27今度は従姉妹様と一緒に結婚式?
数日後エルディは退院した。
診療所にはアンリエッタお姉様が来てくれた。
クワイエス侯爵家のタウンハウスはちょっとしたお祝いだった。
夕食には叔父様、叔母様。アンリエッタお姉様、エリク様にシルビア様まで、もちろんレオルカ様の時間に間に合うようにやって来た。
夕食は料理長が腕によりをかけたらしくターキーの丸焼きにパイに詰められたチャウダー。黄金色のコンソメスープ。仔牛のステーキに白身魚の香草焼きやら色とりどりのフルーツにその他もろもろ。
食卓ではワイングラスを片手にみんなでお祝いの言葉を受ける。
「「「エルディ。退院おめでとう!」」」
みんなからお祝いの言葉をもらうとエルディは立ち上がってお礼を言う。
「ありがとうございます。皆さんにはご心配をおかけして申し訳ありませんでした。でも、すっかり傷も良くなってこれもみなさんのおかげです。本当にありがとうございました。でも、叔母様いくらなんでもこんなに食べれませんよ~」
「いいのよ。料理長がたくさん食べて欲しいって作ったんだもの。さあ、みんな好きな物を食べて頂戴。乾杯よ。かんぱ~い!」
みんな一斉に手に持ったグラスを傾ける。
それを合図にみんながカラトリーに手を伸ばした。
エルディはお腹がはち切れそうになるほどごちそうを堪能した。
それぞれが思い思いに夕食を楽しんだ後アンリエッタが話を始めた。
「エルディ、実はね。私達明日にはクワイエス領に向かうことになったの」
「えっ?ああ、そう言えば3月にはエリク様が領地に行かれる予定でしたよね。私の為にごめんなさいお姉様」
「ううん、いいの。エルデイが良くなるまでは何も決めれないって思っていたから。でも、一緒に行く事にしたのは一度領地に行って結婚式の準備をして来ようと思ったからなの。もちろんエリクは領地で仕事があるから結婚式の準備は私がやることになると思うけど…それでね。考えたんだけど…エルディの結婚式もあっちで一緒に出来ないかと思って…ううん、あなたがルーズベリー教会で式を挙げたいって思ってることはわかってるのよ。でも、もし二人一緒に式を挙げれたらどんなにいいかなって思ったの。あっ、でもいいのよ。無理しなくて。ただ、ほんの少し考えてもらえたらいいかなって」
アンリエッタの肩は下がり声はだんだん小さくなって行く。
エルディは逆に目を見開き身体は前のめりになって行く。
「お姉様と一緒に結婚式ですか?それっていいんですか?ほんとに?私もクワイエス領の教会で結婚式したいです。明日出発ですか?叔母様私も一緒に行ってもいいですか?お姉様と一緒に式の準備なんて夢のようです」
すぐ隣に座っていたレオルカがエルディの腕を引く。
「エルディ…せっかくだが、まだ、無理は出来ないんじゃないか?明日出発はさすがに無理だろう?」
「でも…」
「エルディがそう言ってくれてすごくうれしいわ。でも、レオルカ様の言う通りよ。まだ無理は出来ないわよ。もし無理をしてまた結婚式の直前にでも倒れたらどうするつもり?いい?明日はまず私たちだけでクワイエス領に行って来る。教会は古い教会らしいけどすごく雰囲気がある教会なんですって。きっとエルディも気に入ると思うわ。だから予約をして日取りを決めて来るのはどう?私もしばらくは王都と領地を行ったり来たりになるんだし急ぐ必要はないわ」
エルディの顔に満面の笑顔が広がる。
あれほどルーズベリー教会で式を挙げたいって言っていた気持ちは吹き飛んだ。
「ええ、いいんですか?お姉様と一緒の結婚式なんて考えるだけでも眠れなくなりそう。それに古くて雰囲気のある教会って聞いただけで…ああ~胸が高鳴るわぁ。そうだ。レオルカ様もいいですよね?ご両親にはクワイエスまで来ていただくことになって申し訳ないですけど…」
エルディははしゃぎ過ぎたとレオルカの顔を見る。
レオルカはクシャっと表情筋を緩める。
「ああ、家族旅行だと思えば喜ぶさ。エルディがいいなら俺はどこでもいい。早ければ早いほどうれしい」
「じゃあ、決まりね。お母様、そういうことだから、忙しくなるわよ」
「ええ、そうね。エルディの招待状は一応怪我で延期と言うことになってるし、今度はふたりまとめてだから手間が省けるじゃない。でも、エルディも手伝ってね。ドレスは心配ないとして花やパーティの段取りはあちらの執事に頼んでおくのよ。まあ、とにかく日取りが決まらなきゃ始まらないから…アンリエッタ頼んだわよ。でも、準備に1か月は必要よ。それはわかってる?」
叔母様は冷静に話を進める。さすがだ。
「ええ、もちろんよ。お母様。じゃあ1か月くらい後のどこかって事で。いい?エルディ」
「はい、もちろん」
エルデイの気持ちはアンリエッタお姉様と一緒の結婚式へと一気に膨らんだ。




