6.食料事情
光石も取れたし、これを照明にしやすいようにカットしていくことにする。
「刃の記録:短剣」
短剣を作り出し、それを使って楽々と切り出していく。ま四角になるようにしていくが、少しずれたりする。まぁ、そこが味があるとか思えば………うん。手直しがめんどいからいいや。
それで、切り出している間に気づいたのだが、洞窟内の一部の石の情報を、光石と入れ換えれば早かったんじゃないか?
気づけば日が落ちていて、周囲をオレンジ色に染めていた。
「まぁ、とりあえずいいか。さっさと取り付けよう」
「僕も手伝うよッ!」
アーサーにも手伝わせて、洞窟を、寝る場所以外が満遍なく明るくなるように、等間隔に埋め込んでいく。
光石は込められた魔力量によって光量が変わるらしい。これなら、魔力量の情報弄って自由自在に光量調整出来そうだな。
「あー腹減った」
「何時間も作業したからね」
「疲れた。焼き魚でいいよな」
「それぐらいしか作れないしねッ!」
まぁ、簡単だしな。
途中、疲れすぎて毒を無くすのを忘れていたが、食べた後でも別にいいかと思った。
しかし、口にいれた後、そういや即効性の毒持ってる奴とかいたっけ? と思い、慌てて毒の情報を消した。
「あー眠い」
「そうなのかい」
「ゾンビに限界はないのか」
「ないよッ! 否、僕に限界がないのさッ!」
あぁはいはい。アーサーは無視します。とりあえず、寝るか………と思ったが、俺自身の情報を疲れる前にするとか、元気溌剌にするとか、そうすれば疲れが吹き飛ぶか
しかし、それでも眠いんで寝ます。
そんなこんなで異世界三日目。
どうもおはようございます。
「んで、この状況はなんだ?」
「見事に囲まれてるねッ!」
朝起きて、顔を洗いに洞窟から出ると、洞窟を囲うようにして豚の頭をした奴ら、そう、オークの軍勢がいたのだ。
まったく勘弁してほしい。いくらモンスターのいる森の中で暮らしてるとはいえ、起きて早々豚頭のオークなんて見たい人間はいないだろう。っていうか、いったいぜんたい何匹いるんだ? 数えるのが億劫になる。
「で、お前は夜の間何してたんだよ」
「最高にカッコいいポーズの練習をしていたら、いつの間にか朝になっていて、気づいたら囲まれていたんだよ」
「よし。後で顔面キックの刑な」
「酷いッ!? それはあんまりじゃないか」
「うるさい」
朝起きてばかりで辛いのに、大声出すなよ。イライラが募っていたためか、俺の体は勝手に動いてアーサーの顔面に蹴りをいれていた。
ちょっとスッキリ
「ググググ。俺様ノ名ハ、オーギュスト。コノ森ヲ統ベルオーク・キングダ」
「へぇー、“名持ち”なんだ。それで高レベルのハイ・オークを従えているんだ」
「“名持ち”?」
「モンスターの中には、ごく稀に“名持ち”と呼ばれる、強大な力を持った存在が現れることがあるんだよ。共通するのは、名前を持っているということ、だから“名持ち”」
「あっそ」
正直どうでもいい。こちとら寝起きで機嫌が悪いんだ。“名持ち”だかなんだか知らないが、このままじゃ顔も洗えないので、さっさと退場してもらおう。
斬って倒したら周りが血生臭くなるな。なら、焼き消すか。
「炎の記録:地獄の黒炎」
冷めた声で淡々とそれだけ告げる。
真っ黒な文字群がオーク達に飛んで行き、その超高温の炎の情報が、一瞬でオーク達を消し炭にする。理解が追い付くより早く、何が起こったかさえ分からないまま、オーク達は消えた。
“名持ち”だろうがなんだろうが、俺の攻撃の前では羽と足をもがれた虫同然だね。さぁって、顔洗おっと
「………さらっと倒すね。“名持ち”のオーク・キングって、一国が命がけで戦うレベルなのに」
アーサーが何か言ってるが、倒せてしまったものは仕方ない。
「そんなこと言うが、お前だって一人で倒せるだろ?」
「まぁねッ! でも、そんな“存在”はこの世界でも少ないけどねッ!」
いやぁ? 案外そこら辺にいるかもしれんぞ。実力を隠して暮らしていたり、暗殺系の能力持ちとかなら気づかれずに殺れたりするだろうし、工夫すれば攻撃力が弱くても毒とかで倒せるだろうしな。
少し焦げ臭いが、“消臭”の情報を使ってリセットしておいた。
「うーん。やっぱり分布がおかしくなってる」
「そうなのか?」
「うん。オーク・キングはたまに出るし、“名持ち”だって珍しいけど異常じゃない。けど、ハイ・オークを何体も連れているのはおかしい。多くて、四、五体のハズだよ」
「そう考えると、確かにおかしいな」
おかしいはおかしいが、調べるつもりはない。調べようと思えば簡単に分かるだろうが、面倒だし何か起こってもなんとか出来るだろうから、当面は調べるつもりはない。
いや、やっぱ調べたほうがいいかな? いやでもめんどいし………
とりあえず、朝食にしよう。
「魚にも飽きそうだな、このままだと」
「そうだね」
肉食べたい。後、野菜も食べたい。といっても、あるのは山菜ぐらいだし………テンプラ食べたい。
「オークの肉なんてどうかな?」
「豚肉はいいけど、オーク肉は勘弁するわ」
オーク肉って美味しいのか? いや、多分不味いだろ、不味いハズだ。だって、あのオーク肉だよ? オークだよ?
でも、豚と言われて思った、猪なら食べられると、猪鍋とか作ろうと思えば作れるハズ………あ、調味料とかないわ。
「それよりも、ここらへんに野菜とかないのか?」
「山に自生してるとしても、僕は野菜には詳しくないからね」
「地道に探すしかないのか……」
一度見れば直ぐに分かるけれど、探すためにそこら中探さなきゃいけないからめんどい。
採取した山菜も、調理しなきゃ食べられないような物しかない。水で洗えば食べられるような、レタスとかキャベツみたいな、しゃきしゃきした野菜を食べたい。
「やっぱ、探すしかないか」
「僕も手伝うよッ!」
「いやお前が持ってこようとすると、全部毒な気がするから止めて」
「心外だよ! 僕だってやる時はやるんだから。ちょっと待ってて」
そう言うが早いか、光輝く残像を残して消えていくアーサー。ありゃ多分、能力使ってるな
残りの魚を食べて、デザートの果物も食べていると……
光を纏いながらアーサーが帰って来た。そしてその手には、見た目はキャベツだが黄色い食べ物がある。
「ほら!」
「………」
凄く自身満々だが、真実を告げてやろう。
「………それ、即効性で致死性の毒持ってる」
「ええっ!?」
物凄く驚いてショックを受けているようだが、さらに酷な情報を伝えなければならない。
「しかも、激マズ」
地面に膝と手をつきorzのポーズをするアーサー。激マズだがら、俺の能力で毒なくしても食べられないんだよなぁ。
うん。ドンマイ




