4これだけは譲れません!
意気消沈したエルディだったが一夜明けると気持ちを切り替えた。
(だって結婚式まで3カ月。急いでドレスの仕上げもお願いしなきゃいけないし…そうだ。招待状を。それに…お花やパーティーの仕度も…
でも、クワイエス家にお世話になってもいいのかしら?
お姉様は機嫌が悪いし、叔母様は結婚式は一緒にお祝いするからって言って下さっていたけど…)
エルディは朝一番に叔母様に結婚式が決まった事を話した。
「叔母様、実はルーズベリー教会から知らせが来たんです。3月10日に結婚式をする事に決まりました」
「まあ、おめでとうエルディ。3月って言ったらもうあまり時間がないじゃない。急いで準備をしなきゃ」
「ええ、そうですけど…アンリエッタお姉様も結婚式を挙げるんでしょう?」
「まあ、エリクが春にはクワイエス領に行くからそれまでに式を挙げたいって言ってたわね。でも、ルーズベリー教会はエルディに決まったんだし、もう少し後にするかもしれないわよ。アンリエッタが起きて来たら聞いてみるけど」
「ええ…もしお姉さまがどうしてもルーズベリー教会で挙げたいって言ったら…?」
「でも、通知はエルディに来たんでしょう?あの子は諦めるしかないじゃない」
「ええ、でも何だか悪いような気がして…」
「でも、仕方ないじゃない。そんな事エルディが気にしなくていいのよ。結婚式の後のパーティーは任せてね。それが心配だったんでしょう?あなたはいつも遠慮するけど、いいエルディ。あなたはもう我が家の娘と同じなのよ。だからアンリエッタもあなたも同じようにお祝いするつもりだから。いい?」
「叔母様…ありがとうございます。ほんとに私なんかの為に…」
エルディは胸が詰まっていた。
そこにアンリエッタが入って来た。
「おはよう。あらエルディどうしたの?」
「あ、アンリエッタお姉様おはようございます」
エルディは少しビクリとアンリエッタを見上げた。
アンリエッタはいつもと変わらないように見えた。
「お母様、話、聞こえてましたよ」
「あらそう。アンリエッタもそう思うでしょう?」
「ええ、もちろんエルディも同じようにお祝いすることに私も同じ気持ちよ。でも、私だってルーズベリー教会で結婚したいの。どうしてもよ。だってエルク様は春にはクワイエス領に行くんだし、私だって一度きりのわがまま言ってもいいでしょう?ねぇ、エルディお願い。その権利を私に譲ってくれない?あなたはこれから先もチャンスがあるじゃない。お願いよ」
アンリエッタは今までもエルディの意見を聞かず自分の考えを押し付けることはよくあった。
でも、それはエルディにとってそちらの方がいいとエルディにも納得できる事だった。
だからこれは違うのではとエルディは思う。
だって、私だってルーズベリー教会で結婚式を挙げるのが夢で…コツコツお金だって溜めて来たのよ。
「ごめんなさい、お姉様。これだけはどうしてもいやです。ごめんなさい」
エルディは食事もせずそのままタウンハウスを飛び出した。




