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10.王都アルマ












王都アルマの城門を抜けた。


別に身分証の確認とかはなかったが、王都に入るにあたって銀貨三枚払うことになった。まぁ、エバンスさんが代わりに払ってくれたので、そこは気にしなくても良かった。


この世界には、身分証かそれに代わるものはないのかと一瞬思ったが、ラインによるとあるらしい。



「国民証のことか? 便利は便利だが、ギルカのほうが便利だぞ」



国民証は、その国の住民だという証で、その国内ならば、都市に入るさいの料金は0になる。同盟国ならば、入国料が安くなるし、都市に入るさいの料金も少なくなる。逆に、敵対国には入れすらしない。まぁ、その辺はどうでもいい。一つの国に居座る気はないからな。


続いてギルカ、正式名称はギルドカード。冒険者ギルド等のギルドに所属することで手に入る、特殊な金属で出来たカードで、身分証にもなる。国民証のように都市に入るさいの料金がタダになる国もあれば、そうじゃない国もある。ただし、此方は国そのものに入れないなんてことは殆どないそうだ。


持つならギルカのほうだな。



「それじゃ、俺達はギルドに報告に行ってくる。報酬は貰ったしな」


「暫くゆっくりしたい~」


「そうだね~お金も入ったしね」


「無駄遣すんなよ、またかつかつになったらどうするんだ」



どうやら俺の知らないうちに報酬を貰っていたようで、軽く言い合いをしながらギルドへと向かって行った。


ラインからは、暫くこの都市にいるので、何かあったら頼れと言われた。困ったら、遠慮なく頼ることにしよう。



「レツさん、此方です」


「はい」



俺は、服を貰うためにエバンスさんについて、エバンスさんの店へ向かう。


店につくまでに、町並みを見ていく。


ファンタジー風異世界だけあって、中世ヨーロッパのような感じの町並みと人々………というわけでもなく、結構自由度が高いようにみえる。白や茶色、赤っぽい色の家々が立ち並び、人々はズボンやキュロット、ベストに上半身裸、鎧にローブ、ワンピース……よく分からない変なのとか色々だ。



「活気があるなぁ……」



店の呼び込みの声に、酔っ払った男達の声、ケンカをしているのか怒号のようなものも時折聞こえる。


ん? これは、活動があるっていうのか? うーん。まぁ、いいか別に平和なら。



「着きました、ここです」


「え? ここですか?」


「はい」



どうやら、思っていたよりエバンスさんは凄い人だったらしい。


目の前にあるのは、屋敷より大きな建物。それが堂々と力強く建っている。大きな店だけあって、出入りする人物も多い。従業員であろう人が大半だが、中には何か買い付けに来たっぽい人や、貴族っぽい人も出入りしている。


これ、この国一番の商会とか、そんなオチじゃないのか?



「レツさん、こっちです」


「あ、はい」



馬車は専用の入り口っぽい所から入っていったが、俺はエバンスさんと使用人のロメルさんと一緒に、正面の入り口から入る。出入りのしやすいようにするためか、扉は開かれている。


中に入ると、従業員の人達がエバンスさんに挨拶をしていく。皆いい笑顔をしているので、エバンスさんを慕っているようだ。


エバンスさんに案内されて、応接室のような場所に通された。



「ふぅ。やっとゆっくりできますね」


「そうですね」


「では、改めて自己紹介を。私は、エバンス・フィラート。このフィラート商会の会長をしております」


「フィラート商会……ですか」



凄いのか凄くないのか分からなくてすみません。異世界から落ちてきて、それから今まで森で生活してたんでわかりません。


エバンスさんにフィラート商会について詳しく聞いてみると、今いる太陽の国アウルムを中心に、周辺諸国でも活動している商会で、衣服や家具、食料品、魔道具等々幅広く事業を展開しているらしい。


凄いとかそういう度を超えてたわ。これ、貴族に貸しとか作れるレベルの商会じゃん。



「それで、服でしたね?」


「は、はい。あんまり高くなくて、地味めなモノがいいんですが……」


「分かりました。今、用意させますね」



エバンスさんが使用人のロメルさんに何事か告げると、ロメルさんは礼をしてから出ていった。


ロメルさんが戻ってくる間に、エバンスさんからいい宿がないか聞いてみると、フィラート商会が経営している宿があり、そこなら無料でいいと言われた。流石に宿代くらい払うと言ったのだが、命を救ってもらったお返しにはまだ足りないからと言われて押しきられた。


まぁ、ありがたく泊まらせてもらおう。



「お待たせしました」



ロメルさんが持ってきたのは、落ち着いた暗めの色をした俺好みの服がいくつか。スーツの代金分とお願いしたのだが、全部で30着はある。ちょっと多くないか?


気になって聞いてみたが、適正価格だと言われたので【次元収納ディメンションポケット】に仕舞う。



「おや?【アイテムボックス】のギフトを持っているのですか? 羨ましいですな」


「えぇ、まぁ」



アーサーから俺の【次元収納】の下位互換のようなギフトがあると事前に聞いていたので、【次元収納】のカモフラージュに使わせてもらう。ギフトならば、特殊能力と違って持っている人が複数いるから、少し珍しがられるだけですむだろう。


ちなみに、【アイテムボックス】は【次元収納】と違って収納できる要領に制限があり、閉まったものの時間が止まったりしない。要領のほうは個人差があるなど、やはり【次元収納】の下位互換のような能力だな。


とにかく、エバンスさん達は【アイテムボックス】と勘違いしてくれたのでいいだろう。



「あ、そういえば、食料品を扱ってるってことは、調味料とかもありますか?」


「えぇ、ございますよ? 何トン要りようですか?」



いや、トン単位で貰っても困………りはしないな。【次元収納】に仕舞っとけばいいし……いやでも、トン単位でタダで貰うのはちょっとなぁ……ちらりとエバンスさんを見ると、ロメルさんに調味料を1トン用意しろと言っている所だった。


二人を止めておいた。とりあえず、確保が簡単らしい塩を数十キロ貰うことにして、後は日を改めて買いに来ることにした。


「差し上げますが……」というエバンスさんに、流石に貰いすぎだと言って退室する。まだ日は沈みそうもないので、冒険者ギルドに行くことにする。



「小腹が空いたな」



途中、小腹が空いたので屋台で売っているものを買うことにした。



「コルト鳥の焼き鳥! 一度食べたら病み付きになるよ! 一本どうだい?」


「美味しいシチューはいかがですか~? 出来立てで熱々ですよ~」



色々売っているようだが、腹が満たせそうなコルト鳥の焼き鳥を買お………そういえば、スーツは衣服と交換してしまったから、まだ金を持っていなかった。


ギルドで金を手にいれたら真っ先に来ようと心に決めた俺は、早足でギルドに向かう。


道中何度か道を聞いたりして、無事にギルドに着いた。


のだが………



「お、お帰りください! 規約違反になりますよ!」


「うるせぇ! 元はといえば、てめえらのせいだろうがっ!」



どうやら、面倒事は以外と身近で起こるものらしい。






次回、ヒロイン登場

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