第46話 パーティー前準備
食堂へ行くと、子供達が大賑わいをしていた。
いそいそと飾りを作る子、白い布地を広げて裁縫道具を用意している一団、とにかくハイテンションで大騒ぎしてる子……と、様々だ。
夕飯どころではない有様に、ゴードンは絶句する。
小さい子供達が駆けて来て、ゴードンと一緒にいるユウへ、喜びの笑顔を向けた。
「ユウさま、ユウさま~! 結婚おめでとう!」
「しっ、まだだよ! 明日!」
……明日?
いつの間に、そういう話になったんだろう……。
しっ! ってユウの事なのに、本人にも内緒なのか? これ……。
「ええと……ハルカ?」
子供達の中心にいる、ハルカとレイカの元へ行った。
「あっゴードン、良い所に! ユウさまの衣装、どんなのが良いかな?」
「明日って、なに?」
「聞いたよ聞いたよ~、レイカから! ユウさまに『レイカは僕が守る』って、プロポーズされたって! ちょっと気が早いけど、結婚式、明日で良いよね?」
……ちょっと、どころじゃないんだが。
「あのね、ハルカ……」
「やっぱり、こっちが良いかな。それとも、そっち……。あ、結婚式は、明日の昼ね!」
リーダーと、親衛隊のシンジとサーラが、食堂へ入って来た。
「なんだ、こりゃ」
走り回っていた子供達が、親衛隊に教えてくれる。
「ユウさまと~、レイカの結婚式、やるんだよ~!」
「明日のお昼ね! みんなでお祝いするの!」
「はぁ?」
お祭り騒ぎになっている中に、リーダーはユウをみつけた。
周囲の喧騒とは、まるで別世界にいるかのように、ひとり佇んでいる。
リーダーはユウへ近付き、声を掛けた。
「結婚するの? お前」
「なんか、そうらしい」
物凄く他人事だ。
「お前の事だろ?」
「食堂に来たら、こうなってたんだよ」
親衛隊のシンジが付け加える。
「明日の昼って、言ってたけど?」
「しっ! って、目の前で口止めしていたよ。僕にも内緒らしい」
「……だから、お前の結婚式だろ? 明日の昼?」
「よく判らないけど、リーダー。ちょっと頼みが」
リーダーとユウで、何かヒソヒソと話をし出した。
「……別に良いぜ?」
「ありがとう」
食堂は子供達の喧騒で落ち着かなかったが、リーダーと親衛隊の二人は、とりあえず食事にした。
「まぁ……明日、暇だったら来てみるか……」
◆
翌朝――
ゴードンが食堂へ行ってみると、食堂は手作りの飾りで、ちょっとしたパーティー会場のようになっていた。
「ゴードン、ゴードン~! おはよう~。ユウさまは?」
「朝起きたら、もういなかった」
「ええ~、衣装、選んで貰おうと思ったのに……」
「アイツ精鋭部隊だから、緊急出動も多いし、そういうの着ないと思うぜ」
「そっかぁ……仕方ないよね」
「あのさ……。ハルカ、結婚式だけど……」
ゴードンが言い掛けた時、レイカが結婚式用の服を、試着して出て来た。
「わぁっレイカ、可愛い! とっても良く似合うよ!」
――真っ白の……。
膝上ミニスカートの、ワンピース……。
女の子達が一晩で仕上げたウェディングドレスは、シンプルで質素だが、充分だった。
本番ではこれに、手作りレースを使ったヴェールが被せられる。
「えへへっ……」
レイカは、とても幸せそうに笑う。
ゴードンは、結婚式はやめようと言いたかったが、言えなくなった。
……ユウが暗く俯く理由は、判らない。
でも、断る機会はあった筈なのに、しないのだから……。
ゴードンが言う事では、ないのかもしれない。
「ゴードン、お昼にはユウさま、連れて来てね」
「そういうのは、本人に言っておけよ。いつ戻って来るか判らないから、約束は出来ないけど……。判った、聞いておく」
祝!ジャンル別日間ランキングBEST5!(昨夜~今朝迄)
皆様のお陰です。ありがとうございます!
記念に最新話を、予定より少しだけ早く更新しました。




