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1.訓練


二章スタートです。











「はぁ!」


「えーい!」



木刀と木刀が当たって軽い音をたてる。まぁ、始めたばっかだしあんなものだろう。


対して、風を斬るような音と金属同士が当たるような音を、木刀で出しているあっちの二人はなんなのか………踏み込みで地面抉ってるし



「七希種は戦闘の才能が高い………か」



だからといって子供の頃からあのレベルはおかしい気がするが、まぁ、アーサーの教え方が上手いからだろうけど。


大量の魔物による王都アルマ襲撃を、未然に防いでから5日ほどが経過した。その間に、グレン、ミラ、ユフの三人は、アーサーと一緒に修行をしていて、今も続けている。


アーサー曰く、グレンは戦闘に対してかなり高い才能があり、1日ごとにどんどん強くなっていってるらしい。ミラとユフもなかなかなもので、この年から育てていけば、かなり強くなるそうだ。


で、俺のほうはというと、たまに体術を教えたりする以外は、【魔王紋】の訓練をしている。



「軽く腕振っただけで、風圧が発生するって……」



強力過ぎないか? まぁ、【真なる魔王紋】になるまで魔力を使わなければいいんだけどさ


さて、お次は物に纏わせてみよう。そこら辺に落ちていた枝に【真なる魔王紋】を纏わせてみる。体に発露させるより魔力がいるようだが、俺にとっては微々たるものだ。


さて、この黒い枝を洞窟の側にゴロゴロある、それなりの大きさの岩に叩きつけてみると……



「危なっ!?」



岩が砕け散って破片が辺りに飛んだ。なんとか避けたが、枝で岩が砕けるって……



「レツくん。危ないじゃないか」


「そっちまでは飛んでないだろ?」


「びっくりはしたよ」



スマンスマンと適当に謝っておく。さて、今度はそこら辺に落ちている石を拾って、【真なる魔王紋】を纏わせてみる。


これもいけるな。さらに、手にも纏わせた状態で、親指でそれを弾いてみる。所謂、指弾というやつだ。


本来なら近い距離で使う術だが、【魔王紋】と遇わせると飛距離と威力が段違いだ。10メートルほど離れた岩を吹き飛ばしてしまった。


気絶させるために使うなら、もう少し威力を落とさないとな。



「まぁ、魔力の量を調整するだけだから楽だな」



指を弾く速度を変える、なんて面倒なことをしなくていいから、かなり楽だと思う。実際にやってみると、一時間もかからずに丁度良さそうな威力に調整出来るようになった。


なんか、後ろで「あれは、才能のある人が十年かけるやつだからね」とか説明しているが、きっと空耳である。



「今日の所はこれくらいでいいか」


「僕らも休憩にしよう」


「はい」


「はい!」


「はいー」



向こうも一旦終わりにしたようだ。さてと、お昼まではまだ時間があるな………



「アニメー!」


「見たいー」



そんな事を言いながら、二匹……もとい二人が足に抱き付いてきた。キラキラした目で俺を見上げてくる。アニメのことを大分気に入ったようで、時間が出来たらこうやって催促してくる。


スマホを渡すと、頭の上に掲げてグレンの所に持って行った。このメンバーの中では、俺を除くとグレンが一番スマホの扱いが上手い。



「えっと、これをこうして……あれ? じゃあ、こうだね! んん!?」



アーサーはこんな感じで全く扱えなかった。機械音痴ってやつだな。グレンのほうは、使い方を教えたら直ぐに扱えるようになった。


最近は、音楽なんかも聞いているようだ。



「何見たい?」


「海賊のやつー!」


「ニンジャー」


「僕は空飛ぶ城のやつがいいな」



見事に全員違うやつだな。その後壮絶なじゃんけんで勝ったグレンが、日本人なら誰でも知ってるスーパーな感じになったりする連中のアニメを選んだ。


他の三人はがっかりしていたが、直ぐにアニメに夢中になり始めた。



「さて、俺はどうするかな」



やることがない。まぁ、無難に食料集めでもするかな。食いしん坊三人のせいで、食材の消費量が5倍ぐらい増えたので、1日に二回は食料調達をしなければならない。


うーん。そろそろアルマに買い出しに行った方がいいかな? 明日辺り行って買いだめしよう。



「という訳で、明日から何日かアルマに行くことにした」



昼食中に俺はそう告げる。獣人三人組は、食べる手を止めて此方を見てきた。ミラとユフの二人は、首を傾げている。


もしかして、アルマが何処か分からないのか?



「そうだね。食材も調味料も少なくなってるみたいだし……前みたいに留守番は僕に任せておいてよ!」


「像は作るなよ」


「………像?」



グレンが像に反応した。前にアーサーが自分の像を作っていたことを話すと、呆れた表情をしてアーサーを見た。



「アルマって何?」


「何々ー?」


「王都アルマ。この国一番の大都市だ。人が多いし、店も沢山あるし、立派な噴水や、それに城もあるな」



俺がアルマについてざっくり説明すると、ミラとユフはキラキラとした表情をし始めた。反応から察するにどうやら城が気になるようだ。アニメを見ている時も、城が出ると感嘆の声をあげていたからな。


行きたいとか言いそうだな。まぁ、連れてってもいいんだが、二人が嫌な思いをする可能性もあるしな


なんせ七希種だ。喉から手が出るほど欲しがる奴もいるだろう。なんなら、無理矢理連れ去ったりするかもしれない。勿論助け出すが、トラウマになったら大変だしな。



「行きたい! 行きたい! お城見てみたい!」


「私もー! 連れてってー!」



やっぱり。しかしなぁ………



「まぁ、いいんじゃないかな。レツくんいるし」


「まぁ、レツさんがいれば安心か」



グレンは反対すると思ったんだが、意外にも俺が一緒ならいいようだ。


「やったー!」と、両手を上げて喜んでいる二人に、今さら駄目だとは言えなくて、結局一緒に連れて行くことになった。



「二人が七希種だって判明したら、必ず接触してくる人物がいると思うから、気を付けてね」


「あぁ、面倒くさいがなんとかあしらうよ」



さてと、何事もなく終わればいいんだが、今までの経験からして、そうはいかないだろうなぁ………





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