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のんべんだらりな転生者~貧乏農家を満喫す~  作者: 咲く桜
第5章 農家と勇者と邪神ノ欠片 前編
121/177

ep.121 トゥーン海岸

ちょっと短めです。

ちょっと前にやったレブラント商会の開店祝いは上手くいった。もともとレブラントさんはこの村に行商に来ていたということもあって、なんの問題もなく受け入れられたのだ。俺としてはそれよりも、ウルリカとレブラントさんの今後が気になってしょうがないところである。それにしても……


「勇者が迷宮に潜った、か……」


レブラントさんが最新情報をくれたのだが、いったいどこから情報を仕入れているのか分からない。味方である分には助かるので、頼もしい限りである。だが、勇者が迷宮に入ったということは、確実にレベルを上げるためのはずだ。今はまだ召喚されてから時間が経ってないからそこまでの脅威じゃないはずだが、時間が経つにつれてどんどん強さを増すだろう。


まだ猶予があるうちに邪神の欠片を集めておいたほうがいいに違いない。


実は、前回一個目の欠片を集めて分かったことだが、イナギが欠片を吸収するのには相応の時間がかかるということが判明したのだ。しかも吸収している間はかなりの魔力を使うため、ルナも本調子には動けないという制約付きである。とはいっても、Bランク冒険者以上には動くだろうけどね。


それで、一個目の欠片を吸収しきるのにかかった時間はおよそ3週間~4週間。およそ1ヶ月もの時間がかかることが判明したのだ。次に行くにはその欠片の吸収が終わった後ということになる。それで、ようやく次への封印へと取りかかることが出来るのだ。


そして次なる場所についても、すでに目処はついている。



「トゥーン海岸。場所は帝国で、帝都からおよそ4日間ほど馬車で移動した場所か」



トゥーン海岸は水質が綺麗で魔物も極端に少なく、貴族御用達のビーチなのだそうだ。今はちょうど夏だし、欠片の回収に併せて海で遊ぶのも悪くない。というかみんなの水着姿が見たい。スタイルの良い人たちばかりだし、レブラントさんも呼んだら喜ぶだろうか?


問題の水着だが、実は既にあったりする。俺も最初はどうしようか迷ったのだが、上皇の爺さんが昔に作らせて以来、帝国貴族の間では普通に使われている物らしい。流石は爺さん、目の付け所がひと味違うと感心してしまった。


それで今回の同行者だが、行き先がトゥーン海岸ということもあってかなり人数が多い。俺とミレイちゃん、ルナ、ヨミは当たり前として、なぜか俺の両親がノリノリなのだ。それに付随してシアとヴィオレとクインも同行する。あと、メイド部隊からはウルリカとムムンとネロだ。ルリリエルとシシリーとターニャはじゃんけんに負けたせいでお留守番となった。


それと今回はアルフとアセナ、さらには龍3人が参戦してくる事になっている。総勢12名と2匹と3龍という大所帯での遠征になった。正直グラさんたちが手伝ってくれたら助かるのだが、封印の場所では龍が入れないほどの結界が張られているため助力は望めない。


それでも何かあったときに、頼りになるのは間違いないので安心して欠片回収に向かえる。他にもヴィオレやクインもいるからシアに何かあることもないしね。シア自身まだ4歳だが、魔法はそれなりに使える。もう少しで5歳になるので洗礼が楽しみなくらいだ。


なので、封印の場所に行くのは俺とルナとヨミとミレイちゃん、あとはアセナとアルフとメイド部隊くらいだろう。前回よりもかなり人数が多いけど、安全を考えるとこれくらいは必須だろう。前回はヨミが吹っ飛ばされてヒヤヒヤしたしからな。


「若様、今回は自分の特訓の成果をお披露目いたします!」


「う、うん。無理しない程度にね?」


「もちろんです、敵は殲滅すべしですからね」


うーん、絶妙に話が噛み合っていない気がするけどもう無視で行こう。きっと大丈夫に違いない。なんかまだ帝国に向かってすらいないのに、屈伸してやる気満々だけど気のせいだよね。


「というわけでみんな、明日の朝に帝国のトゥーン海岸に出発するよ!移動はお馴染み、グラさんに頼もうと思います。はい拍手!」


ぱちぱちぱちぱち……


まばらな拍手とともにグラさんが一歩前に躍り出た。腕を組んでやや胸を張っているが、拍手がまばらなせいでなんだかとっても残念な気になってしまう。それでも龍の羽ばたきは、馬車での1週間を数時間にまで圧縮することが出来るのだ。


人化していたグラさんがみんなを乗せられる龍へと姿を変えた。久しぶりに見たけど、やはり威圧感が凄い。今の俺が本気で挑んでも勝てる見込みは0だろう。というか、以前よりも数段強い力を感じるのは気のせいなのか?明らかに迷宮でグラさんの呪いを解いたときの10倍近い覇気を感じる。


呪いのおかげで弱っていたんだと考えると、本当に運が良かったんだな。下手すれば死んでいてもおかしくなかったんだから。


「アウル様、なにを考えているか分かりませんが、早く行きますよ」


「……乗らなくちゃだめ?俺は陸路から行くか――」


「――じゃあ出発~!」


「空は嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」




気づけば帝都にある城にいた。そう、トゥーン海岸ではなく城だ。しかも高そうなベッドに寝かされていたようだ。俺が寝ている間に何があったんだ?


「ご主人様、気がつかれましたか」


「ルナ、トゥーン海岸に向かったんじゃなかったの?」


「それが……、ちょっと厄介な状況でして」


そう簡単に封印から欠片を集めるとはいかないということか。


「それで、なにがあったの?」


「はい、もともとトゥーン海岸というのは貴族御用達というのは知っていると思いますが、今のトゥーン海岸の管理責任者というのが、カミーユ様なんです」


「げっ……!」


よりにもよって1番関わりたくないあいつが、トゥーン海岸の管理責任者か……。そこまで言われれば、いくらなんでも先が読める。


「ということは、トゥーン海岸に行こうと思ったら海岸で衛兵にでも止められたか?」


「その通りです……」


まずいな。2年前のあれ以来、カミーユについてはほったらかしだ。いや、農家の俺が皇族であるあいつをほったらかすのは当たり前なのだが、事情が事情だけにちょっと気まずい。


「それで、問題のカミーユ様はどこに?」


「それが、その……」


ルナの歯切れが悪い。それに視線が部屋の中を見渡すようにグルグルと泳いでいる。もしやと思って部屋の中の気配を探ると、ルナとは反対側のベッドに一つの気配があった。



……まさかね?



おそるおそるベッドの掛け布団をめくっていくと、そこには明らかに女性の物と思われる綺麗な髪がある。さらにめくっていくと、そこにいたのは案の定カミーユだった。


「……みーつけた」


「見つかっちゃった!」



そして俺はそっと掛け布団をかけた。


裸ではなかった。なかったのだが、うっすいキャミソールと下着だけだった。なんというか、扇情的すぎて逆に落ち着いてしまったよ。


本来ならルナやヨミが止めそうな物だが、相手は腐っても皇族。下手な対応をすれば国際問題になりかねない。ルナとヨミはあれで高ランク冒険者だから、その辺は敏感なのだろう。


もう一度めくってみたけど、やはりこっちをキラキラした目で見ている。うーん、やっぱり夢ではなかったか。



「ねぇルナ、なんだかカミーユ様が前より女の子らしく見えたんだけど、気のせいかな?」


「……それは、リリネッタ様が色々と教えた結果だそうです。その結果として、かなり女の子らしくはなったそうです」


リリネッタ!グッジョ……まて。らしく『は』ってなんだよ。


「ねえ、なんか隠してない?」


「私の口からはこれ以上は……」


「ねぇ、アウル。なんで愛犬の私を差し置いて他の(おんな)とばかり話しているの?ずーっと『待て』をした私を褒めても罰は当たらないと思うんだけど」


なんか、メンヘラ属性に拍車がかかってる気がする。


「ちょっと少し静かにしてて」


「はぅ……!」


これはこれは厄介な方向に歪んでくれたものだなと、思い悩んでいる俺に、さらにルナから追い討ちが来た。


「カミーユ様はこの2年間ずっと強くなるための訓練を頑張っていたそうです。さらには淑女としての嗜みの訓練も。端から見れば凄く真面目な皇女として見直され、今では帝国民からも人気のある女性になったんです。……他国からの縁談も増えたそうですが、全て一つ返事で断っているとか」


深く肝臓を抉るような強烈なボディーブローが俺に炸裂した。もう、これは不味すぎだろ。仕方ない、ここは話を逸らすしかない!俺も腹を括ろう。


「カミーユ、俺たちはトゥーン海岸でやりたいことがあるんだ。だから、その許可をもらってもいいか?」


「それはできないわ」


「なんで?!」


もしかして、放置しすぎたせいで拗ねているとか? しかし、さっきまでの蕩けきった女の顔は、至って真面目な顔つきなっていた。


「最近になってトゥーン海岸に強い魔物が出るようになってしまったの。そのせいもあって、今は封鎖中なのよ。原因も不明で倒しても倒しても減らないから手をこまねいているの。だから、とりあえず封鎖してるのよ。1ヶ月前くらい前は普通だったんだけどね」


思ったよりも真面目な話だったな。しかし、その理由はもしかしたら邪神の欠片を一つ回収したからかもしれない。だとすれば、原因は俺たちにあるのだから何とかしなければ。


「わかった、それは俺たちがなんとかするよ。こっちには龍帝もいるしね!」


「私のためにそこまでしてくれるなんて……!やっぱりアウルは私のごしゅじーーーー」


そこで再度掛け布団をかけた。


すぐに出てこられないように弱めにダウンフォースをかけたら、なんだか色っぽい声が聞こえるが気のせいだろう。


よし、明日からはトゥーン海岸の魔物討伐と欠片の回収だ!


細々と更新していきます。

評価・ブクマ等して貰えたら嬉しいです。


おかげさまで、第8回ネット小説大賞で【金賞】を受賞することができました。本当にありがとうございます。活動報告にて表紙を載せておりますので、見ていただけたら嬉しいです。


なんと、水着回のはじまりです。

ここまで書籍化できたらいいなぁ……。みんなの水着姿が見たい……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 貴族御用達の所に農民達が遊びに行けば 貴族から攻撃食らうかと思ったらこう来たか~
[一言] カミーユからは逃げられない…
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