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第39話 煌めく工芸品

 ”晴天の稲妻”大広間へ、リーダーと精鋭部隊が戻った時、彼らを迎えたのは畏怖の目だった。


 ――同盟なんて、とんでもない。

 少しでも機嫌を損ねれば、即、皆殺しだ。


 ここは触らぬ神に祟りなし……とでも言うかのように、同盟を希望して集まった者達は、静まり返っていた。


 リーダーは、一度おやっさんに視線を向け


「帰るぜ」


 一言だけ伝えて、撤退しようとした時――

 先程アピールの途中だった、小太りな中年の男が、呼び止めた。


「待って下さい! 私にもチャンスを与えて下さい!」


 リーダーは、冷めた瞳で男を見る。

 小太りな中年の男性は、引き止めるように、必死で話し始めた。


「私は”作成工房”のキサト。今日は、私達の作る工芸品を広めたくて、やって来ました。同盟など、あっても無くても構わない。

 私達は、滅びゆく過去の素晴らしい工芸品を、未来に残したい。心を込めて作ったこの工芸品を、あなた方にも使って欲しいのです」


 キサトは、持っていた布包みを、広げて見せた。


 大切に包まれた布の中には、いくつもの可愛らしい工芸品が、キラキラと輝いて現れ――

 それはまるで過去の栄光の世界が、どれだけ豊かだったかを、示すかのようにも見えた。


 だがリーダーは、吐いて捨てるように言う。


「そんな物に、払う対価は無ぇ」

「対価など、必要ありません! ただ受け取って貰えれば、良いのです!」

「そんな事をして、なんの得がある?」


 キサトは布包みの中の工芸品を、愛おしそうな目で見ながら答えた。


「どんなに素晴らしい工芸品を作ったとしても、誰にも使って貰えないなら、意味はありません。誰かに使って貰ってこそ、魂が宿り、輝くのです。

 あなた方の所には、女性や子供はいますか? 子供は……、今、私の目の前に、一人いますね。是非、坊やにも使って貰いたい」


 キサトは静かに歩み寄って、ユウへ布の包みを差し出した。


「坊や、受け取っておくれ」


 ユウは即座に探査能力を使い、布包みの中の工芸品を調べる。


 ……特に危険な素材を使っている訳ではない。

 キサトの言葉に嘘はなく、本当にただの美しい工芸品なだけだった。


「対価は無いぞ」


 リーダーの言葉に、キサトはすかさず笑顔で応えた。


「結構です!」


 布包みを押し付けられ、ユウは仕方なく、受け取った。


「どうか、これからも受け取って下さい。誰かに使って貰える事、それこそが私達の望みです。もちろん対価も望みません。何かをしてくれとも言いません」

「……良いだろう」


 キサトのお陰で、空気が和んだ。

 ……不思議な魅力を持つ男だ。


 おやっさんは、ふところから小さな工芸品をひとつ出して、リーダーに見せた。


「俺達も、ここにいる奴等も、貰ったんだぜ。女にやれよ、きっと喜ぶ」

「余計なお世話だ」


 面談は終わり、”殺戮集団”は撤退して行った。



 ――結局、同盟はひとつも増える事なく、終了した。

 ”オールザット”を壊滅させた事により、また悪名が上がっただけの、出来事だった。







>「あなた方の所には、女性や子供はいますか?」

そういえば……親衛隊サーラも目の前にいましたね。

でもユウに言ったという事は……。

きっとサーラが怖かっ……いえ! ユウの方が子供だから渡しやすかったのかと!

次回からのエピソードは、ユウがアレなお話です。

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