23キャサリンの心中
キャサリンは部屋で一人待たされた。
扉の外には見張りが立ち逃げ出せることは出来ないとはっきりわかった。
キャサリンはケネトを愛していた。
確かに色々な男に愛想を振りまいて男達から優しい声を掛けられることはすごく楽しかった。
だが、一線は引いていた。キャサリンのこだわりは男と関係を持たない事だ。
それは常々ケネトにも話しているし彼を愛していることも伝えている。
だからお茶や買い物くらいは他の男といくらでも付き合うし愛想笑いだってする。
高級な食事もしたいし、高いアクササリーだって欲しかった。ただそれだけだった。
でも、実際はケネトはそんなにお金持ちではなかったし、王位継承権もない。王族ではあるがくじで言えば外れくじのような存在だった。
でも、キャサリンはケネトが好きだった。
ケネトが父の為に金を用立ててくれている事にも感謝していたし彼だけが信じれる唯一の存在でもあったのだ。
だが、今回ケネトにエルディにしたことを咎められて腹を立てて男爵領に戻った。
父には結婚式を挙げるつもりだと手紙を送っていて大層喜んでいて式の準備について話をしようと言って来た。
その腹の中は金の計算で忙しかっただろうが。
そんな時、キャサリンは母親アミルの日記を見つけた。
それを読んでキャサリンは衝撃を受ける。
そしてすべてを知ることになった。
母親のアミルはキャサリンが子供の頃からずっとクワイエス侯爵家を恨んでいることを言い続けて来た。
学園に入ってケネト殿下とアンリエッタの婚約を壊すこともすべて母親のアミルのためだった。
だが、ケネトと言う人間を知って行くほどキャサリンはケネトが好きになって行った。
ケネトは自分の立場を理解していたしそれについて不足を言うような人ではなかった。
前向きで何よりキャサリンの事を一番に思ってくれた。
ちょうどその頃母親のアミルが馬車の事故で亡くなった。
母の死は辛かった。
ケネトがずっとそばについて慰め力になってくれた。
だからなおさらキャサリンはそのままケネトと付き合い続けた。
だが、幼いころから植え付けられたクワイエス侯爵家が憎いと思う感情はずっと心の奥にくすぶっていた。
特にエルディがクワイエス侯爵家の人間だと言うこともキャサリンの憎しみを煽らせ結婚式を邪魔して自分が結婚式を挙げようと思ったのも必然だったのかもしれない。
ブルーノは堅物で強面でちっとも面白みがない。キャサリンの好みではなかった。
でも、姉のシルビアがクワイエス侯爵家の嫡男と婚約していることでブルーノを誘惑して醜態を晒させればクワイエス侯爵家を困らせることが出来るのではないかと思った。
だからブルーノを誘惑してその気にさせるのは簡単な事だった。
今ではそのブルーノを追い払うことに苦労しているのだが…
母親アミルの日記を見つけたキャサリンはそれを読んでしまった。
後悔してももうおそかった。すべてを知ったキャサリンは失意の底に落ちた。
そうしてやっと数日前王宮に戻って来たのだった。
ケネトに別れを告げるためだった。




