10.帝国撃退
途中で視点変わります
「………来たか」
住んでいる森の中、俺は連中を来たのを察知して、立ち上がる。帝都での情報収集の結果、脅威になるような奴はいない事が分かった。面倒そうなのはいたが、今回当たる事は無いと思うので、気にしなくていいだろう。
さてと、配置についたアーサーと骸骨団長の方にも、何人も向かって行っている。向こうは、向こうに任せて此方は此方の仕事をしよう。
「さてと………何に手を出そうとしてるのか、分かってもらいますかね」
此方に向かってくるのは暗殺に特化した構成の奴ら、とりあえず、殺気バリバリで出迎えるとしよう。
ふむ。二人来たか。
俺の後ろから首に向けて2つの凶刃が迫るのを、気配で感じとる。他にも複数人いるが、俺を無視するようだ。転移を使い、俺を無視した者達の前に現れる。
「おい、人の領域に入っといて何逃げようとしてんだよ」
「魔人……」
今回は、魔人であることは隠さない。なんせ、王国の敵国だからな。さてと、二度とここに攻め込まないように、圧倒的な差を見せつけて殲滅するべきだが………
まぁ、“魔王拳”で倒せばいいだろう。“真・魔王拳”は強すぎるからな。
手に、【魔王紋】を発現させる。
「こいつ! 黒い力を使えるのかっ!?」
「油断するな! こいつはかなり強いぞ!」
黒い力って【魔王紋】の事か? そう読んでる連中もいるんだな。まぁ、確かに発現させた場所が黒くなるけど。
さぁ、さくっとやってしまおう。とりあえず、一番近い所にいた奴に一挙動で近付き、殴り付ける。あり得ない勢いで吹き飛んだ暗殺者は、ぶつかった衝撃で木を倒して止まった。
死んでないみたいで良かった。手加減まだ上手く出来ないんだよな。
「くっ! なんでこんな奴がこんな所に――――」
轟音と閃光。ここからそう遠くない場所で、大気を振るわせる衝撃と、目も眩むような光の爆発が巻き起こった。アーサーの奴、いくらなんでも派手に戦い過ぎだろ。
しかし、以前来た魔人とホムンクルス、それにモンスターの大群より弱いから、思ってたよりも早く終わりそうだな。骸骨団長達はかなりの数の敵と戦ってるみたいだけど、そういう戦いは得意だと言ってたから、大丈夫だろう。
「何人で攻めてきたか分かってる。俺達から逃げられると思うなよ?」
さぁ、王国を守るために、恐ろしい魔人になりますかね。
◇
「我らの出番なのである!」
レツ達の暮らす森の一角で、骸骨団長率いる骸骨騎士団は、これから来る軍勢を迎え撃とうとしていた。
数百年前、偉大なるラグナレスと謳われた国の聖騎士団だった彼ら、とあるダンジョンの探索の末、骸骨の姿になってしまったが、数百の時を越えて魂が活性化し、骨人族として活動出来るようになった。
彼らは、集団戦闘を得意とする―――――否、集団戦闘において最も力を発揮する騎士団だった。
「では、始めよう。“我が力を勝利がため与えよう”」
骸骨団長と呼ばれる彼が持つのは、世界の根源たる神にも届く力。
≪アーキタイプアビリティ≫が一つ、【万騎従えし栄光の一騎】
多人数を従える戦闘において、最も力を発揮する能力である。その権能は、自身の持つ力と技術を、従える者、または仲間と認めし者に分け与える力、そして、仲間達の意識を繋げる力、そして仲間達を鼓舞する力等、他者と共に戦う事に重きをおいている。
しかし、この能力はそれだけではない。万の騎士がこれを持つのではなく、ただ一人の騎士がこれを持つのである。その意味は―――――
「いざ、参る!」
骸骨騎士団が、帝都の兵達に向けて突撃する。
「なんだあいつらは!」
「スケルトンか!?」
「光魔法を使え!」
骸骨騎士団の面々に向けて、光の矢や槍、光線等が飛んでいく。死霊系の魔物の弱点は、光属性と聖属性である。故に、骸骨騎士団の面々に向けて、帝国の騎士達は光魔法による攻撃を行った。
しかし―――――
「無駄!」
光魔法による攻撃を受けても、骸骨騎士団は止まる事は無かった。そもそも、彼らはスケルトンではない。
「我らは不浄なるアンデッドではなく、強き魂を持つ骨人族である! 聖も光も無意味!」
アンデッドと呼ばれる魔物ではなく、死した後に転ずる種族の一つである骸骨騎士団は、魔法に対する驚異的な耐性と、毒等の身体状態異常の無効化、そして呼吸を必要としないという特性を持っている。
帝国の兵達は、襲いかかってきた骸骨騎士団に応戦するが、なすすべもなく倒れていく。
さもありなん。彼らは、騎士団長の力と技術の一部を与えられている。その強さは、単騎で竜を軽々と狩れるレベルだ。
「ふはははははは! 我らは無敗の軍勢である! 我が力と技術を扱う部下達に、一太刀も浴びせられないとは……拍子抜けである!」
一騎当千の存在が数十人。
たった数十人の騎士団で、かつて数万の軍勢を撃ち破った彼らに、百程度の集団が勝てるわけが無かった。
こうして、レツ達の行動によって、帝国による王国襲撃は終わったのだった。
◇
「「お疲れー!」」
ジュースの入ったコップを合わせたミラとユフが、楽しそうに笑う。帝国兵を追い返すのに成功したので、宴会になった。
なんでだよと思ったが、楽しそうなので良しとしよう。うん。
さて、骸骨団長の≪アーキタイプアビリティ≫が活躍したそうだが、軍団強化系? ちょっと違うようだけど、そんな感じらしい。
「お疲れレツ君。これで、暫くは来ないだろうね」
「だといいがな………それよりも」
話しかけてきたアーサーに、俺は気になった事を話してみる事にした。
「誰かに見られてた気がした」
「それは僕も感じたよ。骸骨団長もね」
「この森、何かいるのか?」
「さぁ………全貌を把握してる訳じゃないからね」
願わくば、何もして来なければいいんだけどな。
帝国撃退の達成感を感じると共に、感じた視線に少しの不安を覚えるのだった。
次からは、別の章に入ります。今回の件で、森に住むとある種族が動き出します




