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35無事に結婚式終わる


 式場は一時騒然となったが参列者はブルーノの祝辞を聞いてここが神聖な結婚式の場だと言うことをいち早く思い出した。

 そこにクワイエス侯爵が祭壇の前に出て来た。

 レオルカはエルディを後ろに庇い辺りを警戒している。

 エリクもアンリエッタの前に出てひどくピリピリした雰囲気でいる。


 「アンリエッタ。エルディ?もう大丈夫だ。安心しろ」

 ゼイスはふたりに優しい声色で声をかける。レオルカとエリクにも目配せをして大丈夫だと合図を送る。

 そして客席に向かって話を始めた。

 「先ほどはお騒がせをして申し訳ない。だが、今日は娘二人の大切な門出の日です。どうかお心穏やかにふたりの娘の旅立ちを祝って頂きたい」

 ゼイスが頭を下げる。さっと視線を巡らせてシルビアの親族にもう一度頭を下げる。

 それに続いて妻のマリアンヌが掛け声を…

 「皆さまどうか二組の新たな旅立ちに拍手を…」

 招待客は割れんばかりの拍手をアンリエッタやエルディに送る。

 そして二組の新たな夫婦は参列者に見守られ退場した。


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 教会から馬車に乗り込むと一同はまたクワイエスの屋敷に向かった。

 これから祝賀のパーティがある。

 レオルカとエルディはふたりで馬車に乗り込むとほっと息をついた。

 「それにしてもどうなるかと思ったわ」

 「ああ、まさかキャサリンが…エルディは?大丈夫か。恐かっただろう?」

 「ええ、驚いたけどブルーノ様ってすごいのね」

 レオルカは少し眉を下げる。

 「おいおい、結婚してすぐに他の男を褒めるのか?」

 「レオルカ様ったら、いやだ。ヤキモチですか?もちろん一番なのはレオルカ様に決まってますよ」

 エルディはレオルカの頬にそっと唇を当てる。

 「そうか。なぁエルディ。俺達結婚したんだ。そのレオルカ様って言うのはやめてくれないか。今日からはレオルカって。ほら、言って」

 「そうで、す、ね。れおる、か…やだ。恥ずかしい…」

 エルディの顔は朱色のインクを落としたように真っ赤になって行く。

 「エルディ。めちゃくちゃ可愛いな。さあ、良く聞こえなかったぞ。もう一度…」

 「れおるか…」

 「エルディ」レオルカに激しく唇を奪われる。何度も唇を吸い上げられ激しく求められた。

 

 やっと濃厚なキスが終わると…

 「キャサリンはどうなるんです?」ぽそりとエルディが呟いた。

 「ああ、このまま返すわけにもいかないだろうな。あんなことをしたんだ。クワイエス侯爵家の威信にもかかわる問題だろうし…」

 「ええ、でも…彼女だって被害者でしょう?」

 ケネト殿下の騒ぎでキャサリンの出目や生い立ちは広く世間に知れ渡っていた。

 母親の逆恨みで彼女もそんなおかしな考えになってしまった事や、本気でケネトを愛していたらしいと言うことも、彼女も気の毒だという声もあったくらいだ。


 「ああ、でも無罪放免と言うわけにはいかないだろう」

 「何とかいい方法があればいいのに」

 「エルディは優しいんだな。あいつに嫌な事をされたって言うのに…」

 「まあ、そうだけど。でも、こうやってアンリエッタお姉様と一緒に結婚式が出来たのだってキャサリンがいてくれたからでしょう?まあ、嫌な事はされたけど逆にそれで私はすごくいい結婚式になった訳で‥でも、キャサリンは違うでしょう?ケネトの事も諦めなきゃいけない。王都にはいられなくなったし…そう言えば男爵領に帰ったって聞いてたけど、どうしてこんな所まで来たのかしら?やっぱり結婚式を邪魔するつもりだったのかしら?」

 「いや、計画的じゃないと思う。ずっと下調べして計画的にだめにするつもりならもっと違うやり方をしたと思う。さっきのはほんとに突発的な行動だ。ブルーノがいてくれて良かった。それにしてもあいつキャサリンが来ると分かってたみたいだったな」

 「二人が共謀したって事?」

 「いや、それはない。ブルーノはそんな事をする奴じゃない。堅物で真面目だ。それにあいつはキャサリンを好きだったんじゃないのか?」

 「そうだったわね。連れて行かれるキャサリンについて行ったわね。きっとまだ彼女が好きなのね。それにしてもキャサリンもばかな事を…」

 「ああ、何とか立ち直ってくれればいいが…エルディ。もうその事を考えるのはよそう。今日は俺達の結婚式なんだぞ」

 「そうね‥」

 「ああ、やっと今夜君を…」

 レオルカはブッと鼻血が出そうになる。ずっと我慢して来た。エルディと今夜。そう考えただけでもう股間は勃ちあがりそうになった。

 「もう、嫌だ。そう言うことは…」

 エルディもレオルカが言おうとしたことが容易に察しがついた。

 ふたりは馬車の中で真っ赤になり緊張で黙ってしまった。





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