表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/33

21.アニメ











「…………」



無言で木刀を振る。



「…………」



真剣な表情をしてただ振る。



「飽きた」


「うん。飽きた」


「だな、飽きるな」



グレンの木刀振りを暇潰しに見ていた、俺、ミラ、ユフの三人は、開始してから五分ほどで飽きがきた。


なんでグレンが木刀振りをしているかというと、ただ単純に強くなりたいから、だそうだ。心境はもう少し複雑だろうけど、まぁそこはいいか。


で、教師役はアーサーだ。



「いいね、いいね。後はもう少し輝けるともっといいね!」


「か、輝く?」



剣の指導は上手いは上手いのだが、余計な一言を言うときがある。その度にグレンは困惑するのだが、無視していいんだぞ、無視して


さて、暇になった此方はどうするか………とりあえず、昼食は肉にするつもりなので、夜の分の魚は、午後上流の方に捕まえに行けばいい。


よし。ちょっと本気を出してみよう。



「何ソレ?」


「何? 何?」


「魔法の道具だよ」



スマホを取り出したら、ミラとユフの二人が興味深げにスマホを見出した。指で突っついたりしているが、反応はない。電源入れてないしな。




………




数分の準備の後、スマホを起動する。



「わっ!」


「ひゃっ!?」



突然画面がついたことに驚いたのか、ミラとユフが俺の背中に慌てて隠れて、少し顔を覗かせて恐る恐るスマホを見た。それにちょっと笑いながら、指を動かして目論見が成功したか確かめる。


スマホから突然音がしたのに二人が驚いて再び隠れたが、暫くしたら顔を輝かせながらスマホを食い入るように見始めた。



「成功だな」



情報の支配者(ワレハスベテナリ)】見たモノの情報を全て知れる。それは、最初から知っている自分のことも例外ではない。その証拠に、覚えていないことも情報として知ることが出来るのだ。


ここに来てからの事は勿論のこと、前の世界のことも…………


つまり、何が言いたいかと言うと、だ。



「凄い! 凄い! どうなってるの?」


「この四角いのが喋ってるの? 絵が動くのはなんで? なんで?」



俺の記憶の中にあったアニメを、スマホで見られるようにしました。


いやー、本当チートだわ。俺が覚えていないシーンや、うろ覚えの作品も完全に再現しているし、ちらっとしか見ていないものや、名前やポスター、CMでしか見たことのない作品でも、前の世界にいた最後の瞬間までに出来ていた(・・・・・)ものならば、再現出来るようだ。つまり、未公開でも出来ていれば見られるわけだ。


マンガや小説なんかも再現出来るようだし、暇潰しにはうってつけだな。


そのうちスクリーンなんかも作るか再現して、大画面で見たい。



「何見てるんだい?」


「アニメ。俺が元いた世界にあった娯楽だよ。っていうか、終わったのか?」


「まぁね。ペース配分は大事だからさ」


「ふーん」



当のグレンは、肩で息をしながらスマホの画面を食い入るように見つめている。アーサーも、興味深そうに画面を見ている。


俺は一度見たことあるので、スマホを渡して四人の反応を見てみる。



「あぁっ!」


「危ない!」


「右だよ、右!」


「いや、ここは後ろ!」



画面の中のキャラには届かないのだが、子供のようにキャラに危険を伝えている。いやまぁ、アーサー以外は子供だけど。その後も、「おぉっ!」とか、「いっけー!」とか歓声をあげたりしている。


これは、当分スマホから離れないな。複製とか出来ないかな? ………なんで必要素材なんて出てくるんだよ。それほど貴重なのか?



「鉄、金、プラチナときて、ミスリルにオリハルコン? ミスリルにオリハルコンは代用品なのか」



ミスリルやオリハルコンを使ったほうが性能が良くなるらしい。魔道具扱いなのか? とにかく、直ぐには複製出来ないようだ。というか、素材集めても作れないよな、いや、作ろうと思えば作れるか?


“増加”とか、“倍加”とか、“分身”とかの情報つけたら増えないかな? 増えないか。



「レツくん! 続き、どうすればいいの?」


「いい所で終わったから早く!」


「次見たい!」


「見たいー」


「はいはい」



スマホを受け取って次の話をつけて渡すと、ワクワクした表情をして再び見始めた。



「さて、時間も丁度いいし俺は昼食の準備をしようかな」



とりあえず、大根、人参、じゃがいもを切って、水を入れた大鍋にいれて火にかける。その間に、ベーコンを切りキャベツなんかを千切っておく。


沸騰するまでに、肉を切って塩胡椒をかけ、別の火にかけた油を引いたフライパンに入れる。


沸騰した大鍋にベーコンとキャベツを投入、少し出ていた灰汁を取っておく。大鍋を気にしながらも、フライパンに入れた肉を焼いていく。大鍋に途中でコンソメみたいなのを投入。


肉の焼けるいい匂いにつられて、アニメを見ていたメンバーがチラチラ此方とアニメを見ながら、此方にやって来た。



「レツくん、一旦止められないかな?」


「ん」



片手を差し出してスマホを受け取り、一時停止してやる。


再び料理を再会する。幼女二人が涎をだらだら垂らしながら見ている。グレンのほうは、ごくりと唾を飲み込んだ。アーサーは、そわそわと出来るのを待っている。



「よし、出来たぞ」



全員に出来た肉とスープ、それにパンを渡した。貪るように食べる獣人三人と、優雅にトンでもない速度で食べるという、矛盾な食べ方をするアーサーに苦笑しつつ、俺も食べていく。



「「「お代わり!」」」


「はいはい」



多目に作っておいて正解だったな。元気よく器をつきだしてきた三人を見ながら、俺はそう思った。




……………




っていうか、なんでお前もそっち側になってんだよ、アーサー。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ