第315話 悲劇
「よし、出港するぞ!!」
準備が出来次第、カイが出港の合図を出した。
四隻の大型船が一斉に動き始める。
それぞれの船に、ウモンガス家の男が船長として乗っていた。
センプラーを出る。目指すは外洋だ。
センプラーを出てしばらく移動し続ける。全速力で移動している。大型船だが思ったよりスピードが出ている。
風だけでなく、魔法も動力として取り入れているので、この速度で移動可能だった。
キャンシープの船舶技術は、サマフォース帝国で一番であり、特に速度に関しては他の追随を許していなかった。
「兄貴!! あれ!!」
飛行船が飛んで来ているのが見えた。
間近くを移動しているカイの船に向かって、ルーベルトは叫んだ。
「な、何!?」
「何故だ! 読んでいたのか!?」
どのタイミングで撤退が始まるのか読んでいなければ、飛行船が来るのは無理なはずだった。
少なくとも、船が出航するタイミングで、飛行船が出撃したとしたら、間違いなく間に合わない。
情報が漏れたか、それとも敵の軍師が鋭い読みを発揮したとしか考えられなかった。
キャンシープの船は早い。
しかし、飛行船に比べれば遅い。
やはり水の抵抗を受ける分、どれだけ早くても速度には限界があった。
「まずい! 追いつかれるぞ!! 全力で移動しろ!!」
ルーベルトは船員に指示を出し、船の移動速度を上げた。
ほかの船も移動速度を上げている。
(外洋まで逃げれば追ってこないはずだ。深追いは向こうにもリスクがある)
ルーベルトはそう考え、ひたすら外洋まで走る。
ほかの船は肉声が届かない位置にいったので、どう動くかは分からないが、恐らく自分と同じ考えて動いているのだと、ルーベルトは思った。
逃げ切ろうと思ったが、
(まずい。追いつかれる!)
飛行船は近くまで来ていた。
そして、魔法攻撃を一撃放ってきた。
オットーの船に飛んでいく。
凄まじい威力の魔法だった。当たった瞬間、大爆発が起きる。
一撃は何とか魔法防壁で防御できたが、もう一撃喰らうと流石に耐えきれなさそうだ。
「クソッ!」
ルーベルトは何とか助けられないか方法を考えるが、彼もいっぱいいっぱいで船の操舵を行なっているので、助ける方法などなかった。
何とか無事でいてくれと、祈るしかなかった。
再び魔法攻撃が飛んでくる。
今度は海に直撃。
大きな波が発生する。
「ぐっ!」
波で船が大きく揺れる。
荒れた海など何度も経験しているので、この程度では沈没したりはしない。
うまく舵を取ってしのいだ。
どんどん魔法が飛んでくる。
ルーベルトの方にも飛んできて、魔法防壁に命中した。
全員に一発ずつ当たっているようだ。
奇跡的に沈んでいる船はない。
ウモンガス兄弟の操舵技術は全員高く、上手くかわしたりもしていた。
その後、海に直撃し大きな波が来るのだが、それも舵を取って乗り切っていた。
(結構撃ってきたよな。もうすぐ魔力水が切れるはずだが……)
敵の燃料切れを期待しながらも、なお逃げ続ける。
飛行船が魔法を発動させ、放ってくるのが見えた。
「チッ!」
当たるな! と願いを込めて、ルーベルトは魔法の行方を見ていた。
その願いは虚しく、ほかの船に命中する。
船は大破し、海に沈んでいった。
「兄貴!!」
魔法が当たったのは、カイが乗っていた船であった。
必死の形相でルーベルトは叫ぶ。
飛行船はその攻撃を最後に、魔法を撃つのをやめ帰還していった。
その後、ルーベルトたちはカイの船が沈んだ場所に戻り、兄を探したが見つからなかった。
海に落ちて海流に流されてしまったのだろう。
海を探していないということは死を意味する。
「クソ!」
ルーベルトは甲板を叩いた。
「カ、カイ兄がしぬわけねぇ! 探せばまだ近くにいるはずだ!」
ヤードがそう叫んだ。彼の目には涙が浮かんでいる。
普段厳しい兄だったが、ヤードはカイのことは慕っていた。
「気持ちは分かるけど……もうだいぶ探したし……あまり留まり続けるのも危険だよ。さっきの飛行船が燃料補給して、戻ってくるかもしれないし」
オットーがヤードを慰めるように言う。
「何だよ! 諦めるのか!?」
ヤードはオットーの胸倉をつかむ。
「やめろヤード」
ルーベルトが止めに入った。
「これだけ探していないんなら、兄貴は海に流された。間違いねぇ。俺らはウモンガス家の一族として、帰る義務がある。このまま全員で死ぬわけにはいかねぇんだ」
「でもよう……」
「でもじゃね! 悔しいのはお前だけじゃねぇーんだ。早く自分の船に行って、出発の準備をしろ!」
「……うう」
ヤードは肩を落としながら、自分の船に戻っていった。
「俺たちは生きて帰ろう……」
オットーも落ち込んだ様子で戻っていった。
(ミーシアン……この借りはいつか返す)
ルーベルトはそう誓い船に乗りこんだ。
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