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8.帝都











何処かから怒号や悲鳴が聞こえる。木々を足場にして、森を突き進みながら、前方より少しだけ左の方からする音に意識を向ける。誰かが何かと戦っているのだろうか? マップで確認してみると、モンスターと人の反応が幾つか………放ってもおけないので、そちらに向かうことにした。


行ってみると、冒険者らしき、剣を持った少年が二人と、杖を持った少女が二人いた。少年二人はモンスターによって、体が傷つき、血を流しているがそれでも戦っている。少女の方は、片方が気絶しているのをもう片方が介抱しているらしい。


モンスターは安定のオークだ。まぁ、一匹だけだが。



「くそっ!」


「俺達が時間を稼ぐから逃げろ!」


「嫌っ! 皆一緒じゃないと! 誰か助けて!!!」


「呼んでも誰も━━━」



助けを呼んだ事だし、助けますかね。枝から飛び上がると、後ろからオークの頭を槍で貫く。オークは、そのままの勢いで地面へと倒れ込み、俺は槍を離して着地した。オークが死んでいる事を確認して、頭から槍を抜く。



「え?」


「は?」


「運が良かったな」



くぐもった声で呆けた表情の三人にそう告げる。少女の方は、若干怯えているようだ。まぁ、この帝国に来る上で、俺とバレないように色々変えてるからな。先ず、厚めの衣服に、ボロボロのフード付きマント、黒いパルチザンを装備している。そして、顔には金属質の無地の仮面が付けられている。俺の能力で、仮面の下は他者からは焼けただれた顔に見えるように、仮面に効果を付けてある。声も、仮面効果でくぐもって聞こえるので、大丈夫だろう。


いやまぁ、ここまでしなくてもバレないとは思うんだけど、念には念を入れてって事でね。



『此方、コードネーム華麗なる蒼き輝き。早速人助けかい?』


『此方、コードネームグレイトボーン・ナイト。流石は黒き掌握者なのである』


『遊ぶな阿呆』



アーサーも骸骨団長も、完全に遊んでいる。恐らくだが、この前見せたゲームの実況のせいだな。現在仲間うちでは、コードネーム呼びが流行っている。俺は参加していないのに、“黒き掌握者”とかワケわからんコードネームを付けられていた。


この機能は、結構頑張った。この仮面を通して俺のスマホに俺が見ている物と声を届け、かつ向こうからの声を俺だけに聞こえるようにしてある。相も変わらず、【情報の支配者(ワレハスベテナリ)】はチートにも程がある。流石に無理だろう効果とかも、法則をガン無視して発揮させるのだ。便利だが、ヤバい能力である。



「あ、えっと、助けてくれてありがとうございます」


「偶然通りがかっただけだから気にするな。では、俺はもう行かせてもらう」


「あ、ちょ!」



こういう感じで行くことにしてるんだ。すまないな少年!



『何も言わずに去っていくヒーロー。カッコいいね!』


『変な仮面をしていなければ、恋に落ちる娘がいてもおかしくないのである』


『うるさい』



なんかアドバイスをもらえるかもとこの機能入れたけど、こいつら使える気がしないな。まぁ、変に緊張しなくなるかもしれんけど………


少年少女冒険者達と別れて暫く走ると、森が終わり街道に出た。ここから道なりに進めばいいのか。走って街道を進む。途中、旅人らしき人や冒険者、商人の馬車等を追い越した。


そして、目的地が見えてきた。高くそびえる赤い壁と、大きな門。あれが、帝都か……


帝国、名前は無くただ帝国という名称らしい。特徴は、強力な軍事力を持っているということと、7年ほど前から周りの国を侵略しようと、戦争を起こしまくってるらしい。



「赤い城壁………」


『赫鋼と呼ばれる、帝国周辺で取れる特殊鉱物だね。硬度は並の鋼を超えるし、魔力を吸収することでさらに硬度を上げるよ』


『武器に最適。さらに、魔法を受けても硬度が上がるので、城壁にも盾や鎧にも使えるのである』



成る程。かなり優秀な鉱物みたいだな、恐らくだが国で鉱脈を確保して、色々な武器や兵器を作るのに使っているのだろう。かなりの軍事力を持っているというのは、本当だということが分かった。


まぁ、それはどうやら普通の人の感覚らしい。



『オリハルコンの方が優秀だけどね』


『アダマンタイトや日緋色金を使った方がいいのである』


『伝説級の金属をホイホイ使えるわけないだろ』



そんな金属が使われてたのは、お前らの生きていた時代くらいだよ。因みに、例によってアーサーと骸骨団長達の装備は、殆どが伝説級の素材で作られている。


能力も規格外なのに、なんで武装まで規格外にしたんだよ。



『あんな壁くらい、“魔王拳”で砕けるでしょ?』


『然り然り。レツ殿なら巨大な風穴を開けられるのである』



俺ら基準で進めるなよ。確かに、“魔王拳”なら簡単に砕けるだろうし、そもそも俺の能力を使えばただの鉄にしたり、土にしたり、粘土にしたりも出来るしな。因みに、流石に植物とかには出来ない。種別は超えられないのだ。


暫く見た後、門へと向かう。


門の前には人が並んでおり、馬車なんかもあった。周りからチラチラと見られているが、気にせずにいる。ボロボロのマントに仮面の男がいたら、そりゃ注目するわな。


俺の番がやって来たが、門兵に警戒されている。まぁ、仕方ないか。



「……身分証はあるか?」


「コレでいいか?」



懐からギルドカードを出して見せると、納得したような表情をして警戒を解いた。冒険者には、こういう格好の奴が多いんだろうか?



「その仮面を取ってもらえるか?」


「別に構わんが、これは焼けただれた醜い顔を隠すためだ。まぁ、どうしても見たいと言うなら……」


「いや、いい」



言いながら仮面を少しずらして、焼けただれているであろう肌を少し見せると、門兵は表情を歪めて言っていいとジェスチャーをした。


俺は仮面を戻し、少し会釈してから中に入る。


中に入ると、赤が飛び込んで来た。街並みが赤いのだ。



「赤いな……」


『帝都はレンガが主流なんだ。なんか、色んな所で赤を主張してるよね』


『そこまで赤を主張して何をしたいんであろうか?』


『俺が知るか』



とりあえず宿を取るかと、進んでいく。


が、なんか何処も嫌そうに断られてしまう。この容姿のせいであろうか? そこらにいた人に何処かいい場所が無いか聞くと、面倒くさそうに西街にいい所があると言われた。


しかし、この西街完全にカタギじゃない奴らの場所じゃねぇか! でも、今の俺全然違和感無いな、まぁ、元の俺も魔人だから違和感無いけどな。


宿らしき物があったので入ってみたのだが、受付にいたのはだらんとしたやる気の無さそうな少女だけだった。



「泊まりたい。いくらだ?」


「一泊銀貨三枚」


「とりあえず、10日だ」



受付に銀貨30枚の入った袋を置く。少女は先程までだらんとしていたのが嘘のように、凄い速度で袋を奪い取ると、ニヤニヤと袋の中身を数え始めた。そして、銀貨が30枚あることを確認すると、「丁度ね」と言って、鍵を投げ渡して来た。


部屋に移動して、ベッドに腰かける。さぁて、ここから忙しくなるわけだが、先ずはどうしようか。



『お前ら、何かツテある?』


『無いよ』


『無いのである』


『………思ったより時間かかるかもな』



まぁ、いざとなったら城に侵入すればいいか。





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