21ケネト殿下捕まる
その頃騎士隊員は教会の近くを探し回ってケネトを見つけ捕まえたところだった。
ケネトは教会を出た通りをふらついていた。手にはまだ血の付いたナイフを持っていた。そのナイフは騎士隊員に支給されているものだった。
レオルカが隊員と合流する。
ケネトの顔を見て彼の脳細胞がぶちぎれる。
いきなりケネトの胸ぐらを掴み上げる。
「おい!ケネト!お前わざとエルディを狙ったんだろう?結婚式をやめさせたくてこんな事をしたのか?言えよ!」
さっきアンリエッタが言ったことなど頭にはなかった。やっぱり。何かしてくると思ってたんだ。そんな思いが脳内で渦巻く。
ケネトの首をぎゅうぎゅう締め上げて問い詰める。
「た、隊長。く、苦しい。放してく…」
慌てて隊員がレオルカを止めに入る。
「隊長!話を聞きたいなら放した方が…」
「くっそ!」
レオルカはケネトを突き飛ばすように突き放す。
肩を怒らせケネトに問う。
「ケネト。キャサリンはどこだ?お前ら結婚式のためにエルディを襲ったことはわかってるんだ」
「お前らの結婚式だって?笑わせる。俺達は別れたんだ。結婚式に用はない!」
「どういうことだ?」
「それは個人的は事だ。お前には関係ない事。早く連れて行けよ。アンリエッタにもう一度婚約を頼んだだけだ。なのに。くっそ!まさかエルディが…彼女が庇ったせいで刺す気なんかなかったんだ!」
「言い訳はいくらでも出来る。だが、エルディがけがをすれば結婚式は取りやめ田。そうなれば式場を使えるよな。キャサリンを引き留めるためにわざとエルディを狙ったんじゃないのか?」
「ああ…その手があったな。だが、俺はそんなことまで考えが及んでいなかった。あれは不可抗力で起きた事で…」
「とにかくお前にはエルディを刺した罪は償ってもらうからな」
「ばかか。俺は国王の息子なんだ。そんなこと出来るはずがないだろう」
いつの間にか数人の騎士がいた。
「いいからケネトを連行しろ!何があっても釈放はしないからな。わかったか。キャサリンはどうした?」
「はい!キャサリン様は王宮にいるようです」
騎士隊員がケネトを連れて行く。
レオルカはそれだけ言うと先に王宮に急いだ。キャサリンにも事情を聞く必要があるからだ。
(エルディすまん。守ってやれなくて…キャサリンの思い通りには絶対させないからな)
王宮に入ってキャサリンに会いたいと近衛兵に言う。
すぐに伝言を伝えてもらいキャサリンが護衛騎士のブルーノを連れて現れた。
いや、ブルーノは嫌がるキャサリンに無理やりついて来たという感じがした。
レオルカは近衛隊の詰め所で話を聞く事にする。
キャサリンはレオルカを牽制する気なのか部屋に入るなり「あなたは?」と冷たい声を浴びせた。
「知ってるはずだ。俺はレオルカ・トリスティス。騎士団第5小隊。隊長だ。エルディの婚約者と言った方がいいか?」
「ああ、それで何の用なの?」
ブルーノが代わりに俺がと前に出ようとするが構わないでと言うようにブルーノを手で制する。
「エルディが刺された。犯人はケネト殿下だ。心当たりは?」
「知るもんですか!」
キャサリンはつんと顔を反らす。
そこにブルーノがたまらず割って入る。
「レオルカ隊長。実はキャサリン様はケネト殿下に別れを伝えたんです。それで殿下はやけになってそのような事をされたのではないかと」
「どういうことだ?わかるように話してくれ」
「はい、キャサリン様はルーズベリー教会で式を挙げたいと話していたことはご存知ですよね?エルディ様を傷つければ結婚式は先延ばしになって明後日には式場が確保できます。そしてキャサリン様とよりを戻せると思われたのではないかと…」
「ああ、だが、実際はケネトがアンリエッタとの復縁を申し出て断られてナイフを取り出したところへエルディがアンリエッタを庇って怪我をしたってわけで。最初からエルディを狙った訳じゃなさそうなんだ。だからわからないんだ。キャサリンあなたと別れたって。やっぱり噂通りブルーノが本命って事なのか?」
レオルカはますます混乱する。
ケネトはキャサリンと別れたという。
ブルーノもケネトとキャサリンが別れたという。
だが、キャサリンはブルーノに触られるのも嫌だと言う態度だ。
(おい、一体どういう事なんだ?)




