第34話 外部通信
一週間が経った。
ようやくレイカの謹慎処分が解け、ハルカや子供達の前に姿を見せたが、謹慎処分となった原因をレイカは誰にも話さなかった。
少しは反省し、成長したようだ。
レイカの能力コントロールは、といえば――
本当に真面目に取り組んでいるのか、疑問を持ちたくなる程、一番最初で詰まったままだった。
ゴードンや他の子供達が、どんなに助言をしても、クリア出来ない。
当のレイカは大真面目で、あまりにも出来ずに嫌になる時もあるが、毎回、気を取り直して頑張っている。
実動部隊を目指す気はないが、毎日の日課にしていた。
ユウはスイッチが入ったように、ひたすら本を読み続けていた。
ルームメイトとなったゴードンが朝、目を覚ますと、ユウは既に本へ向かっていて、放っておくと食事も摂らずに読み続けている。
何か話し掛けても無駄な程、集中しているので、レイカへの助言は頼めそうもなかった。
そんな事をしていられる程、この一週間は平穏だった。
襲撃者もなく、精鋭部隊出撃命令も出ず、警報もアナウンスも入らない。
このまま平和が続けば良いと、誰もが祈った。
外部から通信が入り、リーダー執務室へ転送される。
同盟を交わした”晴天の稲妻”おやっさんからだ。
「今日は、ちょっと頼みがあってな」
おやっさんは、言い辛そうだ。
「実は、お前の所と同盟したのが、噂となって広まってだな……。一時ウチも、”桔梗乙女”も、脅威の対象になっていたんだよ。それが、ここ二、三日、自分達も同盟したいって奴らが急増している。
お前、外部からの連絡、取らないだろ。全部、俺の所へ来るんだよ」
「で?」
リーダーは興味がなさそうだ。
「なんとか間を取り持ってくれってのが、ざっと五十件は入っている。俺も対応し切れん。で、だ……」
「断る」
「まだ何も言ってないだろ……」
「同盟なら間に合っている。そんな話なら、聞く価値はない。切るぞ」
「ま、待てって! ……お前、肉とか魚とか、素材の味を生かした食い物って、食べた事あるか? お前の所、地下施設だろ? 食料プラント加工の固形物ばっか食べているんじゃないのか?」
――通信を切られない。
チャンスだ!
おやっさんは続ける。
「うちには豊富な食料がある。ご馳走してやる。勿論、対価なんざいらねぇ。
……で、その代わりと言っちゃなんだが、同盟を希望する奴らをウチで厳選するから、そいつ等と面談してやってくれねぇか」
ここぞとばかりに畳み掛ける。
「な、頼むよ! 一度面談してやれば奴等も納得する。気に入ったら同盟してやれば良い。基本的に望みは薄いとも言っておくから! な!」
画面の向こう側のおやっさんは、手を合わせて拝むようにして、頼み込んだ。
リーダーは不可解な顔をする。
「なんでアンタ、そんな必死なんだ。放っておけば良いだろう」
おやっさんは苦笑して答えた。
「俺の性分みたいなもんでなぁ……。無下に断り切れねぇのも居るんだよ。頼むよ」
リーダーは軽く溜息をついて、返事をする。
「良いだろう。明朝そっちへ行くから、準備しておけ」
「よしっ! たっぷりご馳走を用意して、待っているからな! 絶対来いよ!」
通信が切れた。
リーダーは目を瞑って額を掻く。
ふと視線に気付いて見ると、親衛隊の二人がこちらを見ている。
「……メシに釣られたんじゃねぇぞ」
親衛隊の二人は、苦笑いをした。
今回のエピソードは6話構成。
かなり苦労したこのエピソード、楽しんで頂けたら嬉しいです。
「活動報告」に、作品に対する一言などを更新時、毎回載せています。
たまに覗いてみて下さいね!




