20エルディ治療を受ける
ドミール神官が駆け付けて教会の裏手にある診療所から医者が走って来た。そこに騎士隊も入って来た。
一番に駆けつけたのはもちろんレオルカだった。
「何があった?エルディが怪我をしたって…くっそ!大丈夫か、エルディ、おい、しっかりしろ。俺が連れて行く」
「まあ、待ってくれ。止血をするまで動かすな。騎士隊ならそれくらいわかってるだろう」
ぶっきらぼうに声を荒げて医者が言う。 「わかってる。でも、彼女は俺の婚約者なんだ。冷静でいられるわけがないだろう。それで先生。エルディは助かるんだろう?」
「ああ、刺されたのが腕で良かった。だが傷が深い。縫わなきゃならんだろうな」
「ああ、エルディ可哀想に…クッソ。俺がついていながらみすみすこんなことになって…」
レオルカは悔しそうに床に拳を打ち付けた。
「アンリエッタ。それで犯人は見たのか?」
「犯人はケネト殿下よ」
「はッ?ケネトだって?」
「そうよ。ケネト殿下は私とまた婚約したいって言ったのよ。断ったらナイフを持っていたらしくって…エルディが私を庇って…もう、エルディったらばかよ…」
アンリエッタはエルディの髪をそっと撫ぜる。
「お姉様が無事で良かった。光るものが見えたと思ったら危ないって勝手に身体が動いてたの」
「「「エルディ…」」」
アンリエッタも叔母もレオルカもそんなエルディがたまらなく愛しいと思う。
「すぐに診療所に運ぶ」
医者がそう言うとレオルカがエルディを抱き上げた。
「俺が運ぶ。おい、騎士隊員はケネトを探せ。いいか絶対に逃がすんじゃないぞ。俺もエルディを診療所には混んだらすぐに行く。頼んだぞ。あっ、それからキャサリンも探せ。いいな。しくじるんじゃないぞ」
レオルカの目つきは猛獣のような気迫で、今にも飛び掛かるような勢いで騎士隊員に指示を飛ばした。
「「「はい!」」」
騎士隊員は声を張り上げそれに応える。そしてすぐに走り去った。
診療所に運ばれたエルディは処置のため一度みんなと離れるがレオルカだけはエルディのそばを離れなかった。
処置室のベッドに横たわるエルディにレオルカが跪いて彼女の怪我をしていない方の手を握り締める。
「エルディこんな事になってごめんな。痛いだろうが少し辛抱してくれよな」
「ううん、レオルカ様のせいじゃないのよ。気にしないで」
「エルディ…手当てが終わるのを待ってるから…さあ、レオルカ様も手当てが出来ませんから…」医者が言う。
手当てが終わりエルディは処置室から運び出される。もちろんレオルカがエルディを抱えてベッドに運んだ。
エルディは数針縫ったが心配なはいらしい。処置のため眠らされたのでまだ眠っていた。
「エルディ…」
レオルカはそんな彼女の額に溜まらないと言わんばかりにキスを落として「ケネトを取っ捕まえたらすぐに戻って来るから」そう囁いた。
「エルディをお願いします」
「ええ、エルディは任せて、レオルカ様も気を付けて」
叔母のマリアンヌがそう言った。アンリエッタとドミールもうなずく。
レオルカは頭を膝に着くほど下げると騎士隊員の所に戻った。




