36披露宴は終わり
クワイエス侯爵家の屋敷ではすでに披露宴パーティーの準備は出来ていた。
広いホールは煌びやかなシャンデリアがまばゆくホールを照らしており、解放された庭園には篝火が焚かれていた。
ほーりには次々と親族が入って来た。
用意された席には二組の新郎新婦が座っている。その周りを囲むように親族が取り囲んでいる。
全員が揃ったところでクワイエス侯爵が挨拶を始めた。
「我がクワイエス侯爵家に二組の新たらなカップルが誕生した。エリクは子爵領を継いでくれることになり娘のアンリエッタと一緒に子爵領を盛り立ててくれるだろう。またエルディは騎士団のレオルカ・トリスティスと婚姻して王都に戻るが騎士団長の私の心強い支えになってくれることと信じている。いや、こんなにうれしい事はない。皆さんどうか心ばかりのもてなしだが心行くまで楽しんでほしい。おめでとうアンリエッタ。エルディ。我がクワイエス侯爵家の希望に乾杯!」
「「「乾杯!!」」」
全員の声が揃って乾杯をした。
その後はそれぞれの親族と交流をして和やかな時間が過ぎて行った。
1時間ほど過ぎた頃~
クワイエス家の執事トーマスが高らかに宣言する。
「それでは新郎新婦はそろそろ退場します。後は皆さんでご歓談頂きますようお願いいたします」
エリクはアンリエッタの手を取り席を立った。
レオルカもエルディの手を取り席を立った。
みんなから拍手で見送られてそれぞれに用意された部屋に向かう。
いよいよ初夜だ。
アンリエッタもエルディも緊張で踏み出す脚がぎくしゃくしたようになる。アンリエッタを連れて行くエリクも緊張しているらしく顔が強張っている。
レオルカもさすがに緊張していたが、それよりやっとだと言ううれしさもあって顔はついついにやけ気味だ。
「あっ、俺はこっちだから…アンリエッタ。い、行こうか」エリクがぎこちなく声をかける。
「ええ…」アンリエッタも俯き加減に頷きふたりは廊下を曲がった。
「ああ、俺達は二階だから…エルディ行こうか」
「あ、アンリエッタお姉様…」エルディは恥ずかしさでアンリエッタの助けを求めてみる。
「エルディ、えっと…明日の朝ね」廊下の向こうから声がした
「あっ、えっと、そう明日の朝…」
エルディはかすれた声で答えた。
「行こうかエルディ。準備はいい?」
レオルカは少し心配そうにエルディの顔を覗き込んだ。その瞳はいつものレオルカじゃないような熱を持ったように見えて。
「れ、れおるかさ…れおるかって余裕なんですね」
「ば、そんな訳!これでも必死で…いや、いいんだ。エルディ抱き上げても?」
「えっ?」
返事をし終わらないうちにレオルカにひゅっと抱き上げられる。
「やだ。レオルカ…」
「いいからつかまって」
エルディは諦めて彼の首に腕を巻き付けた。そっと胸に頭を預けると彼の鼓動がけたたましくなっていることに気づく。
(彼も緊張してるんだ。でも私ほどじゃないよね。私、大丈夫かな?うまく行けばいいけど…ううん、心配ないから、彼を信じてすべてをゆだねればいいいのよ。きっとうまく行く…)
エルディはほっと息を吐く。
彼はそんなエルディを軽々と抱くと階段を登って行く。
部屋の前に辿り着くと片手で扉のノブを開けて中に入った。
部屋の床にそっと下ろされる。ふかふかの絨毯に何だかふらついてよろめく。
部屋はソファーとテーブルがありそばにはお茶や軽食の用意もされていた。
「エルディ?」
「ううん、ほら、絨毯がふわふわで…」
「ああ、ほんと。靴脱いだら気持ちいいかも」
レオルカは上着を脱いで靴も脱いだ。エルディもそろそろ限界とヒールを抜いた。
解放された脚をふかふかの絨毯が出迎えてくれて緊張がほわりと解けた。
レオルカがソファーに座るように言う。彼はお茶を用意してエルディの前に置いてくれた。
「疲れただろう?さあ、これを飲んで気分をほぐして…」
レオルカに言われてカップを手に取りお茶を飲む。柑橘系の香りのハーブティ=らしくほっと気持ちがほぐれた。
そこにレオルカが跪いた。
「れおるか、何を…」
エルディの持っていたカップをそっと取り上げテーブルにカップを置く。そのまま手を彼に下から支えられると彼がエルディの瞳を見上げた。
「エルディ。俺の妻になってくれて本当にありがとう。この先どんな事があろうと君だけを愛すると誓う。君の為に生き君の為に尽くすと今ここで誓う。だから…どうか俺を受け入れて俺のものになってほしい」
レオルカの言葉はエルディの魂を鷲づかみする。
「私の方こそ。レオルカ。私の夫になってくれて本当にありがとう。あなたの妻としてあなたを支えあなただけを愛すると誓うわ。どうか私をあなたの者にして欲しい」
レオルカはそのまま身体を伸ばしてエルディを抱きしめた。
「もう我慢できない。エルディベッドに行こう。いい?」
エルディはそんな彼の背中に腕を回した。




