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「お兄様、大丈夫です」
お兄様の目を見る。
「そうか……軽いんだな?」
アレルギーが軽いなら少しの間なら大丈夫だと兄は解釈したようだ。
「リリーシャンヌ、どうか、私と結婚してほしい」
手を取ったエミリーが皆の前で私にプロポーズの言葉を口にした。
お兄様とローレル様は少しだけ私たちから距離をとって見守ってくれている。
はじめは断ろうと思った。
それから覚悟を決めて受けようと思って。
この会場には諦めようと思って来た。
そして、今は……。
「はい……喜んで……」
エミリーがいない人生なんて考えたくないっ。
記憶を失って、エミリーが死んじゃったと思ったあの悲しみを味わったからこそ。
エミリーが生きてたんだもの。もう、ぜったい、自分からエミリーから離れようなんて思わないっ!
正直、私に皇太子妃が務まるのかとか、王妃に相応しいのかとか色々と考えてしまうけれど……。
「リリー!」
シェミリオール殿下が私の手の甲にキスを落とすと、立ち上がって私を抱きしめた。
耳元でエミリーの言葉が聞こえる。
「嬉しいわリリー。ごめんなさいね、記憶を失っていてずいぶん迷惑をかけちゃったわね……私が好きなのはずっとリリーだけよ」
私だけに聞こえる、シェミリオール殿下ではないエミリーの言葉。
「今日も飛び切り可愛いわ。もう、本当に、今すぐ食べちゃいたいくらいっ」
ああ、エミリーだ。エミリーだ。私の大好きなエミリーだ。
「殿下っ!やめてください、リリーを離してくださいっ」
お兄様が私と殿下を引きはがそうと殿下の肩をつかみ、ローレル様が私と殿下の間に腕を入れて、私をきゅっと抱きしめた。
「大丈夫リリー?」
ローレル様が私のことを心配してくれるのが嬉しくて、ローレル様にぎゅっと抱き着いた。
「ロバート、さっき婚約者でもないのにと言っていたが、プロポーズをして受け入れてもらったから、もういいだろう?」
殿下の言葉に兄がキッパリと口を開いた。
「私は、元婚約者であるエカテリーゼ嬢にたいして、人前でも一目の無いところでも抱きしめるようなことはしませんでした」
「ロ、ロバート……」
シェミリオール殿下が複雑な表情を見せた。
「まぁそうだな。いくらプロポーズをしたからと言っても、正式に婚約するのは陛下や宰相殿の許可を得て、神殿での手続きを経てからとなる」
ロイホール公爵がさっと右手を上げると、音楽が鳴り始めた。
「さぁ、今日の主役が踊らなくては他のものも踊りにくかろう」
髭を撫でながらニコリと笑うロイホール公爵に背中を押された殿下が、私に手を差し出した。
「1曲お相手していただいても?」
「もちろん」
2人で手を取り合ってダンスホールの中央へと歩み出る。
すぐに、心配そうな顔をしたお兄様の腕をローレル様がつついた。
「お相手をお願いします」
慌ててお兄様がローレル様に手を差し出した。
「はい」
と、ローレル様が受けると、私たちの近くにやってきた。
「殿下、リリーは体が弱いんだから、無理をさせないでください」
「リリー、気分が悪くなったらすぐに言うのよ?相手が殿下だからって遠慮することないわ」
2人が踊りながら私たちに声をかけてくれた。
ああ、私は何て幸せなんだろう。
心配をしてくれている二人に、エミリー……いいえ、シェミリオール殿下はアレルギーが出ないと伝えなければ。
どんな顔をするかしら?
ああでも、殿下の秘密は明かせないわよね。
可愛い物が好きということも内緒よね、きっと。
私は、この時、エミリーとお兄様とローレル様と、その周りでくるくる花のように回るドレスに囲まれて、夢の中にいるようだった。
第一分完結!と書いて、第二部なんてあるのか?ときょどるとまと。
続きがかけたら書きたい!いや、もうエミリーってば、実は狼さんだから。リリーは気が付かないけどね!っていうのと、ローレルと兄の話とかさぁ。女性に対する扱い方改革とかさ。
色々かきたいんだけれど……そのうち、かけたら……と言う感じでしょうか。
とりあえずの円満完結。
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