第25話 哀しい台詞
「ユウ、お兄さんどう? 元気? 記憶戻った?」
自室謹慎中のレイカの様子を見に行くと、レイカは明るく出迎え――
少し前屈みになって、ユウを下から見上げるようにして聞いた。
「さっきお兄さんに、お父さんとお母さんの事も聞いていたでしょ? どう? なにか判った?」
全然、懲りていない様子だった。
レイカの質問に、ユウは何も答えなかった。
俯き気味のユウを不思議に思ってレイカは、またさっきと同じように下から見上げて、目線を合わせようとする。
「ああ……えーと……」
ユウとレイカの間に割って入って、ゴードンはレイカを窘めた。
「聞かないであげて……」
「なんで~?」
レイカは納得いかなくて、ゴードンへ詰め寄る。
――なんて言ったら良いのだろう。
サーラに阻まれていたので、ゴードンには全部聞こえていた訳でも、全部見た訳でもない。
でも……。
「ユウのお兄さん、死んだんだ……」
「ええっ、なんで!? 昨日は元気だったじゃない! さっきだって、話していたんでしょう?」
「ん……と……」
ゴードンは、ユウを見た。
しかし、ユウは何も言わない。
「俺も詳しくは知らないんだけど……なんかね、どこか悪かったみたいだよ」
「病気?」
「うーん……かなぁ……」
ハジメの異常な笑い声は、ゴードンにも聞こえていた。
ユウに何度も、死ね死ね化け物、と言っていた言葉も。
「そっか……残念だね……」
レイカはもう一度、ユウを下から覗き込むようにした。
「ごめんね、ユウ。私ばっかり、お兄さんとお話しして……。もっといっぱい、お話ししたかったでしょう?」
……心配そうに、覗き込んでいる。
ユウは、ほんの少し……笑顔を作った。
「ううん……大丈夫。いっぱい、話したから……」
――哀しい台詞を
たくさん、たくさん……――
「そっか。良かった……」
レイカは屈託のない笑顔を、ユウに見せた。




