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3.アルマ再び










「ミリです。先ほどは助けて頂きありがとうございます」


「ジークです。ミリを助けてくれて、ありがとうございます」



丁寧にお辞儀をする二人に、ひらひらと手を振りながら気にするな、と、伝える。



「俺はレツ。一応冒険者だ」



身分証目的だから積極的にやるつもり無いし、一応でいいだろう。


さて、この二人は自分が何者か隠しているが、俺の能力の前では意味がない。とりあえず、何が目的なのかだけ調べる事にする。


ミリ……本名はミーシェリア・アウルム。アウルムの第二王女で、人見知りで大人しい性格のため、滅多に城からは出ないようだ。そして、他の王族が金髪碧眼なのに対し、この娘は灰色の髪に暗い緑色の瞳をしている。


ジーク……本名はジークフリード。現剣聖が何処かから拾って来て養子にしたらしい。現在は、剣聖の下修行をしながら、年の近い第二王女のミリの相手もしているらしい。


それにしても、二人共(・・・)本人の知らぬ所で凄い。まぁ、今はそれはいいだろう。


さて、本題に戻って、この二人の目的だが、以前にあった襲撃の際に己の力の無さを知り、魔物を倒すことで強くなろうとしたようだ。上昇志向があるのはいいが、危険な目にあっては本末転倒だ。



「そういや、初めて会った時も思ったんだが、レツはこの森で何してるんだ?」



俺が心の中で叱責していると、ラインが森にいる理由を尋ねてきた。その後には、「最近見なかったし」と続く。


何時かは聞かれると思っていたので、この話題に対する切り返しは考えてある。



「あぁ、知り合いがこの森の奥に住んでて、そこでちょっと世話になってる? いや、世話してるだな」



俺の言葉に同意するように、ミラとユフがコクコクと頷いた。こういう設定で行こうと考えていたが、嘘でもあいつに世話になってるなんて言いたくない。



「この森に人が住んでるなんて、聞いたことないぞ」


「なんでも、オリジナルの隠蔽魔法を使ってるから、絶対に見つからないらしい」



これはまんざら嘘でもない。何故なら、最近誰か偶然でも来たらヤバいよな、と思い、【情報の支配者(ワレハスベテナリ)】で魔改造した、“幻想結界ファンタジア・ボーダー”を張ったのだ。


ついでに、ミラとユフはその知り合いが保護していて、アルマを見てみたいと言ったので連れて来たと説明した。


嘘だらけだが、安全に暮らすためだから仕方ない。



「成る程。人嫌いの魔法使いねぇ」


「かなり高度な魔法みたいね、出来れば話を聞きたいけど、無理そうね」


「そんな事はいいから帰って何か食べたいよ」



三人、それにミリとルークもミラとユフが七希種だとは気付いてない……いや、分かっていないのか? アーサーから見分け方でもあるのか聞いときゃ良かった。


あ、【情報の支配者】で調べれば分かるか。ええっと、外観的特徴は色が決まってるぐらいか、これは知らないと分からないだろうな。



「レツ、ちょっといい?」


「ん? どうした?」



アリサが「大したことじゃないけど」と、話を続ける。



「アルマに行ったら、先ずは冒険者ギルドに行って」


「元々魔石売るつもりだし別に構わないが………なんでだ?」


「まぁ、とりあえず行って上げて」


「? 分かった」



アリサの最後の言葉に少し引っ掛かりを覚えたが、別に悪いことは無さそうなので、アルマに行ったら先ずは冒険者ギルドに行くことにする。


ユノは元気にしてるかな? 何も言わずに戻ってしまったので、謝っといた方がいいよな。


そんなこんなで、道中雑談したり、この辺の情勢をきいたりしていたら、アルマに着いていた。ミリとルークを送り届けるライン達に別れを告げる。


ミラとユフが、ミリと抱き合ってまた合う約束をしていたが、何時叶えられるかな………



「ここがギルド?」


「あぁ……冒険者に興味あるのか?」


「うん! なりたい!」


「右に同じ~」



元気よく手を上げる二人に、もう少し鍛えたら登録させると約束させ、ギルドの中に入る。ギルドの中は、以前同様真っ昼間から酒を飲んでる奴や、パーティー同士で話し合いをしている奴ら等々、各々好きにしていた。


受付の方を見ると、見知った赤毛……クレアが頬杖をついて呆れた顔をして隣の受付を見ていた。そっちを見てみると………白い物体? いや、ユノか。脱力したように受付に突っ伏している。



「いくらなんでも落ち込み過ぎ」


「だってぇ……」


「他所から来た冒険者なんだから、さっさとコク━━━」



なんかあったのかな? 話してたのは分かったのだが、若干遠いしギルド内は少し煩いので、何を話しているのか分からない。と、此方に気づいたクレアが、ユノの肩を叩いて起こした。沈んだ顔をしていたユノが、俺を見つけて驚いた表情をする。


なんでそんな顔するんだ?



「よっ。久しぶり」


「久しぶり」


「お、お久しぶりです!」


「なんかあったのか? 良かったら力になるが」


「い、いえ! 大丈夫! 大丈夫です!」



顔を赤くしてパタパタと手を振るユノ。本当に大丈夫なのか?



「そ、なんでもない事だから気にしない」



うーん。まぁ、いいか。



「あの、その子達は?」


「あぁ、知り合いが拾ったのを連れて来たんだ、ここに来たいって言うから。二人共、挨拶」


「ミラだよ! 宜しく!」


「ユフ~」



二人が元気一杯という感じで挨拶する。初めて会った時は不安そうな感じだったが、本来の調子を取り戻したようなので、何より何より。



「私はユノだよ、宜しくね」


「私はクレア、宜しく二人共」



ユノとクレアが微笑ましげに二人に返答した。と、ユノが驚いた表情を浮かべて此方を見て、手招きをしてきた。


ユノの方に行くと、小さな声で尋ねてきた。



「あの、この二人って……」


「? あぁ、一応黙っといてくれ」


「分かりました」



恐らくこの二人が七希種だと分かったようだ。まぁ、ユノは【鑑定】のギフトを持ってるしな。



「それで、何か依頼でも受けるの?」


「いや、ちょっと魔石売りに寄っただけだ。アリサが寄れって言ったから来たんだが……」



俺が「何か知ってるか?」と聞くと、クレアはニヤニヤとした表情を浮かべて、ユノは顔を少し赤くしてそっぽを向いてと、二人共答えてくれなかった。


重要そうでもないので、今は気にしない事にして売る魔石を受付のカウンターに置く、ゴブリン系にオーク系が幾つかと、ハイ・オークの魔石を3つ置いた。やっぱり強いんだと、二人に感心されつつ、金貨3枚と銀貨53枚、銅貨78枚を受け取る。これで、食材が沢山買えるだろう。


また寄る事を二人に伝えて、ギルドを後にする。目指すは、市場だ。



「とりあえず、野菜と肉は確定として、調味料をもう少し詳しく見たいな」


「お肉食べたい!」


「おっきいの~」


「はいはい。後で食わせてやるから、今は一先ず買うぞ」



市場に移動して、色々な食材を購入していく。地球と全く同じものもあれば、全く別物のような食材もある。名前もかなり違うので、しっかり情報を見ないといけない。


【情報の支配者】、マジで便利。


三人で手分けして荷物を持ち、店から店へ移動して食材を買い漁っていく。順調、順調。よし、今度はあの店に━━━



「おい、そこのお前!」



目の前に突然、高級そうな服と装飾品をつけた肥えた男が現れた。そして、そいつを見たミラとユフが、俺の背中側に逃げ込んだ。ちらりと見ると、二人は震えている。


二人が震えている理由は、男の情報を見て理解した。


こうなる可能性はあった。ここは恐らく何の問題もなく済ませられるが……さて、相手が大人しく引き下がってくれるかどうか。


心の中で、何の問題も起こらなければいいのに、と、恐らく無駄な事を思った。





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