5.ユノとのデート再び?
子供は朝から元気だと思う。何故なら、今ここにいる二人が元気だからだ。
「朝ー!!!」
「朝~」
朝起きて早々ベッドの上で跳び跳ねる二人。何がそんなに楽しいのかね。とりあえず、他の人の迷惑にならないように、防音の魔法結界は張っておいた。
さて、奴隷商人問題も、予想とは大分変わってしまったが解決したし、今日は何をするかな。
うーん。買い物ももう終わったし、今日は観光でもするかな、この都市をまだまだ見て回ってないし
「二人共、朝食食べたら都市の散策するぞ」
「散歩!? わーい!!」
「わ~い!」
二人を連れて一回に降りて、ささっと朝食を済ませてアルマを観光するために、人がまばらにいる街道へと足を進める。
さて、何処に行こうかな。とりあえずは、前に来た時に見れなかった王城を見に行こうかな。二人を連れて、他の人には見えないマップを見ながら王城を目指す。
道中で屋台で売っていた旨そうな料理を買って、端に寄って三人で食べる。
「はぐむぐ。美味しっ。むぐはぐ」
「美味しい~」
「意外といけるな」
両手に肉串と魚串を持ったミラとユフは、交互にバクバクと食べていく。俺はというと、コウモリの羽を甘辛く煮込んだ物を食べていた。歯ごたえがあり、肉の旨さも中々のものではまりそうである。今度コウモリ見つけたら作ってみようかな?
買った物も食べ終わり、さぁ城に行こうかと思ったら、「あ……」という声が後ろから聞こえてきて、思わず振り替えると━━━
「ユノ」
「ギルドにいたお姉ちゃんだ!」
「ほんとだ~」
━━━ユノがいた。
今日はギルド休みなのか、ノースリーブの淡い水色のワンピースに、白いストールを羽織っている。そして、綺麗な瞳をまん丸くして此方を見ていた。
ミラとユフが笑いながら無邪気に近づくと、ハッと正気に戻ったように、「おはようございますっ」と挨拶して来た。
「おはよう。今日はギルド休みなのか?」
「は、はい! 丁度! 運よく! 休みでした!」
「? そうか」
言い回しがなんか気になるけど、まぁいいか。ミラとユフに左右から抱きつかれて、ニヨニヨと嬉しそうにはにかむユノ。子供が好きなのかな?
ユノにこれから王城を見に行く所だと伝えると、前回案内出来なかったので、自分に案内させて欲しいと言われた。願ってもない話なので、二つ返事で了承。
「えへへへへ♪」
「ユノ姉嬉しそう!」
「嬉しそう~」
確かに凄く嬉しそうだ。よっぽど子供が好きなのかな? 四人で王城を目指して歩く。その道中で、アーサーの事を濁しながら語る。
話はしたのだが、ほぼ愚痴になってしまうな。ここまで話題が愚痴になる奴もなかなかいないぞ。
「それであのバカは……」
「ふふふ。仲がよろしいんですね」
「ん? んー。まぁ、そうなの……か?」
確かに文句を言いたい事は多々あるが、別に嫌いとか生理的に無理とかではない。まぁ、仲が悪いというわけでは………ない………のか? そういや、アイツと俺の関係性ってなんだ? 腐れ縁ってやつか?
「仲いいよ! 何時もレツ兄が蹴ったり殴ったりするの! でも、アーサー兄は頑丈だから直ぐ起き上がるんだよ!」
「あのね~あれ。喧嘩するほどって~……そういうの!」
喧嘩するほど仲がいいってやつかな。まぁ、あれは喧嘩ではない気がするけど。
「そのアーサーさんとは昔からのご友人なんですか?」
「あぁ~………まぁ、そんなところ」
実際は会ってからあんまり経ってないんだけど、こう言っといた方が無難な気がするからいいだろう。幸いにも、ミラとユフは俺とアーサーが本当は人間ではないことは黙ってるように言ってあるし、そのために色々誤魔化すなとも言ってあるので、二人は特に何も言わなかった。
「━━━帝国はやっぱり攻めるつもりらしいぞ」
「なぁに、この国には剣聖様を筆頭に強い方がいるから大丈夫さ━━━」
帝国?
どうやらこのアルマに戦争を仕掛けようとしている国があるらしい。この国にはユノを含めた知り合いがいるので、密かに食い止めようかな。でも、帝国ってどんな国なんだろうか?
ユノに聞いてみよう。
「ユノ━━━」
帝国について聞こうとユノに話しかけようとしたが、ユノが顔を青白くさせて俯いていたので、言葉がつまる。
「ユノ、大丈夫か?」
「ユノ姉?」
「大丈夫?」
三人で青ざめたユノを気遣う。とりあえず道の脇に避けて、ユノの背中を撫でてやる。ミラとユフの二人は、手をぎゅっと握って励ましている。
「すみま………せん」
「いいよ。辛いなら家まで送るぞ」
「大丈夫です。行きましょう」
無理したように笑うユノに少し心配になる。三人でユノを気遣いつつ暫く歩くと、ユノの顔色が戻って来た。
何故突然顔色を悪くしたのだろう? もしかして、帝国のことか? 帝国で何かあったのか、それとも帝国と何かあったのか、或いは………
まぁ、考えても仕方ないか。【情報の支配者】で知り合いにの情報を見るのも気が引ける。
今は置いておくしかないだろう。
「あ、あれ食べたい!」
「私も~」
「ん? あぁ、アレか」
ミラとユフが見つけたのは、以前ユノと一緒に食べたアイスだった。全員分買って、道の脇でアイスを食べる。
「甘い! 美味しい!」
「んん~」
「美味しいです」
「やっぱりいけるな」
アイスに舌鼓をうった後は、再び王城を目指して歩き出す。
暫く寄り道なんかもしながら歩いて数分。遂に王城の前にたどり着いた。白と青の巨大な王城は、まるで一つの作品のように美しかった。前に着たときは録に見なかったので、数秒固まってしまう。
「これがアルマ城です! 別名を、“青空の絵画”と言います。完成当初から色褪せず、変わることなくここに建ち続けているんです」
それは凄い。魔法がある世界とはいえ、建ってからもう何百年と経っているハズだ。だというのに、この美しさは昔から変わっていないらしい。
暫くの間俺達は、眼前に佇む雄大な“絵”に見いるのだった。




