク・ウィザード)》は特に個の力に突出する傾向があるため、尚のことチームプレーの重要性を学ぶ必要がある。


 作戦会議。この昼食の時間はそのためのものでもあったのだ。


 一方、エルシアのいるチームでも少々揉め事が起こっていた。


「あんたねぇ! 普通は一番戦闘から遠くにいるあんたがリーダーをやるのが妥当でしょうが!」

「えぇ~? でも、エコーがリーダーなんかになっちゃったら狙われるじゃ~ん。そんなのごめんだよ~」

「全く。だったら前線に出る? 私が後方支援してあげるから」

「前線とかもっと嫌だよぉ。危ないじゃん」

「いい加減にしなさいよあんたぁっ!!」

「ふぅ……。話が一向に前に進まんでござるな」

「う、うん……」


 エルシア達のチームでは、後方支援を得意とするエコーをリーダーとしようとしているようだったが、それをエコーが拒否し、かといって戦闘をするのもごめんだと言う。

 そんなエコーの扱いに、エルシアとアスカは難儀しており、シャルルとマルコシウスはそんな三人を見て、溜め息を吐いた。


 そして、グレイのいるチームでは。


「おれリーダーとかめんどくせえからパスな」

「う~ん。ここはやっぱりリーダーはグレイ君? それともラピスちゃん?」

「別にどっちでもええやろ。勝てるはずないやん。ウチらの代表が相手なんやで?」

「そうして初めから諦めているその態度、あまり好ましくありませんね」

「はんっ。そうは言うけど、実際相手にもならへんで。なんせ代表は学年最強なんやから~」


 他のチームと違って怒鳴りあっているわけではないが、どうにもテンションが低い。本気度で言えば一番低いという印象を与えていた。

 だが、先程からずっと何かを考えていて、ずっと無言だったグレイがようやく口を開いた。


「…………ふっ。わりと運いいな、俺」

「ん? なんや? どういう意味や?」


 グレイの呟きを拾ったクリムが問いかける。それに他の三人もグレイに視線を向けた。そしてグレイは不敵な笑みを浮かべながらこう言った。


「運がいいって言ったんだよ。このチーム、お前らがしっかりと役目を果たしてくれれば、確実に勝てる」

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