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のんべんだらりな転生者~貧乏農家を満喫す~  作者: 咲く桜
第6章 農家と勇者と邪神ノ欠片 後編
155/177

ep.155 霊樹


「というわけで、本日はエゼルミアさんに来ていただいていま~す」


「いえぇーい。私が来たからには、もう霊樹が育ったと言っても過言じゃないわね~!」


 いや、それは過言なのでは……? と思っても口には出さなかった。こんなところでへそを曲げられても困るからな。


 しかし、予想以上に人が集まった。婚約者の3人はもちろんのこと、メイド部隊に王都に住んでいるルナの家族、あとは龍が3人。レブラントさんも来たかったそうだが、仕事の都合で来れないそうだ。


 みんな霊樹を一目見ようと集まったようだけど、ここで一つ問題がある。どこに植えるかということだ。オーネン村内の家の近くに植えるというのは決めているのだが、詳細な場所までは決めていなかった。


 家の周りは畑が広がっているし、だからと言って家の目の前に植えては邪魔になるかもしれない。


 一人でうんうん唸っていると、エゼルミアさんがあたりを見回してなにか気づいたように走り出した。行きついた先は家から300m離れた場所にある、まだ木を伐っていないところだった。


「うん、ここがこの辺だとベストかな~」


「何がベストなんですか?」


「ここが一番地脈が濃いの。まぁ、かなり地下だから、ハイエルフである私くらいじゃないと気づけないけどねっ!」


 えっへんと言わんばかりに胸を張って――……まぁ、おそらく張っているのだろう。


「地脈……」


 エゼルミアさんが言うように何か大きな力を感じようとしてみるも、全く分からない。こればっかりはしょうがないのか。


「ってことで、早く植えて植えて!」


 エゼルミアさんがかなり急かしてくるが、なぜだろうと思った。これはあとから聞いた話だが、ハイエルフは半精霊らしく霊樹があるところに住むことで英気を養えるのだそうだ。


 エゼルミアさんが定期的にエルフの里に帰るのも、そういった理由があるのだそうだ。なので、霊樹が増えることで彼女の行動範囲が広がるということにつながる。


 そうなればもっと長時間この村に留まってくれるかもしれないということだ。アルフの過去についても聞きたいし、願ってもないことだな。いつもふらっと現れていつの間にかいなくなっているからな。



「よいしょっと」


 俺はあえて魔法ではなく自らの手で土を掘って植えた。これはなんとなくの行動であったが、少しでも気持ちが通じればいいなと思ったからだ。みんなに見守られながら霊樹の種を植え終えた。


「じゃあ、植え終わったら魔力を注いであげて! それも目いっぱいね! 魔力を注ぐことで活性化して、すくすく成長するんだよ!」


 ということだったので、地面に手を付けてお望み通り魔力を流していく。ここで想定外のことが起こった。


 最初は徐々に魔力を流そうと思っていたのだが、流し始めた途端に種から魔力を奪われるように魔力が吸い取られたのだ。止める事も叶わず、俺の魔力はどんどん奪われていく。


 ここ最近だと魔力がつきたことなんてほとんどないというのに、一瞬にして魔力を9割持っていかれた。


「すっご……人間とは思えないくらいの魔力量だね! ハイエルフである私にはギリ及ばないにしても、考えられない量だよ。……本当に人間?」


 ハイエルフに呆れられる魔力量とは、我ながらちょっと誇らしいな。



 ピョコン!



「「「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」」」」」」



 魔力を流したと思ったら芽が出た。いや、どこのファンタジーの世界観だ。しかも、その後も成長が留まることなく続き、全高が4mを超えた当りで成長が止まった。


「お~、さすがはアウルの魔力。量だけじゃなく質もいいとは驚きだね。まるで神代の時代を思い出すよ」


 ……質がいいというのはつまり、俺の体が特別製だからではなかろうか。


「魔力には向き不向きがあるからね。アウルの魔力にはその不向きがほとんどなさそう。属性もほとんど使えるみたいだし、ほんとに人間なのか疑っちゃうよ」


 魔力の向き不向き……いわゆるそれが適性属性ということなのかもな。そう考えれば、適性が多ければ多いほど魔力の質が高いということになる。エゼルミアさんの言っていることも間違ってはいなさそうだ。


「それにしても、ここまで成長するのに5分もかからないとはね」


「? この子は生まれたてだからまだまだ大きくなるよ。アウルの魔力が凄かったから、普通よりも成長したけどね。あとは環境と土が良い」



 霊樹についてはまだまだ知らないことが多いけれど、なんだか自分の子供みたいで面白い。そういえば、育てる者の魔力を吸うということは、俺以外の魔力でも育つのだろうか?


「霊樹って俺以外の魔力でも育つんですか?」


「そりゃあもちろん! エルフの里の霊樹はエルフ全員で育てたからね。だからエルフに対する庇護が生まれたんだよ」


 これは良いことを聞いた。俺が毎日魔力を吸われては大変だったが、これを分散できるのであればぜひともお願いしたい。それに、みんなにも加護のようなものができるのであればそれもお願いしたいものだ。


 ということで、せっかくだからこの場にいた全員に魔力を注入してもらった。もちろんエゼルミアさんと龍の3人にもだ。



「ぐおっ?! なんだこれは!」


 途中、グラさんの魔力を吸った霊樹は遠慮なしに吸いまくったようで、グラさんがふらつくまでいじめたようだ。ペットは育てる者に似ると言うが、そういうあれなのか? グラさんの扱いまで完璧に理解しているとは恐るべし霊樹。


 その後もみんなが魔力を注いでくれたおかげで、霊樹の全高は10mを超えている。つい先ほど植えたとは思えない成長ぶりだ。ここまでになるとは思ってもみなかったが、エゼルミアさんにはあとでお礼をたっぷりとしなければ。



「……エルフも魔力に関しては自信があったんだけど、アウルのとこの人たちはなんか、それ以上みたいだね。まぁ、龍帝があたりまえのようにいるし、神代の魔人、常軌を逸した達人の人種と獣人種。なんか国でも構えられそうだね!」


 いや、俺もこの人材の豊富さについては驚いている。意図して集めたわけではなかったものの、これほどの人材は大国である帝国にもいないかもしれない。



『ふるふる!!』


「クイン、どうかした? ……あぁ、霊樹に巣をつくりたいのか」


『!!(コクコク)』


 その可否が判断できなかったので、チラリとエゼルミアさんに視線を移すと、クインも魔力を注げば恩恵を受けられるうえに、害獣として見られなくなるらしい。これだと害悪な魔物も魔力を注げば恩恵を受けられるような気もするが、あくまで俺の従魔という位置づけだから大丈夫なのだそうだ。


 あとでシアとヴィオレたちにも魔力を注ぐように伝えておこう。


 クインがふらふらと霊樹まで飛んでいき、魔力を注いだと思ったら霊樹とクインが共鳴するように淡く光った。時間にしておよそ5分くらいだろうか。光が収まったと思ったら、クインには明らかな変化が現れた。



「見た目が少し変わった?」

 

 蜂だというのに、羽根の数が6枚ある。さらに首元のモフモフはさらに磨きがかかり、もはや滑らかな毛の海と言っても過言ではない程モフモフしている。体長はそこまで変わっていないが、気持ち大きくなった感じか。なにより変わったのはそのオーラだろうか。


 圧倒的強者のオーラを醸し出している。一体どれほど強くなっていると言うのか。



「クイン、ちょっとステータスを見させてね」


 確か前回は阿修羅蜂あしゅらホーネットとかいう強そうな名前だった。でもあれからけっこう時間も経っているし、最近になって毛艶に磨きがかかっていた気がした。そもそも、ここ最近はクインも忙しそうにしていたし、俺も忙しかったからあまり一緒にいれなかったというのもある。レベルという概念ではおそらくかなり上がっていたはずだ。


「ステータスオープン」


◇◆◇◆◇◆◇◆

天嵐蜂(バアル)/♀/クイン/Lv.4(→200)

体力:14000

魔力:17500

主人:アウル

個体:特殊ユニーク

◇◆◇◆◇◆◇◆



「…………」


 言葉にならないとはこのことなんだが。阿修羅ではなくなっていたのは、なんとなくわかっていたからいい。だけどなにこの種族。というか、もはや種族なのかどうかも分からないんだけど。


 そもそもその強さはメイド部隊の倍以上。名実ともにクインは俺たちの中でトップクラスの戦闘力を誇ることになる。


 俺が言葉も出せずに固まっていると、ふらふらしていたはずのグラさんが戻ってきた。


「ほう、こいつは驚いた。特殊個体の魔物など滅多に見られるものではないぞ。こいつは特殊個体の中でもさらに異質だ。名を…………なんだっけ」


 ズコッ


 グラさんの説明を熱心に聞いていた俺含めたメンバー全員がずっこけた。せっかく雰囲気があったというのに、全てが台無しだ。まぁ、そこがグラさんらしいと言えばらしいんだが。


「エゼルミアさんは知っていますか?」


「んー……さすがにわからないなぁ」


 アルフに視線を移しても首を横に振っていた。レティア含めた龍種も全滅。グラさんはあんなんだが、知識量だけはかなりのものだ。絶滅した魔物のことなんかも知っていたというのに、こういうときだけは役に立たないんだから、もう。



『霊獣、であろう? 霊樹がその蜂の魔物を、自らを守護する魔物の一体として認めたのだろうな』


「そうだった! 霊獣だ! ようやく思い出せたぞ、アウル!」



 全員がクインの種族について知りたくてうずうずしていた頃、どこからともなく声が聞こえてきた。それも、どこか聞き覚えがある声だ。


「何者だ! 姿を現せ!」


 ルリリエルの声とともにメイド部隊とルナとヨミおよびアルフが臨戦態勢に移行する。俺とエゼルミアさん、龍たちも静かに戦闘可能なように身構えたが、それは杞憂に終わった。



「声は上から聞こえた。でも、この声どこかで……」


 俺が悩みながらも上を向くと、そこにいたのは以前出会った――







『アウル殿ぉ~~~~~!! 探しましたぞぉ~~~~~~!!』








 ――ノーライフキングであった。

かなり空いてしまい申し訳ありません。

細々と更新していきます。

評価・ブクマ等して貰えたら嬉しいです。



まだ先ですが、なんとなく個人的に嬉しい報告が出来そうです。前回が5末だったから、11月くらいかなぁ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 続きが読みたいです。更新を楽しみにしてます。
[一言] そういや居たなあ、ほったらかしのが
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