34キャサリン捕まる
「やめろ!キャサリン。やめるんだ。こんな事をしてどうするつもりだ。ばかな事はよせ!」
叫び声がしていきなり横から身体をがばりとつかまれて視界が暗転する。
キャサリンは通路の真ん中あたりに転がる。
一緒にもうひとり誰かがキャサリンを抱きかかえるようにして転がった。
数人の男が走り寄る。
すぐにキャサリンを捕らえそこから連れ出そうとした。
「いや!放して、もう、どうして…いやよ~」
キャサリンは泣き叫ぶ。
その横でキャサリンに飛びついた男だろうか声を上げた。
「皆さん祝いの席です。水を差すような事は忘れて下さい。彼女はすぐに連れ出しますので。改めまして、クワイエス侯爵家。シャルトル伯爵家。トリスティス子爵家の方々本日は本当におめでとうございます」
そう言ったのはブルーノだった。
彼は姉シルビアと共に結婚式のお祝いに駆けつけていた。
ブルーノはあんな形でキャサリンと別れたが彼女を放ってはおけなかった。
ひょっとしたらキャサリンが何かするかもしれないと不安になった。
親族関係者としてクワイエス領で行われる結婚式に出席すると言う名目もあった。だから万が一の事も考えてクワイエス侯爵家の結婚式に出席したのだった。
キャサリンは警護の騎士達に連れ出される。ブルーノも一緒について行く。
キャサリンはクワイエス騎士隊の本部に連れて行かれた。
本部は教会から数分のところにある。
取調室に連れて行かれて聴取を受ける事になる。騎士隊員が取り調べを行おうとしてブルーノがたずねた。
「あの…俺も同席していいでしょうか?」
「そうだ。あなた確かこの女を止めてくれた人でしたね」
「はい、彼女はキャサリン・バルブロ男爵令嬢で、ケネト殿下の元婚約者でした。もうお聞き及びの事ですよね?ケネト殿下の出目について」
「ああ、ケネト殿下の事はこちらにも…何でも国王の子供ではなかったとか、それでケネト殿下は平民になって辺境騎士隊に配属になったと聞いている。彼女が元婚約者?だが、どうしてこんなことをしたんだ?」
「はい、いろいろ事情は複雑でして…」
ブルーノはキャサリンの母親の事を話す。彼女は母親からクワイエスを恨んでいると言われ続け母親が亡くなった今でも彼女の中にはクワイエスを恨む気持ちが残っている事を。
そして自分は彼女の護衛騎士だった事も。
「それは気の毒だが、それとこれはまた別問題だ。悪いが尋問には立ち会わせることは出来ない」
騎士隊員はそう言ってブルーノを待たせてキャサリンに尋問をした。
「君はどうしてあんなことをした?」
「どうして?あの人たちばかりづして幸せになるの?私を見なさいよ。愛する人を結ばれるはずだったのにすべて台無しよ!それも全部クワイエスのせい。お母様が侯爵と結婚していたらこんな事にはならなかったのに…」
キャサリンは言い訳がましくそう言った。
「そんな事は理由にならん。わかっているはずだ。君は罪を犯した。処罰されることになる。それまで大人しく牢に入ってもらう」
「でも、傷つける気はなかったわ。ただ、悔しくてこらえいれなくなって…確かに悪かったわ。本当よ。申し訳ない事をしたわ。だからもういいじゃない」
キャサリンは牢に入れられると分かっておびえた。
「行動を起こした時点で君はもう処罰の対象になった。傷つける気が合ったとか言う問題じゃない。あのような場所で騒ぎを起こせばどうなるかくらい少し考えればわかるはずだ。おまけに君は貴族だろう?もう、悪かったですむ話ではないことくらいわかっているはずだ。覚悟を決めろ。いいな」
キャサリンは取り調べを終えると騎士隊の牢に連れて行かれた。
ブルーノも騎士の端くれ。こうなったらどうにもできないことは理解できた。キャサリンはただでは済まないだろう。そしてしばらくは牢に入れられることになる。
ブルーノは正式な手続きをした。
キャサリンの面会を申請してキャサリンに会いに行ったのだ。




